全裸ロリっ娘、お空を飛ぶ!
「しつこいです、もう!」
「待ちやがれ~! アールヴのロリぃ!」
"ロリシィ"レーギャルンは、美しい子供の姿をした、水属性のビームを武器とする妖精だ。
彼女の姿を説明すると、お尻まで隠すほど長く伸ばされた、波打つような髪先眩い、透き通った白ワイン色の頭髪。たっぷりとした、透明な、まつ毛。
目は猫のように、ぱっちりとしており、瞳は現在、カラフルにビカついている。
両の耳は人間の形ではなく、六芒星の形をした……クリア成形のアングレカムの花となっている。(耳が花なのは、典型的な花エルフの特徴。)
そして、ロリ顔にロリ体型。具体的には、10代なかばの娘子の見た目をしている。(これはプロポーションの話であって、彼女の基本身長サイズは175センチ。リーチの心配は不要。)
そして一番の特徴として、ロリは服を着ていない。
彼女は人間ではないので、服を着て動くのを非常に面倒だという価値観を持っているのだ。
しかし、ロリ体型の全裸姿がえっち過ぎて読めない! という方は、どうか安心して欲しい。
彼女の長い髪は、うまい具合にのたくり、しかも胴体のほとんどを隠すほどに長いので、激しく動いても大事なところは常に隠されて見えない。従って親の前で読んでも、怒られることはない。
さて、未来永劫、常に修行中の身であるロリは、今日は飛行速度とコントロールの向上のために、雷より速く空をブッ飛ばしていた。
なぜって、彼女の目的たる未来の女王も、最終殺害対象である今の女王も、空中戦闘が可能だからだ。
今の女王の全てを上回るために、とりあえずは戦闘力だけでも勝ちたい。そのためには、情けない飛行技術を磨かなくては勝負にもならない。
そんな彼女を、さっきから追い回しているのは、恐竜の首に、極彩色の鳥の体。究極完全進化体、スーパーアルティメット始祖鳥だ。
もちろん、普通の始祖鳥は雷より速く空中をブッ飛ばしたりなんかできない。しかし彼は、アルティメット進化を果たしたスーパー始祖鳥。
そのランクは……SS。死後の復活インターバルに、5分とかからない程の強豪キャラクターである。当然、飛行もジェット機に負けない。
とはいえ、スーパー始祖鳥は獰猛な気性をしているが、食性は完全草食のベジタリアン恐竜だ。
主な活動圏である空は広すぎるため、縄張り意識も薄い彼が、一体どんな理由でロリを追い回すのだろうか?
「耳が花って事ゃ、てめえ、花エルフだろ~!? 花エルフは野菜! 今晩のディナーだっ。止まりやがれ~!」
「どうやら空腹のあまり、頭が混乱しているようですね……」
無理もない。空は広すぎるから、雲の隙間や風の合間にポップした野菜を探し当てるのも、とてつもなくタイヘンだからだ。
普通、動物の体は死んだら激しい爆炎を噴き上げて爆発するので、ご飯にするのは不可能だ。お腹が空きすぎた始祖鳥は、そんな常識を忘れるほどに消耗しているらしい。
裸のロリは反転し、両手を差し出して、透き通った渦巻く水のボールを作り出す。
そして、ボールを始祖鳥へと押し出した。が、
「水が貴方を癒します。栄養満点、食事補給ボール!」
「うるァ~! 八つ裂き蹴りィ!」
押し出された水のビーム球は、超始祖鳥の雷速の蹴りによって、呆気なく蹴散らされた。
ロリはビックリして、それから怒った。「何するんです!」
「何しやがるって、そりゃあコッチの台詞だきゃ! いいか、こわっぱ。オリゃあ、メシを求めてるんでゃ! 味気も無くした、腹ぁ膨らますだけの、水玉ぁ点滴などいらにゃ!」
「チッ……面倒ですね。待っててください。今、おいしい野菜を……」
ロリはビームで野菜を形成しようとした。が、始祖鳥は待たずに目玉をキランとさせて、全力でロリへと突撃する。
不得意な属性物質の形成に集中していたロリは、かわせずに片腕とわき腹を失った。
「あっ──この! 待ってくださいってば!」
「誰ゃが待つかゃ~! オリぁ、腹が減ってんだっ。今すぐ、お前ゃを食べさしろ~!」
かわしながら作るしかない。欠けた箇所から水しぶきを散らしながら、ロリは片手にビームの塊を形成する。
そして何度目かの突進をかわした頃、ついにロリは片手に巨大なサラダボウルを取り上げた。
「出来ました! さあ、スーパー始祖鳥。これを──」
「おっ! エルフがサラダ持ってりゃ! こりゃあ、カモとネギだぜっ。うけけけけ!」
──バツン。
完全に気を抜いていたロリは、手に持っていたサラダごと、上半身を食い千切られた。
水しぶきを吹き散らしながら、落っこちてった下半身が、次第に泡と消えていく。
残ったロリの頭はというと、長い髪を風に広げながら、「えっ?」と一瞬、あっけにとられた。
「ぐははははっ! オリゃ既にエルフ食う口になってんだゃ! 今さらサラダを出されて、それだけで満足いくわきゃ無ゃ~が!」
遥か遠くを旋回する始祖鳥が、けたたましく笑いながら言った。
ロリは頬を膨らませて、体を再生させながら振り向く。
「このまま残りの体ゃも食って、素敵ディナーのフルコース完遂だきゃ! きゃははははは!」
「あなたって人は~! 怒りました! もう、謝るまで許しませんからね!」
「メシを食らい、他の生き物を殺す! 自然の摂理に謝りゃあこと、無きゃ! むしろ食われて怒るようにゃ、無礼なエモノこそ土下座して皿に乗りゃ~!」
始祖鳥が口を開き、剥き出しのキバに冷気が纏わりつき始める。始祖鳥は古生代の生き物なので、氷河期の力が使えるのだ!
