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当て馬女子の受難の日々  作者: 雨野
幼少期
11/20

サブタイトル漢字表記は優深視点です。



 俺は前世の記憶を持つ小学生。今世の名は大橋優深、絶世の美少年である。鏡を見飽きない…うっとり。

 しかも家は金持ち、美人の姉さんと優しい義兄さんもいて超ハッピー。将来安泰、女の子にモテモテ待ったなし!!でも顔と金しか見ない子は勘弁ね!


 最初は前世の家族を想って今の家族を拒否していたが…真っ直ぐに愛してくれる家族のお陰で、諦めがついた。

 以来寂しい気持ちになっても、温かい家族のお陰で笑顔になれた。


 そしてなんと!前世の姉と再会したのだ!!俺は一目で分かったし、姉ちゃんも同様だった。



 それは、いいんだけど。その日俺は絶望の底に叩き落とされた。

 俺はどうやらBL漫画の主人公で…女の子じゃなくて男にモテモテらしい…いやだーーー!!!


 癇癪を起こして泣きじゃくっていたら、気付けば家。やだな…精神年齢が肉体に引っ張られてる…!俺は成人男性だ!!

 ふと冷静になると、前世で姉が腐ってたという事実にも衝撃を受けた。

 そこは最悪の未来を回避するためだった、とポジティブに切り替える。



 その夜上質な布団の中で目を閉じて、久しぶりに前世を思い出すと…


「……?あ、あれ?姉ちゃんって、名前なんだっけ…?」


 何故か…姉ちゃんと俺の名前が思い出せないと気付いた。両親や妹、友人は分かるのに。俺ら二人分…まるっと記憶が無い。

 どんな顔をしていたか、性格、人生、住んでた家…全部鮮明に思い出せる。


 転生してすぐは覚えてたはずなのに。少しずつ…俺らに関することだけ消え始めている…?


「…今の俺らには、不必要な情報って事か…?」


 俺達はもう姉弟ではなく、他人なのだと現実を突き付けられている気分になる。

 いずれ全て忘れてしまうのだろうか。それが当たり前と言われてしまったら、それまでだけど。

 


 俺は元々輪廻転生を信じていたが、それは前世とは別人だと区別をしていた。

 同じ魂を持つだけの、よく似ている全くの他人。


 でも…俺らは生まれた時から前世の記憶があり、人格も前世ベースだ。

 それはもう、顔が違うだけの同一人物ではないのか?と錯覚する。

 生まれ育った環境で、多少性格に影響はあったようだが。


 例えば前述した姉さんと義兄さん。彼らが迎えるであろう未来を聞き…俺は涙が流れて止まらなかった。

 俺達は最悪の未来を回避すべく動いていたが、その最中。


 友人である東雲楓のファインプレーで事態が進展したのだが…一華は「いいのかなあ」と少々後ろめたそう。人命が最優先!なのですぐ切り替えていたけど。


 姉ちゃんは違う。「終わりよければ全てよし!!使えるもんはなんでも利用する!」な精神の持ち主だ。

 むしろ楓に「アンタちょいっと癇癪起こせや」と命じる可能性もなきにしもあらず。そんな姉でした。


 結果は同じだけど、そういった些細な違いはあった。

 あと言葉遣い。一華は姉ちゃんと違い「そうね」「分かったわ」と女性らしい話し方をする。でもたまに中性的になるし、心の中と表面で差異があるのだろう。


 俺も自分で分かっていないだけで、性格は変化しているかもしれない。



 おっと前置きが長くて悪いね。何が言いたいかというと…

 俺と一華は血も繋がってないし顔も全然似てないけど。

 姉弟だとも思えないけれど。


 やっぱり…俺らは家族なんだ。

 前世とは程遠く、一華は俺に匹敵する絶世の美少女だ。でもどうしても、女の子としては好きになれない。

 一華も同じで「優深ちゃんとだけは結婚しないよ」と言っていた。


 それが今世の俺達なんだ。




 *




 今日は大変な一日だった。そう…

 俺達は頑張って、義兄さん達の未来を変えたんだ!


「「イエーイ!!!」」


 結婚式の日、一華はうちに泊まりに来た。まだ子供なため一緒に寝る許可をもらい、深夜に二人で祝杯を挙げる。


 事件解決だけでなく、俺達にとってはもう一つの理由もあったけど。


「もう朔羅さんが優深ちゃんに、愛さんを重ねることはないでしょう。

 これで未来は完全に変わった!って断言できるよ!!」


 くぅ…!俺の純潔?も守られたのだ!!久々に漫画の内容について話し合った。




 義兄さんは悲しみに暮れることなく、姉さんと共にフランスへ渡る。→弟の俺に欲情する可能性は皆無!


