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3話 変わってしまった婚約者様

「やあ、ファルテシア、おはよう! 今日は凄くいい天気だね!」


 ……え?


 と、思わず開いた口が塞がらずにしばらく何が起きているか絶句していた。

 何故ならハノン様が私のお屋敷の門を出たすぐ目の前にいたからだ。 


「ん? どうしたんだファルテシア?」


「ハノン様何故ここに……」


「何故って、一緒に通学しようと思って迎えに来たんだよ」


 昨日。

 ハノン様の後頭部に何故か強烈に石がぶつかった。

 それからハノン様はいくらか頭がおかしくなってしまっていた。

 確かに私たちが学園入学以前はこれが当たり前で、私たちはよくこうやって互いのお屋敷の前で待ち合わせしてたっけ。

 けれど、私が学園生になってからこんな事は初めてだった。


「あ、それとこれを」


 彼は戸惑う私へと何かを手渡す。

 それは金色の鎖にエメラルドがあしらわれたペンダントであった。


「こ、これは?」


増魔(ぞうま)のネックレスだよ。私が持っている中で一番精度の高い魔道具だ。昨日のお詫びとして受け取って欲しいんだ」


 ハノン様から何かを贈られるなんて生まれて初めてで、私は目を見開いてしまった。

 しかも魔道具なんてどんなものであっても高級品だ。更にはこういったアクセサリーだと下手をすれば平民の給金三ヶ月分くらいは優にある。

 そのうえこれは、婚約者に贈るものとしては人気の高い、ブランド物のネックレスだ。


「こんな高価なもの、頂けません!」


「いいんだファルテシア。ついでと言っては失礼かもしれないがこれまでの非礼も詫びたいんだよ。歩きながら話そうか」


 彼はそう言いながら、プレゼントについて説明してくれた。

 その増魔のネックレスは名前の通り持ち主の体内魔力を増幅し高めてくれる物で、いざとなった時にこのペンダントを握りしめて魔法を扱えば大きな威力を発揮できるのだとか。

 加えて、今まで私にそっけなくしてしまっていた事への謝罪も兼ねているのだという。


「私は昨日の晩、愚かな自分を顧みていたんだ。私はこれまで自分の事ばかりを考えていて、キミの事をないがしろにし過ぎていた。だからそれはせめてもの私からの謝罪のしるしだと思って受け取って欲しい」


 彼は隣で歩む足を止め、頭を下げて私にそう謝罪してきた。

 ハノン様が私の事を気遣う事もそうだけれど、こんなにも殊勝に自分の非を認め、謝ってくるなんて本当に信じられない。


『ファルテシア。キミはめざわりだ』


 そう言われた三年前。

 あれからほとんどハノン様とお話しする機会もなくなり、私たちは赤の他人と同様の関係性になっていた。


 それが昨日の事件から突然ハノン様は頭がおかしくなってしまった。


 彼には今、前世の記憶、とやらがある。

 そのせいなのだろうか。


 とにかく折角のハノン様からの好意なので、それを受け取り身につける事にした。


「うん、とてもよく似合っている。やはりファルテシア、キミは世界で一番綺麗だ」


「はえッ!?」


 顔をあげたハノン様が優しい笑みを浮かべて突然そんな事を言い出した。


「本当にゲームやアニメに出てくるような美しさだ。こんなキミを周りが放っておくはずがない」


「げ、げえむ? あに、め? とはなんですかハノン様?」


「ん……こほん。異世界での記憶が入り混じってしまったようだ。なに、気にしないでくれ」


 イセカイ……。

 昨日からハノン様はその単語ばかり言うようになった。


「さあ、行こうか。学園までの道中で少々街中を寄り道したいからね」


「え、ええ……」


 と、私が戸惑っていると彼はさも当たり前のように私の手を握って、走り出した。


「ハ、ハノン様!?」


「ははッ! ファルテシアの手は小さくて可愛らしいな!」


 昔ならこんな事、当たり前だったけど。


 どうして今更こんな……。


 私には今の頭のおかしなハノン様の行動が理解できずにいた。


 



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