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おまたせいたしました。

この物語完成したので今日から毎日投稿します!

あと他の人の目線も入れると10話です。

久しぶりに公爵家の外へ出たような気がする。ここ1ヶ月は体の痛みが特に酷く、外へ出る気にもならなかったからだ。マナーレッスンや座学で学んだことを覚えるのに必死でそれどころではなかったのも理由の一つである。

そういえば私の淑女としての態度はどうなのだろうか。エレオノーラ様からはなかなか良いという言葉が出ないのを考えるとやはりまだまだ駄目なのであろう。しかしエレオノーラ様との約束の期間まであと少しであるのも事実だ。このままどこまで私が吸収できるか。正直あまりできる気はしないが、せっかく与えられた機会を最期までやり通したい。体が動くかは分からないが。


「到着いたしました。フェリシア様、お体は大丈夫ですか? あまり揺れの少ない馬車だったと思うのですがフェリシア様にとっては久しぶりの外出となるものなので……」


アニタが心配してくれる。

体が痛いのは事実だけれどそれは今に限ったことじゃない。それにやはり公爵家の馬車は作りが違うのかほとんどと言っていいほど揺れを感じない。


「大丈夫よ。それでは行きましょうか」


ゆっくり歩く。ここは侯爵家の敷地だ。エレオノーラ様から教わったことを思い出しながら実行する。

私達が案内された場所は白と黄色の薔薇が咲き誇った美しい庭園だった。その中心に座っている可憐な女性に目が行く。紫ががかった銀髪を後ろで緩く結い、動作一つ一つがとても完成されている。さすがユーリウス様の又従兄妹だけあり、その美貌は誰にも負けていないだろう。薔薇の中でお茶を嗜む姿はまさしくこの絵画の中の主人公だった。





「お待ちしておりましたわ、フェリシア様。どうぞこちらにお掛けになって」


透き通るような声が響く。その瞬間はっと我に返りカーテシーを行う。初めはもっと深くまで腰が下がっていたはずだが今は痛みが酷すぎて前よりもできていない気がする。見苦しくなっていなければいいが。


「本日はお呼びいただきありがとうございます、ジュリ……」


「今は堅苦しいことはいいわよ。とりあえず座ってお話しましょう」


先程よりもより砕けた感じの口調になり席に進められる。全体的に動作がゆっくりになってしまうのだが、ジュリッサ様にはどう映っているのだろうか。カーテシー同様、見苦しくなければいいが……。

私が座ったと同時にジュリッサ様の後ろに控えていた侍女が私の前に茶菓子を出してくれた。


「あまり長々と居座ってもらうわけにもいかないから単刀直入に言うわ。あなた、何故私の邪魔をしてきたの?」


邪魔……? 心当たりが見当たらずおろおろしていると呆れたようにジュリッサ様がため息をついた。


「白々しいわね。本当に分からないの? ユーリウスと私の仲にどうやって割り込んできたのかと聞いているのよ。ユーリウスと私はあなたが現れる前までは又従兄妹の関係を超えたそれ以上の仲になっていたわ。そしてユーリウスが成人するタイミングで私との婚約も発表する予定だった。それなのにいきなり誰かもわからないあなたが現れたときの私の気持ち、分かるかしら?」


ああ。そういうことだったのか。私が今日お茶会に呼ばれた理由はもしかしたらこういうことなのではないかなと様々な考えの中の一つとしてあった。

それにここへ来る間、アニタからジュリッサ様のことについても聞いていた。よくユーリ様と一緒にいたことも、仕事面も彼女自身王城で働いておりユーリ様の手伝いなどもしているのだと。それに加えて彼女自身とても真面目に働いているため多くの人から好かれていることも耳にしていた。私なんかよりも雲泥の差である。


「私自身、何故ユーリ様の婚約者候補に選ばれたのかはわかりませんが、、」


ぴくっとジュリッサ様の形の良い眉が動いた気がした。いけない。選ぶ言葉を間違えてしまった。


「分からないですって? それにユーリ? 何故あなたが私でも許してくれなかった彼の愛称を呼ぶことができるのです。身の程を知りなさい」


ユーリ様が呼ばせたのだが、、ジュリッサ様の前ではこれから必ずユーリウス様と呼ぶことにしよう。

ジュリッサ様が怒るのは当然のことであると思う。いきなり現れたやつに自分の想い人がとられるなんてありえないことだ。それに加え名前も顔も見たことのない令嬢だったら余計にそう思うだろう。


でも良かったとも思った。

ユーリ様にはこんなにも思ってくださる方がいることを知れて。それに生涯の伴侶として、また仕事のパートナーとしてジュリッサ様ほどユーリ様の隣に立つのがふさわしい方など存在しない。


そういえば前に姫百合の花畑へ行ったときにユーリ様は懐かしそうな、泣きそうなお顔をしていたけれど、ジュリッサ様と幼い頃から仲がいいということはジュリッサ様とのことを思い出していたのだろうか。

モヤモヤとしたものが薄く霞のようにとりつく。


「存じております」


「知っているんだったら今すぐユーリウスのそばから離れなさい」


「それは、、」


「出来ないの? 私とユーリウスの幸せを邪魔しておきながら」


出来れば今すぐにでもリベルタード公爵家を出ていくのが最善なのだろう。けれど……今出ていったところで私は帰るところがない。きっとカレロ家に戻っても門前払いを食らって終わるだけだ。


「…………3ヶ月、3か月いただけませんか。3か月後には必ず私はリベルタード公爵家の敷地にいないことを誓います。それまではどうか……」


3ヶ月後にはおそらく私の命はこの世にはない。それまではリベルタード家にいることは図々しすぎるだろうか。


「3か月ね……、あなた、どれだけ居座る気なの? ……まあいいわ。3か月後にはいなくなるんでしょう? それなら許してあげる。あ、だけど私、今ユーリウスと一緒の仕事をやってるから私が公爵家にいることも増えるわ。それでも?」


「はい」


「ではもう出て行って。出来るだけあなたの顔を見たくないの」


そう残し、後はまるではじめからジュリッサ様しかいなかったかのような形に戻っていた。ここの使用人もさすが侯爵家とだけあって動きが早い。

感心して部屋を後にする私の後ろでアニタが表情を曇らせていることに私はこのとき気づかなかった。

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