やがて始祖鳥は氷のヨロイに覆われ、長い尾がたなびく、氷雪の神鳥と化した。
「お前ゃの速度は見切ったゃ! これは避けられんっ。死にゃ! アイスエイジ"牙"!」
「水よ渦巻けっ。瞬間移動!」
ガキィイン! 氷のキバが閉じ合わさり、周囲空間に氷属性ダメージを与える、とげツララが何本も撒き散らされる。
この技は命中すれば、超巨大タンカーさえ1発でグシャグシャにしてしまう。だから、始祖鳥は気にしなかった。
「ひゃ~ははは! フリーズドライの野菜エルフでゃっ。ちと冷たいのが難点だぎゃ、ガキの肉は柔こ~て最高だきゃ~!」
さかんに動かすキバの隙間には、花片ひとつ挟まってやしないことを。
そして、ぐるぐると渦が巻かれながら、自らの背後へと飛び上がっていることに。
その衝撃の瞬間まで、始祖鳥は気付けなかった。
彼は、自身の勝利を確信していたから。
「んっ? 何だか背後に、イヤ~な予感ぎゃ──」
「──倒れ落ち肘鉄!」
「ボヘェ~ッ!? い、隕石が背中に落ちてきたゃ~!?」
突如として背中に突き刺さる、水をまとった、尖った衝撃。いかに強力な恐竜の体とはいえ、完全に勝ったつもりの油断体には充分な威力。
さらにロリは逆立ちの姿勢に移行し、水をまとった逆さまハイキック──踵ならぬ、つま先落としを叩き込んだ。またの名をオーバーヘッド・キック。
これには恐竜特有の岩石肉体もたまらず、「V」の字になって墜落していった。
「でよぉ~~……っ!」
さて、ここは地上ビル街。曇り空に土砂降りの、ロンドシティビル・ストリート。
何層もの雲を突き破り、豪雨降りしきるアスファルトへと、スーパー始祖鳥が着地した。
「でよっ! ハァ、ハァ……く、クソ。スピードだけが取り柄の、たかが野菜の分際でゃ……」
「今、ひとつ……逃げるチャンスを与えました」
バシュン! と渦が中空に現れると、動きの軌跡もなしに、ロリが渦から姿を見せる。
どういうトリックかは分からんが、冷静になってみれば勝てんことはない。要は、渦が来た位置を殴れば良いのだ。
静かに怒り顔で、空中に仁王立ちするロリシィ。再び勝利を確信して、始祖鳥はギザギザの歯を合わせて、耳まで裂けた頬を歪める。
「"2秒"あげます、スーパー始祖鳥。悲鳴を上げて怯えすくみ、情けなく背中を見せて逃げてください……」
「さあ……ワタシは追いませんよ。学習してください……逃げることはハジではありません」
カギ爪の両手に氷の弧を作り、極彩色の翼で、それを隠す。
しめたぞ。このアールヴのアホガキは、完全に自分が勝ったつもりでいる。クソバカめっ。人間というものは、常に勝ちを認めた瞬間こそが、最も無防備な油断の時間になるのだ……。
始祖鳥は更なる油断を誘うために、半身を向けて逃げる準備をして見せた。
もちろん、別の準備は背中に隠してだ。
「逃げちゃいましょうよ……逃げれば助かりますよ」
「へ、へへ……そうだゃな。オリぁ、逃げるとすっぜ……げ、元気ゃでな。へへっ……」
「……」
そして、雨に濡れたロリシィが、裸の腕を組んでみせる。
今だ! 背を見せた始祖鳥は突然ふり向き、両手の氷の弧を合わせた。
ふたつの弧は真円となり、氷河期の記憶空間へと繋がる。そして円環は出口となり、殺到する吹雪が吐き出された!
「隙ありっ。死にゃ~! アイスエイジ"白い穴"!」
吹雪は極太の柱となり、空に浮かぶロリへと押し寄せる。ロリは驚きの色も見せずに、体を水の渦に吸い込んだ。
そして、渦が解けた水の糸。その素早い動きの軌跡を目で追うと、始祖鳥はツメに氷を纏って、背後へ思いっきり振り抜いた!
