死ぬために、生きる
最初に二人で住む、アパートを探した。
小さいキッチンがついていてシャワーとトイレ付。8畳1間で、2万5千円。
外見も部屋の中身もボロボロの築48年という納得の格安アパートである。
敷金が半年分。最低限の電化製品もリサイクル品で揃えた。部屋の雑貨、日用品も○○均一の店で取り揃えた。それでも二人には痛い出費である。というか、ほとんど私持ちであった。
家からなるべく近いところで、仕事も探した。
龍は、土木作業員。
私は、コンビニの店員。
慣れない仕事に、弱音を吐きながらも励んでいた。
憧れの新婚生活のように、朝早く龍の弁当も作った。
12月は、二人で映画や、夜のライトアップを観に行った。そして遅ればせながらクリスマス気分でチキンとサラダ、ワインと手作りケーキで祝った。
プレゼント交換はお互いに2千円という縛りのなかで、龍はジャンバーと、ワンピースという驚きのプレゼントをくれた。
「なかなかいいだろう。リサイクル品だけど、俺のセンスが隠しきれないなあ」なんて、調子に乗っている。
「ありがとう。うれしいよ」悔しいから、口には出さないがなかなかのセンスである。
私も、店を梯子して選んだ靴をあげた。
「ありがとう。俺たちって、究極のミニマリストだな」ニコッと笑う。
1月は初詣でに行き、混雑している人々でなかなか進まない列に並んでお参りをした。私の願い事は「龍といつまでも、一緒にいたい」だった。でも、建前は、6か月楽しくいさせて下さいだ。この出会いが、奇跡のようなものだから。毎日を、感謝しながら生きている。、
そして、おみくじを引いた。
やったー。二人共、大吉。
「今年もよろしくお願いします。」
「ああ、よろしくな」と、ぶっきらぼうに返ってくる。
2月は、バレンタインデー不器用な手作りチョコをあげる。
「市販の方が良かったな」と呟いたのを聞き逃さなかった。
半年後死ぬために生きるなんて‥‥。
本当、支離滅裂なのはわかっている。
カウントダウンまであと4か月も満たない。
仕事から帰ってシャワーを浴びて、二人でご飯を食べる。
この日常にも慣れてきた。
私の隣に龍がいる。仕事場での愚痴をいいあったり、テレビを見て大笑いをしたり。
不思議だけどあの日、樹海に行かなければなかった日常。
ある時、龍に突然抱きしめられた。
「えー、何?」
突き放そうとしても力は、かなわない。
「そのままで聞いてほしい」龍は、いつもより低い声で言う。
昔、俺の親父の死後ー俺の母は男をとっかえひっかえした結果、小学生の俺を捨てて家を出ていき。それから俺は施設で育った。
母に優しい言葉をかけられたことも、抱きしめられた記憶もない。
母には愛される憧れや憎しみ、いろんな感情が入り混ざっていた。
俺はいままで付き合った女に、俺を捨てた母親を合わせて見ていたのかも。
今回の自殺未遂のまえに市役所から俺に連絡があった。
母が、孤独死していて身元保証人が必要とのこと。
「冗談じゃない。小学生の頃だぜ!別れたの。どうやって調べたのか、まったく」
区がささやかな葬儀をおこなってくれた。
遺影もなく腐敗がひどいとのことで、顔も拝めなかった。
簡単な式が行われ、参列者も俺一人だった。断ることもできたのに‥。
今まで、母を恨むことで生きてきたような気がする。
自分が張り合いとしていたものがなくなって、心に穴が開いていた。
女性とも付き合えば、付き合うほど不信感がうまれた。
まるで、母の血がDNAでうけつがれたみたいに。
付き合ってる女が突然どこかに行ってしまう気がして。
捨てられる気がして、怖かったんだ。
俺は気が付いたら、大学1のチャラ男になっていた。
100人達成したら、その人とマジに付き合う宣言をした。
でもそいつは、今までの娘とは違っていて。
なんだか、ちゃんと付き合えるかどうか自分に自信が持てなくて。
人に愛されたことがないから、人を愛せるか自信がなくて。
ボツボツと、龍は私の返事を待つでもなく淡々と自分の思いを吐き出していた。




