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22 ユーリウス視点

寝坊です。

ほんとにすみません(_ _)

「精霊を召喚してみないか?」


僕の提案にアルノルドもアニタも驚きの声を上げる。


「原因は精霊だ。だったら解決法を知っているのも精霊だけだ。それにアルノルドも僕も人並み以上に魔力がある。出来ないことでは……おそらくない」


精霊の召喚に必要なのは恐ろしいくらいの大量の魔力と魔法陣。その魔法陣はアルノルドが知っているし、僕とアルノルドの魔力を足し合わせば何とか中級精霊くらいは呼び出せるだろう。


「無茶なことを……でも、やって見る価値はありそうだね」


こうして早速、アルノルドの研究室の一室で行われることになった。



◇◇◇


アルノルドが魔法陣の上で古語である呪文を唱えている。それと同時に僕とアルノルドの足元から緑色の光が溢れ出し、部屋をいっぱいにする。

あまりの眩しさに目を瞑ったときだ。幼い、男の子か女の子かも区別出来ないような声が響く。


『うわー、久しぶりに呼び出されちゃった!』


緑色の髪色をした小さな男の子がくるくると僕達の周りを飛び回っている。成功、したようだ。


「こんにちは、精霊様。私はユーリウスと申します。突然の呼び出しに応じていただきありがとうございます」


礼をすると、あっ! と何か思い出したように精霊は声を上げた。


『ユーリウスって、この前瑠璃の精霊が連れて行こうとした子でしょ? 大きくなったねー。ついこの間まではまだ僕くらいの大きさだったのに』


はっと僕たちも目を開く。まさにその出来事だ。


「そうです。そのことについてお伺いしようと思っていたのです。その時かばった少女は今、胸の内から瑠璃色の石が侵食し、少女を覆い尽くそうとしています。これを治す方法はないのでしょうか」


『うーん、僕がかけたわけじゃないからなー。瑠璃の精霊をよんでくるー』


そう言い残し、姿を消したが数分後、瑠璃色の精霊を連れてともに戻ってきた。


『うわー! ほんとにユーリウスだー!! 緑の精霊が言ってたことは間違いじゃなかったんだね。ところで僕に聞きたいことって?』


シアの事を話し、治療法を尋ねる。


『へー、大きくなる前に会っちゃったんだ。あのときは僕もユーリウスを連れて行くのを止められて怒っちゃったからちょっとしたいたずらを女の子にかけたんだけど、、発動しちゃったんだね』


「私がそのことを信じていないばかりにシアにあってしまって……」


『それにその人が悲しく感じたら石はすごい速度で広がっていくんだ』


はっとアニタが言っていた言葉を思い出す。シアは、、


『本当はこんなことしなくてもいいんだけどねー。ユーリウスだから特別に薬を上げる。でもこれは顔にまで侵食したときにしか使っちゃ駄目だよ? もし使っちゃったら逆効果だからね』


そう言って僕に手渡してくれたのは瑠璃色の瓶だった。と、そこで魔法陣の光が急に衰え始める。きっと精霊が二人に増えたことで僕たちの魔力が足りなくなったのだろう。

ありがとうございますと礼をいうと、『またねー』と手を振って精霊たちは帰っていった。







「…………結果オーライということでいいんだよな」


「ああ、薬ももらえた。ただ悲しく感じると石が広がり始めるということは……本当にシアには取り返しのつかないことをしてしまった」


「……ま、これから誤解を解いていけばいいんじゃない? これでフェリシアちゃんが助かる道も出来たし」


項垂れる僕をアルノルドが励ましてくれる。

そしてフェリシアを侵食している石が顔に広がるまで待った。そしてそろそろだという日にアルノルドと共にアニタの報告を待っていたときだ。突然、物凄い勢いで公爵邸の御者が部屋を訪れた。




「ユーリウス様!! いきなり部屋に入室したこと深くお詫びします。そして後から処罰を受けます。でも今は、、お急ぎください!!」


「いきなりどうしたのだ!?」


「フェリシア様が、フェリシア様がいなくなりました……!!」


は? ……と思考が停止する。フェリシアがいなくなった? 何故。

御者の言葉を聞いた瞬間アニタが全速力でシアの部屋に行く。そして一枚の手紙をもって帰ってきた。その手紙には"ユーリ様へ"とたどたどしい文字で書かれており、急いで封を開ける。



『ユーリ様へ


 突然いなくなることをお許しください。

 今まで言うことが出来ず、ユーリ様たちを騙しているような形になってしまいましたが、私は病気を患っていました。どうやら石になって消えるようです。

 最後はユーリ様に直接お礼を言おうと思っていたのですが、どうしても口にしようと思うと喉の奥でつっかえてしまい言うことが出来なかったのでこうして手紙を書きました。

 

 ユーリ様との日々は考えられないくらい幸せで楽しかったです。ユーリ様のお優しさにはいつも甘えてばかりでした。でもジュリッサ様との関係を知らず、ご迷惑をかけてしまってすみません。今まで公爵邸においてくださったこと、本当に感謝しております。

 どうかお元気で、ジュリッサ様と共に幸せになってください。


追記

アルノルド様やエリザベタ様、エレオノーラ様にもありがとうございましたとお伝え下さい。


フェリシア・カレロ』




涙が頬を伝うのが分かった。手紙には涙が落ちた跡があり、どうやらシアも泣いていたようだと思うとまたもや涙が止まらなかった。


「……ユーリウス様、今は泣いている場合ではありません。フェリシア様を探さないと。手遅れになってしまいます」


アニタにそう急かされ、御者がフェリシアをおろした場所へと急いだ。





くそっ、どこにいるんだ!? 

かれこれ2時間ほど探し回ったがどこにもいない。アニタもアルノルドも必死に目を凝らしながら探している。

シアはあの体ではあまり歩けないはずだ。よく考えろ。シアがここにおろしてもらった理由。ここは市街地であるため人通りが多いからもあるが……違う。

ここは、あの場所に近いんだ。


アルノルド、アニタを連れ急ぎあの場所へと向かう。

昔シアとよく遊んだ場所、公爵邸に来て始めてシアに見せた花畑。




「…………いた」



姫百合が咲き誇る花畑の隅、大木の下で瑠璃色の石像のようになりつつあるシア見たとき、とてつもない焦燥感に駆られた。

何故シアに頼ってもらえるような人になれなかったのだろう。

後悔の渦が自分を襲う。

目の前が真っ暗になったとき、後ろでアルノルドの焦る声が聞こえた。


「ユーリウス、何ぼうっとしている!? 今はそんなときではないだろう!! はやく!!」


アルノルドの言葉にはっと我に返り、精霊からもらった薬をシアの口に入れる。ほぼ石となりつつある口に無理やり飲み込ませるように口を重ねた。そしてシアの喉が少し動いた瞬間、パキッと瑠璃色の石にヒビがはいりシアの体から剥がれていく。シアの白い肌が見え、安堵と同時にギュッと抱きしめる。




「……良かった。もう、寂しい思いはさせないから。シア、迎えに来たよ」

アニタは精霊達からもらった小瓶のことは知っていますが、それが万能薬とは思ってませんでした。アニタがフェリシアの側を離れると言ったのは首元にまで石が侵食していると、アルノルド達に相談するためです。


次話最終回!!!

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