そこに居たのは勿論、驚愕に目を見開いた、全裸姿のロリっ娘だ!
「!? え──」
「死にゃ~! アイスエイジ爪鎌!」
「い、イヤァアッ!」
しかし、振り下ろされた死に神の鎌は空振った。
パニックになったロリが体を渦にして、始祖鳥にまとわりつくように、滅茶苦茶な軌道でデタラメに動きまくったのだ。
「あっ。ちょ、どこへ……後りゃ、違ゃう、前……目、目が回りゃ……!」
ロリが背後に現れた、振り向いてツメを振り上げる。渦になって消える、空振り。
ロリが背中を見せた、振り上げる。渦になる、また空振り。
前、右、左、後ろ。上や下へと渦とロリが現れては消え立ち、ツメを振り回し、首を振り回し。
何度目かの空振りの後、始祖鳥は前と後ろに現れたロリから、2人同時に殴られた。
「瞬間移動パンチ!」
「瞬間移動キック!」
「ぶへェ! ぼへ~! 目、目が回るるる~!」
それぞれ前後からの裏拳とソバット。始祖鳥は目を回して、よろめいて、ロリ達から離れた。
重なり合い1体に戻ったロリは再びスンッとなって、クールな無表情を作ってみせる。そして裸の体を抱きしめるようにして、腕を組んだ。
「フッ……ここまでがワタシの策ですとも」
「そうでゃったのか! 凄ゃ~にゃ!」
「そして。この一撃をもって、あなたへの処刑を完了とします……構えてください!」
目と髪先が激しくビカり、なびく髪がマントのように広がる。ビーム技の最大出力を示しながら、ロリは始祖鳥へと走り出した。
混乱状態から回復した始祖鳥は、すぐに真円を作り、迎撃の吹雪を吐き出す。
アスファルトの道路上に雪と氷塊の嵐が吹き荒れ、どんな技であっても、この吹雪壁に当たれば威力の減退は免れなかったことだろう。
「──バカなゃ!」
だが、衝撃は始祖鳥の足下から、やって来た。地面の中へ潜り込み、泳いで来たロリが、逆さまのドロップキックを放ったのだ。
「グワ~!」
「まだです! ツイストシザース!」
キックに浮かされた巨体が、ロリの剥き出した足に挟みあげられる。
始祖鳥は更なる回転を感じ、直後に渦と共に体を空高く打ち上げられた。
同時にロリも飛び上がり、自身の周囲に水のビーム球をいくつも浮かばせて、それらを始祖鳥に浴びせていく。
水の球に殴られる度に始祖鳥は高く、また高く吹き飛ばされて、ついに大気圏外に到達した。
息もできずにもがく始祖鳥の頭上で、ロリが渦から現れて、両手に透明なビームの渦をまとう。
そしてロリは反転して、両手を始祖鳥へ突き出した。
「うわ~! 助けてくりゃっ。恐竜の体は、宇宙空間で息をできる仕組みゃをしてないんでゃ!」
「お帰りなさい! 強制帰宅! 極太ビーム!」
「ぐぎゃがががががっ!? わ~~……」
もがく上から放たれた、クソデカ極太ビームに押されて、始祖鳥の体が落ちていく。
その岩の体はオゾンを貫き、雲を打ち破り、ついにズブ濡れのアスファルトに叩きつけられて、帰還した。
「はぎっ!? ぎにゃぁあああああ……っ」
無数の雨に打たれる中、超特大の落下ダメージを受ける始祖鳥。落下ダメージは耐久力に対して割合でダメージが出るので、どんなに頑丈な岩の体でも、メチャメチャ効くし、超痛いのだ。
始祖鳥は最期の断末魔をあげると、着地したロリの前で、爆炎を噴き上げて消え散った。
ロリの浮いた髪先がすとんと落ちて、瞳までもビカつきを失い、双眸は照明を落としたみたいに真っ暗になる。
省エネモードの開始……戦闘時間が終了したのだ。
アングレカムの花を雨風に撫でつけ、ロリシィは空へ飛び上がる。
思わぬアクシデントではあったが、結果的にはいい訓練になった。
最後に放った極太ビーム……規模と射程距離としては、完全に殺すつもりで撃った。
ただし、地上への押し出し効果以外、つまりビーム自体の殺傷力はオミットしたのだ。結果として、始祖鳥へのダメージは落下のみを参照した。その証拠に彼は、地上に到達するまでは生きていた。
強制帰宅の効果も働いて、始祖鳥の体は大気摩擦で燃え尽きることもなかった。
要するに、派手な規模のビームでも、好きな効果のみを持たせられることが分かったのだ。
「……」
確かな手応えを感じて、ロリは手を握って、思考する。
その感情は力への自信と、成功体験による高揚。程度はどうあれ、れっきとした自惚れの心であった……。