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告白

 抱きしめられながら、龍の自殺の原因となる告白を聴いていた。


「樹海にいたはずなのに目が覚めたら、俺は病院にいた。助けてくれた人の名前を聞いてすぐわかったよ。しかも死ぬのを先延ばしにして夢を見させてくれって、訳わかんないこと言ってさ」


「わかってたの?」


「俺はお前を好きだったんだ。分からないわけないだろう。いまさら、言い訳にしかならないけど‥憎い母が死んで、俺なんか生きる意味はあるのかって。何もかも、やる気がなくなっていて樹海にいったんだ。

それなのに今は同棲ごっこが、俺の居場所になっていたんだ。仕事が終わってお前の待っている家に帰って。ただいまー、お帰りって声掛け合って」


(龍の顔は、見えないけど泣いていた)


「ありがとう。お前を傷つけた俺なのに救ってくれて。俺の居場所をつくってくれて‥」


(気づいていたんだ‥ありがとう。私だって随分救われたんだよ。この生活で)


3月 ひな祭り 春ー桜を見に行く。

いつもより早起きをして、はりきって色とりどりのお弁当を作った。それに負けないくらいの何十本もの生い茂っている桜に魅了された。

青空ベースのスクリーンに、白や淡いピンクの桜の木々が浮きでているように何百年も、生きてきた桜の木々たち。

この木々たちは、どれだけのストーリーを見てきたのか?


風が吹くたびにヒラヒラと、花びらが何十枚も軽やかに舞っていく。



4月 エイプリルフール

思い切り、だましてやろうと思っていた。


「俺、今日から樹海に戻るよ」


「えっ⁈えー‥‥死ぬの?」私の頭の中は、パニック状態になった。そしてやっと、絞り出した言葉だった。


龍は舌を出し、大笑いをする。


(くしょー、先手を取られた)


ふと、私が「復学できないのかなあ」と言った言葉に

「戻りたいのか?」と問う。


「わからない。口から出ただけかも」


「エイプリルフールなんだから、学校に問い合わせてみようよ」

(それ、関係あるかなあ)


問い合わせてみると在籍が確認されているが欠席が多いようなので、再試験を受けてもらいその結果次第で継続可能ということ。


「成績って何ランク⁈」龍が口にする。


(肝心なことを忘れていたわ。うちの学校AからDで成績をランク付けされていた。しかもAランク以外は、再試験があるのだった)

「でぃ」


「えっ、聞こえないけど」手の平を耳の後ろにあてて、聞こえないという仕草をする。

「だから、ディだってば!」思わず、強い口調になっていた。


「くくく、わかったよ。でもその成績で、戻りたいの?」


「悪かったわね。今はもっと、生きたくなったの。

両親にずっと仕送りしてもらっていたのに、自分のことしか考えてなかったバカな自分に気が付いた‥だからせめて、今からでも大学に行って卒業しなくちゃって」


「ふーん、いい心がけだね」


「茶化さないでくれない?」


「俺が、タダで家庭教師してあげてもいいけど」


「えっ」


「俺、Aランクだから」


「う‥そ」


「誰かさんと違って、勉強はちゃんとしてたんだよ」上から目線で、ものをいう。

「信じられないけど、信じる。だから、タダで教えてくれる?」


「条件付きだけどな」


「うちら、樹海に戻るんじゃなかったっけ⁈」


「とりあえず、試験勉強して受かるまで延すことにするか?」


5月 子供の日 男の子の日ということで


二人とも未来のない身なので服は、極力買わなかった。

しかし、あまりにもヨレヨレの服しかないのと、再試験まで延長されたため色違いの控えめペアルックを、私も子供の日に便乗してコーディネート買いする。

いた。


6月 樹海に戻る?


約束の月に、なったね。

私の夢をいろいろ、叶えてくれて今までありがとう。


だから、もう同棲ごっこから解放してあげる。


「何、俺の気持ち無視して言ってくれてるの。ばっかじゃねーの。俺も、復学するかなあ。おまえに勉強教えてるとさ、一緒に大学通いたくなったから。(今更、勉強したくないけど)同棲ごっこから解放してくれるなら、本当の同棲をはじめよう」


「えっ、本当に?」顔中に笑顔が、零れでる。


「これが、俺の条件だから‥これからも、いつも俺の傍にいてほしい」

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