第三十九話:大将
一旦城の前まで戻ってきた僕は、シャルアさんに大将についてを聞こうとして逆に質問された。
「キリヤマ君。どこに行ってたの?」
「え……敵の本陣です」
僕がそう言うと、シャルアさんは少しあっけにとられた様子だったけれど、すぐに次の質問をしてきた。
「じゃあ、指揮官は見た?」
「え、シード・ガリアスっていう魔族らしいです」
「やはり………」
シャルアさんはそれっきり黙りこんでしまった。これでは質問出来ないので僕は立ち去ろうとしたが、シャルアさんに止められた。
「キリヤマ君、君は前線に出てくれない?無茶はできるだけしないようにして」
「あ、はい」
「あと、もし大将やそれ以外でも強敵が来たら、すぐに助けを呼んでね。すぐに誰かが助けに来てくれるから」
「はい!行ってきます!」
発動させっぱなしだった風力操作で空を駆け、高速で前線へと向かった。
そして、前線に着いた僕が見たのは地獄だった。
兵の死体がそこらじゅうに転がり、瀕死の仲間を気遣いもせずに兵は戦いを続ける。その兵士たちだって無傷ではなく、血を流しながら戦っている兵士だって少なくなかった。
(ッ!!)
『……これが、戦争です。これが今、この世界で起こっている悲劇です。これが、私達が止めようとしていたものです』
(うん、早く終わらせよう。ここも、世界も)
『はい』
僕は地上に降りず、そのままさっきの本陣に向かった。独断専行だけど、今はそんなこと構っている場合じゃないことはさっき分かった。
幸いにも本陣の場所は帰られておらず、僕はすぐに本陣を見つける事ができた。
(行くよ)
『待ってください。ユウタ君』
(何?)
『このまま行っても多勢に無勢です。この風の力で、敵を吹き飛ばしましょう』
(分かった)
周りの風を集めて凝縮し、目の前に風の塊を作った。そして、それを本陣にブン投げる。
風の塊は本陣の真上で爆発し、周りの兵士達を吹き飛ばした。敵を殺してしまうような威力はないから、周りの敵を吹き飛ばしただけだ。
(今度こそ、行くよ)
『はい!』
まず、柄だけの剣の先に風を凝縮させて風の剣を作り次に、風力操作を使って高速接近した。
そのままの勢いで剣を振るい、大将の背中を狙う。だが大将は剣が当たる寸前に振り返り、そのまま大剣を振るった。その大剣は赤い光を纏っていて、風の剣をあっさりと突き破って僕に向かってくる。
「お前が……人間か?」
僕は風力操作で無理矢理体をねじらせ、大将の大剣を交わした。僕はすぐに柄の先に風を凝縮させて風の剣を作り、出来たのと同時に破裂させた。
空中にいた僕はモロに風を受け吹き飛ぶ。それによって大将の一閃を間一髪で交わし、そのまま数メートル先の場所に着地した。
「お前は人間か?」
「…そうだ」
「……………」
大将が次の質問をしてこないので、僕は聞きたかった事をきいてみる。
「もしかしてお前は……シード君、いや、シードガブリアスの……父親か?」
次は1週間後の投稿になると思います