もう、いきていられない
私はただ、電車の中からボッーと景色を眺めていた。
のどかな風景を背にして、新たな風景を車窓にうつしだされていく。
とはいえ、広い敷地の畑、住宅、遠い山々。
目に映るものはさして違わない。
都会から来た私は、本当はこういう景色を楽しむものだろう。
だが、とうの私は抜け殻のようになっていた。
3日前
クリスマスを一緒に過ごす神田 唐人のことを考えていた。
そう、彼のことを思い浮かべるだけで幸せだった。
唐人とは、大学の飲み会でメンバーが足りないからと誘われ
渋々行った飲み会で知り合った。
陽キャラに混ざれない私は、同じ雰囲気を持つ隣に座っている唐人に話しかけた。
彼は昔の彼女に振られたんだと、ボツボツと話しだした。
同じ境遇だと知った私は、その時から彼にひかれ始めていた。
「じゃあ、もう過去の人は忘れて二人でこの先の未来をみないか?」
唐人の言葉が付き合うきっかけになる。
思い浮かんでくるのは、
唐人の笑顔、ふざける顔、真顔。どれも、大好きだった。
(なんで?なんで? 意味がわからない。)
どこが嫌になったのかと何度きいても、
『君は悪くはないとか 僕にはもったいないくらい』
だとか、そんなことしか言わない。
(何それ?意味がわかんない。体のいい、断り文句じゃない)
思いだせばだすほど涙がとまらない。あれから、何回も泣いたはずなのに。
「ねぇ、あのお姉さん。泣いているよ。」親子連れの小さな男の子が、私の方を向きながら言う。
「しっ、ダメよ。指さしちゃ」
周りの声は聞こえていても、悲しみは止まらない。
ハンカチをだし、両手の平でハンカチごと顔を包み込む。
『次は矢吉良儀~。矢吉良儀~』車内アナウンスが流れる。
そうだ。降りなきゃ。
車内は疎らとはいえ、人前で泣くなんて。
そんな勇気が私にあったなんて。
そこから、さらにバスに乗って1時間は経っただろうか
ますます、人通りはとだえ辺鄙なところでバスを降りる。
そう、行き先はあってないようなもの。
なんだか、もう生きる気力がなくなった。
借金地獄なわけでもないし、もっと私よりも生きづらい人はいるだろう。
でもなんだか。そう、息するのも、喋るのも、歩くのも何をするのもしんどい。
普通に、出来ていたことができない。
未来を二人でみないかって言ってくれた人に振られて、未来に進めない。
唐人と別れてから、パソコンで樹海の数ある中からここに決めた。
ここだったら、もう戻ってこれない。
あてもなく、歩き回る。
どこも、ジャングルみたいに木々が生い茂っている。
疲れた。もう、そろそろ20年の時を止めよう。