機械の心臓もドクンと脈打つ
根を張った巨木の間をぬけ、ひたむきに歩き続ける。
知識では知っていただけの「木」という実物を、理解したつもりでいた僕にこの状況は興味の対象でしかなかった。
目的のため歩みは止めないが、直に触り確かめていく。
「彼らもまた生きている。私も生きれているのだろうか」
------------------------
『 その問いはあまりにも残酷だ。答えが出るのはいつになるのだろうか。』
笑わない子供に話さない人間。泣き叫ぶ大人に笑い続ける人間。
自分の理解の及ばない存在を恐れる人は少なくない。
人の心を理解できない人造人間もまた。
『君は私を怖がらなかった。それが人間とは違う所なのかもね』
魂の鼓動の無い人造人間は生きているのか……
------------------------
森の中であるにも関わらずおかしい所がある。
「生物の存在がない」
木は単体では生きてはいけない。虫や動物たちの零すエネルギーを糧として取り込み、その生を取り留めているはずだ。なのに何故。
「おかしいことは分かる。そして、ひとつの仮説が出来る。ここは地球とは違う世界であると。本の世界とは違いすぎる。この世界であの人はなにをさせたいんだ。」
心を知るためには、一人では無理ではないのか。心の成長が、自分一人だけの葛藤のみで構成されるのであれば、既に手に入れているものなのだから。この世界を、新しいものを知るだけで手に入れられるほど簡単では無いだろうに。
ふと、目がいく。木の根元に傷がある。
バレないように隠してあるかの如く、ひっそりと。
「マークなのか……意味は分からない。だが、これが僕を繋ぐ糸であることは確か。ソフィアの助けなのかもしれない。」
体を屈ませその目印を探す。色の付いた何かを擦ったであろうその印をただひたすらに探す。真っ直ぐ1本になって続いてる訳ではなく、幾重にも交差しているその道なりは僕の好奇心を揺さぶる。何かあれば面白い。その気持ち一つだけを持ち、鼓動は早くなる。
「ずいぶん開けた場所に来たな」
何も無いその場所は、何も無いが故のおかしさをはらむ。
今まで続いた森とは違う異質な程に整備されたその丘は、何かのためにあることは確かだ。石が散在していることに意味があるのだろう。
「何かあってくれと頼んだが、何も無いとは。それもまた面白い。石が並べられただけの丘なんて……またマークが……」
今までと同じ色の何かが書かれている。知識の中にこれと同じものは存在せず、意味があったとしても理解はできない。暗号解析を回しても効果は無いその形は一体。
「面白い。これがなんなのか知りたい。」
その時…
【シャアアアアア!シシシャアアアシャアタ!】
音がする。もしや声なのか。
頭をあげると、そこには緑の皮膚をした四つ足の生物がこちらを見ていた。
「こちらに敵意はありません。これは貴方のものですか?」
【シャアアアアアアアアアアアアアアアア!】
その足を早め、こちらに近づく生物。危険であると理解する。
正常な鼓動が早くなる……