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遅くなってすみません(_ _)
最近忙しいためあまり時間を取ることができず……。次回の更新はおそらく来週になると思います。よろしくお願いしますm(__)m
結局ニ着買って頂いてしまった。本当に申し訳ないと何度も断ろうとしたが、最終的には公爵家にいる手前それ相応のものを来て貰わないと困ると言われたため反論できなくなってしまった。やはり私の持ってきた服では駄目だったようだ。
どちらも普段使えるようなものということで、一着目はシュッとした無駄のない作りになっているドレスだ。主に泉のような透き通る青を基調としていて、胸元のサファイヤが控えめに主張している。二着目はふわりと軽そうな印象をもたせるデサインで、クリーム色をした可愛らしい感じのドレスだ。
どちらも見た目は控えめとはいえ、ふんだんに良い生地を使っており目が眩むほどの値段がした。本当に私が着てしまっていいものなのか。それに今朝も翡翠色のワンピースを貰ってしまった。これでは働かない、かといって貴族令嬢としての知識は充分にない、穀潰し、財産潰しのただの迷惑な女ではないか。
これからどうすればいいのかと悩んでいたとき、後ろから声をかけられた。ユーリ様だ。
「シア、いいものがあったかい?」
「それが、、あの、全て良い物とは充分に分かっているのですがその、やはり何もしてないのに買ってもらうには申し訳ありません。何かすることをいただけないでしょうか……」
懇願する形で聞いてみる。せめて自分の使っている部屋と、自分が使ったところくらいは掃除に参加させてほしい。今まで世話をされたことがないため、申し訳無さでどうにかなりそうだった。
「そう、だな……。本当はシアには好きなことをしていてもらいたいが、、。じゃあ公爵家にいるものとしてのマナーと座学を学ぶのはどうだろうか。伯爵家で教わったものでは追いつかないところもあるだろう。将来私の隣に立ってもらわないといけないし、知識やマナーを持っておいて損することはないだろう。どうだい?」
なんと嬉しい提案だろうか。ユーリ様の提案は私にとって願ってもない提案だった。
「よろしいのですか?」
「もちろん、君がそう望むのなら。では明日から講師を呼んでおこう。私の祖母に当たる人でリベルタード公爵家の者の多くは彼女に教えてもらってきた。彼女は今隠居中だから頼めば来てくれるだろう」
ユーリ様のお祖母様というとエレオノーラ・リベルタード様のことだろうか。そうだとしたら大変だ。エレオノーラ様といえば元王妃の教育係もされたことがあり、マナーに関しては誰もが認める一流。彼女に教わるというのは一種の自慢話の種になるものだ。現にラウラがどうしても教えてもらいたいとお父様にお願いしていたことがあったが、どうしても無理だと断られ、その夜は機嫌が悪いからと私に鞭をうちに来た。
こんな無知な私でも知っているような方に教えてもらえるなんて、本当にいいのだろうか。けれども私が教えてほしいと言い出した手前、ここで断る訳にはいかない。
「ありがとうございます。是非お願いしますとお伝え下さい」
「ああ、伝えておくよ。あとは知識面で見てか……。アルノルドなら事足りるか。最近彼とは会っていないが頼めば引き受けてくれるだろう。よし、そうと決まれば早速連絡しておこう。シア、アルノルドは明日中には無理かもしれないが早いうちに来てもらうようにするよ」
……? アルノルド様といえば魔法師団長のアルノルド・マシエル様のことを言っているのだろうか。なんということだ。こんな私なんかの我儘に魔法師団長様のような人を連れてくるなんてアルノルド様自身にとって迷惑にも程がある。それに魔法師団長様といえば近年稀に見る天才、見たもの聞いたものは全て自分のものにし、実力でも能力でも何一つ彼に勝てるものはないとの噂もある。確かに色々な知識を学ぶのにはこれ以外にないほどの適役かもしれないが、それは私ごときに使ってもいいものでは決してない。
「ユーリ様。お気持ちは大変嬉しいのですが私の我儘のために魔法師団長様をお呼びするのは……」
「?? もう連絡したよ? 明後日には来るって。それにこれはシアの我儘じゃないからね。アルノルドも楽しそうにしてたからいいよ」
きっと通信連絡でもしたのだろう。仕事が早すぎるため一足遅かった。もうこれ以上は何を言っても変わらないので最悪エレオノーラ様とアルノルド様には失望されないように努力しよう。
お二人共超がつくほどの有名な方でいらっしゃる。そして一番問題なのが私の体だ。知識的なことを学ぶ際にはあまり動かないからいいだろうが、マナー、教養になってくるとそういう訳にはいかない。カーテシー、ダンスなどなど、乙女の武器と言っていいほど大事なものを身につけるには多少なりとも苦労は必要だ。
いつまで、私の体は耐えられるだろうか。いいや、こんなに私にとって勿体なさすぎる方々が教えてくだだるのにそんなことは言ってられない。自分にできる精一杯をやりきろうと心に決めた。
「そうだ、シア。明日は暇かい?」
「明日は特に何も御座いませんが……、エレオノーラ様が来るのではないでしょうか」
「お祖母様は午前中に来るから、午後は空いてる?」
はい、と返事をすると嬉しそうな声が返ってきた。ユーリ様は必ず笑顔を忘れない。私はちゃんと笑えているだろうか。こんなにしてもらって何も返せない自分がとても歯がゆい。
「それなら良かった!! もしよければ何だけど、明日の午後は僕に時間をくれないかな。勿論シアが嫌じゃなかったらで大丈夫だから」
私に拒否をする理由はない。もちろんです、とお返ししたところ、今度は先程よりも比にならないくらいのとけそうな笑みを返された。少し私にとっては眩しい。
じゃあまた明日お昼すぎに迎えに行くからとユーリ様は笑顔でさられた。何をするのだろうか。もしかしたらどこかへ行くのだろうか。久しぶりにドキドキと胸の高鳴りを感じる。久しく感じていなかった感情が少し動いた気がして自分でもびっくりしていた。この感情を胸に、私も部屋へと帰った。




