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第1話 現人神降臨!見よこれが天才ぞ!

 その男の産声は相対性理論の証明だったという。その赤子の周りににいた者たちは口々に「神の子だ!」「アインシュタインの生まれ変わりだ!」「He is a genius!」とはしゃいだ。そんな大人たちを見て赤子は小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。そして、阿呆ばかりのこの世に産み落とされたことを嘆いた。そんな彼も比較的聡明な両親のもとすくすくと育っていった。幼稚園時代は、近所の子供たちが泥団子を作っている中、彼は反物質を作ろうとしていた。小学校時代はクラスの者たちが掛け算を覚えている傍ら、ミレニアム懸賞問題を解いていた。中学校時代は…飛び級で世界的名門大学をいくつかはしごした後、「猿どもと一緒にいては頭が悪くなる」と言い残し、自分のラボにこもってしまった。しかし、彼の偉業の数々から彼の名を知らぬものは地球上にいなかった。彼の名は「舞園まいぞの 英人えいじん」。この物語はそんな天才が異世界で活躍する物語である。


 英人はいつものようにデーモンコアを触って暇を潰していた。彼は暇なときは円周率を数えることが多かった。円周率には終わりがないため無限に暇を潰せるからだ。しかし、200兆桁目ほどで飽きてしまい、最近は専らデーモンコアを弄っていた。「まるで起伏のない退屈な毎日」彼はその天才さゆえ、新鮮なことが無い日々に飽き飽きしていた。そんな彼を大地震が襲う。「震度6強、マグニチュードは8くらいか?」彼はその場で敏感にその震度を分析し始めた。しかし、それが仇となった。そう彼は()()()()()()を弄っていたのだ。彼のいるラボの地震対策は完璧であった。しかし、その揺れによりデーモンコアを覆っていたベリリウムの殻をくっつけてしまった。次の瞬間デーモンコアは青い光を放ち、彼はその光に飲み込まれていった。「なるほど、これがチェレンコフ光か…なかなか綺麗だな」彼は今際の時であるにも関わらず落ち着いていた。そして、辞世の句を詠み始めた。「産み落ちて この身散りゆく 燦然に いのt…」。しかし、最後まで詠むことができず力尽きてしまった。齢18にして稀代の天才はこの世を去った。彼の死はアレクサンドリア図書館の焼失よりも、人類の進歩を遅らせることになるだろう。


 「ん…ん?ここはどこだ?俺は死んだはずだったが…」英人が目を覚ますとそこは見知らぬ地であった。「なんだこの植物は?俺が見たこともない植物など無いはずだが」彼は周りの風景などから情報を得ようと歩き始めた。しかし、まるで見たこともない草木や虫に鳥。彼は困惑と同時に期待を抱いていた。「ダーウィンの進化論から見ると、この生物のフォルムは不可解なのだが…なんというかラマルクの進化論の方が支持されそうな…」などとブツブツと言いながら森を歩く英人。その時、前方から人の話す声が聞こえてくる。英人は素早く木陰に身を隠し、声の方へ眼をやる。そこには2人の男性がいた。「顔つきはコーカソイドっぽいが、少しモンゴロイドっぽくもあるな、服装は中世ヨーロッパの頃に似ているが、どこか違うな」英人はその身体的特徴や服装などからここがどこか推測しようとしたが、彼の頭脳を持ってしてもこの地がどこかの見当をつけることができなかった。こうなってしまっては、もう直接聞くしかないと判断し、彼は木陰から飛び出し2人の男性の前に立った。そして、「Kie estas ĉi tie?」彼は世界共通言語である()()()()()()()で話しかけた。しかし、2人の男性は怪訝な表情を浮かべ足早に去って行ってしまった。「世界共通言語のエスペラント語が通じないということは、ここは地球ではない可能性が高いな」彼はそう結論づけた。その後、彼はこの地が、天国説や煉獄説、ゲヘナ説、ヘルヘイム説、ドゥアト説など108通りの説を考えたが、結局合点のいく説はなかった。まず、この地がどこなのかを探るために英人は人のいる場所を探して再び歩き始めた。


 

 

 

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