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6話 婚約者様は私の味方

「……ハ、ハノン様」


 リエルタは声の主に気づくと驚いた表情ですぐに魔法を収める。

 しかし驚かされたのは私もだ。

 何故ハノン様がここに……?


「大丈夫かファルテシア! ……おい、お前たち、ここで何をしていた?」


 彼は鋭い目つきでリエルタたちを睨み付ける。


「ハ、ハノン様、私たちは、別に……」


 取り巻きの女たちは目を逸らして言い淀む。


「おいリエルタ。お前、ファルテシアに何をしていた?」

 

「……別に、何もしていないわ」


「では何故ファルテシアは泥だらけで地面に転がっている?」


「知らないわ。勝手に転んだんじゃないの?」


「……ファルテシアの背中、靴の跡がある。お前たちの誰かが彼女を蹴り飛ばしたのではないのか?」


「だから、知らないわよ!」


「リエルタ。お前はさっきファルテシアに魔法も放とうとしていなかったか?」


「し、知らないわ!」


「嘘をつくな。私が来た時、お前は咄嗟に右手を隠したであろう? 得意の電撃波を使おうとしていたのではないのか!?」


「知らないって言ってるでしょ! 何よハノン様! そんな女の事なんてもうどうでもいいでしょう!?」


「どうでも良くはない。学園内において許可なく魔法を人に向けるのは違反行為だ。停学は免れない」


「関係ないわよ! そんなの証拠がないじゃない! っていうかハノン様おかしいわ! なんで今日はそいつの味方をするの!? いつも私に言っていたじゃない! ファルテシアなんてブスで目障りで鬱陶しいって! ファルテシアなんかいなくなればいいって!」


「黙れリエルタッ! それ以上彼女を傷つけるような発言はこの私が許さないッ!」


 ハノン様は激昂し声を荒げさせる。


「……な、なんでよハノン様。一体どうしたって言うの?」


 リエルタは少し涙ぐみながら、声を振るわさせていた。


「リエルタ。この場でファルテシアに謝罪しろ。周りのお前たちもだ。そうすれば魔法を使おうとした事だけは黙っておいてやる」


「そんな……お、おかしいわハノン様。この前言っていた事と違うわ! あんな女に未練も何もない、だからこれから婚約破棄を言い渡しに行ってくるって! そうしたら正式に私の事を婚約者にしてくれるって! そう言ってたのにッ!」


「……婚約破棄は、しない」


「え……?」


「私はファルテシアとの婚約を破棄しない。私の婚約者はファルテシアだけだ」


 ハノン様は目を細めてリエルタへとそう告げる。

 反対にリエルタと私は彼の言葉に目を見開く。


「う、嘘よね? ハノン様、ずっと言ってたじゃない。ファルテシアなんかとは別れるって……」


 そうよ。そう言われるつもりだった。


「嘘ではない」


 嘘よ。ハノン様は私との婚約を破棄するつもりだった。


「なんで!? どうしてよハノン様! 私の事を……私が一番だって、そう言ってたくさん愛してくれたじゃない!?」


 そうだ。私も見てる。彼がリエルタに愛を囁いているところも、人目を憚ってリエルタと口付けを交わしているところも。


「……それは、私がおかしかったのだ」


 そうだ。ハノン様はおかしい。この今のハノン様がおかしい。


「何よそれ……ハノン様、本気で言ってるの……?」


 リエルタの声が震えている。


「本気だ。だがリエルタ、お前をその気にさせた原因が私にある事も理解している。それについてはすまなかった。謝罪させてくれ」


 ハノン様はリエルタに向かって頭を下げた。


「へ……変よ。こんなのハノン様じゃない……!」


 リエルタと私は今、同じ事を思っている。


 あの傲慢で有名なハノン様が、人に対して頭を下げるなどという行為をしているのだから。


「すまないリエルタ。私との事は忘れてくれ」


「……ッ!!」


 言葉にならなくなったのか、リエルタは踵を返し、その場から逃げるように立ち去った。

 他の取り巻きたちも私たちに一瞥をくれてリエルタを追いかけて行った。


「大丈夫だったかファルテシア?」


「は、はい。私は問題ありませんが、ハノン様……その、何故ここに?」


「……いきなり役に立つとは思わなかったが、その増魔のネックレスだ。実はそのネックレスから発せられる独特な魔力は感知器にもなっていてね。それでキミがここにいるのがわかったんだ」


「そうだったのですか……」


「キミに万が一の事があってはならないと思ってね。ごめん、もし嫌だったら捨ててくれても構わない」


「そんな事はしませんが、何故私にこのような物を……?」


「キミもわかっただろう? リエルタはとても嫉妬深くて執着心の強い女だ。私が彼女以外の女と共にいれば必ず何か手出しをしてくるだろうと思っていた。だから保険を掛けておいたんだ」


 だから今朝これをくれたのね。

 という事は本当にハノン様は私との婚約関係を修復するつもりなんだ。


 それにしてもリエルタ・ザブルグ。

 これまで私に直接何かをしてくるような事はなかったのに、今朝ハノン様と共に通学してきただけでこんなにもあからさまに潰しにくるなんて。


「さっきも言ったが……その、私はキミとの婚約を破棄するつもりなんてこれっぽっちもないよ。それだけはわかって欲しい」


 それもこれもやっぱり全部、ハノン様がおかしくなったせいだ。


 ハノン様ならこんな事、言うはずがないから。



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