第三十話:救い
ユウタにはまだちょっとヘタれてもらいます。
(助けて……)
「何からなのかしら?」
何から…何だろう?シャルアさんから?あの魔物たちから?それとも……全部から?
と言ううかここは何処だろう?前にも来たことがあるような……
「ここは天界なんだけどね~」
「自称…神」
「こんな時でも『自称』は欠かさないんだね」
辺りを見るとほわほわとした空間が無限に広がっている。確かにここは前にも来た天界(by自称神)だ。
「何の用?」
「君が助けてって言うから助けに来てあげたの」
助けにってどうするんだ?それが率直な感想だった。でも、少し落ち着いて考えると分かった。
「まさか、元の世界に戻してくれる!?」
「そう」
「やった!帰れる!!戻れる!!!」
その時、自称神は今までに見たことのない悲しそうな顔をしていた。でも、今はそんな事よりも帰れることが嬉しかった。
「ほんとに…いいの?」
「もちろん!」
自称神は少し考えてから言った。
「…じゃあ、あっちの世界で一番アナタを信頼している魔族に失望してもらって」
「え?」
何でそんなことをするのか、さっぱり分からなかった。でも、自称神が言うにそれはどうしても必要な事らしい。
そして最後に自称神はこう言った。
「アナタがあの世界から消えて、あの世界の全員がアナタの事を忘れてもアナタの罪は消えないのよ……これだけは覚えておいて」
僕の意識は闇へと落ちていった。
「………」
目が覚めた。でも、何と無くぼーっとしている。ああ、そうだ、もう2日も何も食べていなかったっけ。
…僕を一番信頼している魔族って誰だろう?
机を見ると、今日の朝ごはんが用意されていた。
「食べ……ようか…」
フォークと手に取り、ハムエッグのようなものに突き立て、口に運んだ。でも、口に入った瞬間に吐き気がして、結局食べることができなかった。
<sideリリア>
「私は、どうしたらいいんでしょうか……?」
私は、1人きりの部屋で呟きました。ユウタ君はあれから2日も何も食べていません。あのままじゃ、死んでしまいそうで心配です。
「リリッチが何もしないなら。私が行ってくるわね」
いつの間にか部屋に入っていたサリーちゃんが言いました。と言うかここは王族とその世話役以外立ち入り禁止じゃなかったけ……
「行くって何処に?」
「もちろんキリ君の所よ」
「そうですか。行ってください。私はまだ……どうすればいいのか分かりません」
「そう…」
<sideユウタ>
「どうようか……」
とりあえず、誰かに会う事とご飯を食べることはできない。そうすると、かなりやれる事は絞られてくるけど……
そんな事を考えていると、誰かが僕の部屋に入ってきた。
「誰……?」
「私よ」
「サリー」
サリーが部屋のドアを閉め、こっちへ近づいて来る。あの光景が目の前に蘇り、一歩近づくたびに鮮明になっていく。
怖い
心から思った。きっと誰でもこうなるんだろうな、と思う。
「ゴメン……それ以上近づかないで。それ以上はもうダメなんだ」
「いつまでそうしている気なの?」
いつまで、いつまでだろう……。僕が、この世界を立ち去るまで…なのかな………
「(答えてよ…お願いだから)」
「え?」
「私……」
サリーは真っ赤な顔になって何かを言おうとしている。
「どうしたの?」
やがて意を決した様に拳を握り、叫んだ。
「私は……キリ君がいないと寂しいの!!」
「え、それって…」
「そうよ!好きよ!!悪い!!?」
僕は、生まれて初めて女の子に告白された。
はい、やってしまいました。次回はリリアが告るかもしれません。