「大橋家も外国に引っ越さない、優深ちゃんはずっと篠宮学園に通う!

 楓は今後もいいお友達としていられそうだし、この問題からは除外していいでしょ」


 お友達、か。あの男が一華の心を奪える日は来るのだろうか。



「拓馬くんはどうかな…

 漫画の拓馬は『再会し、美しく成長した優深に一目惚れ』な訳だから。別れる期間が無ければ、そもそも惚れるのか?という疑問が出てくんのよ」

「いくら美人でも、男に惚れるもんかな?」

「そこはご都合展開か…彼は無自覚の両刀(バイ)なのかも」

「…それなら、自分で言うのもなんだけど。年々美しくなっていく優深に惹かれてく…って可能性もアリ?」

「アリアリよ。でもそうなったら、私達に為す術なんて無いじゃん。人の感情なんて…止められないじゃん」

「……………」


 俺は返答に迷ったが…少なくとも現実の拓馬は一華に惚れている。

 そんな一華と親しい俺は、むしろ目の敵にされている節がある。


 でも漫画の通り、クラスで無意識に高慢な部分を多々見せている。

 な・の・で。そろそろ本気で、奴の鼻っ柱をへし折るかな!あくまでも自然な形でな。



「次、嫉妬深いゆっくんこと千那くん。彼もまだ希望がある」

「マジ?」


 思わず前のめりになってしまう。いかん…ちょっと喉を潤して、冷静になりましょうかね。


「そもそもゆっくんが優深に対して…その、恋愛感情を抱く切っ掛けがね?優深とさーさんがヤってる現場を見ちゃったからなのよ」

「ブーーーッ!!?」


 思いがけない言葉にジュースを噴き出した。汚っ!?と一華はプンスコ拭いてくれる。


「もー…とにかく、それ以来優深のことをエロい目で見る訳よ。

 優深の部屋で二人きりになったある日。「ねえ優深。この前さ…偶然見ちゃったんだけど…」と優深を押し倒す」

「ごほっ、げっふ、うぐ…!どこで致してた…?」

「さーさんの車の中」

「ひぃ…」


 難易度高くない?無理むり絶対俺はムリ!


「ただの友達、ならそこまで執着しない人だし。普通にクラスメイトとして接するしかないよ」

「そっかぁ…」


 若干の不安は残るが、最大の障害を俺達は乗り越えたばかり。


 今後は騒がしくも、楽しい学園生活が待っていると信じよう──…




 *




 義兄さんと姉さんが旅立ち、気を張り詰める必要もない穏やかな日々が戻ってきた。


「おはよー優深」

「おはよう楓。今まで悪かったな、もう普通に遊べるぞ」

「!!!じゃあじゃあ、週末遊びに行っていい!?習い事ない日はいつ!?」


 登校してすぐ、そんな会話をする。

 一華が楓を『わんこ系』って言ってたが…犬耳と尻尾が見えそうなほどハイテンション。なるほど…


 結婚式でコイツが登場した時はビビったわ。

 なんでサプライズの対象が俺達になっていたのか…全く!


 俺はクラスで楓と過ごすことが多い。それと席が近い子はちょくちょく会話するかな。



「おはよう沖原くん!テレビ見たよー」

「おはよう弓川さん、ありがとう」


 ん?沖原拓馬が登校してきた。

 彼は母親が女優で、その関係でテレビに出ることもある。

 それが放送された次の日は、今みたいに女の子に囲まれているんだ。


「おはよう、優深くん」

「…おはよう、拓馬」


 席が前後のせいで自然と挨拶をする。

 一華は俺にとって妹みたいな存在だから…彼女を不幸にする(かもしれない)奴は好きになれん。


 ただ子供の恋心なんてすぐに消えるもんだ。

 こいつが天狗のまま大人になるんなら、早く一華から興味を失くしてくれないかな…切に願う。



 今日の国語は漢字の小テスト。ふ…余裕という言葉すら余るぜ。一〜十と花や月といったレベルだもん。

 それでも一年生には難しかろう、満点は俺と拓馬含む六人だけだった。



「拓馬くんすごーい!」


 授業後、奴には女の子が集まる。ちなみに俺はどっちかって言うと男が集まる。

 何故だ…!?こんなに美少年なのに!!まさか七歳にして、BL漫画主人公のオーラでも溢れちゃってんの!?


 ま、まあ…可愛すぎるせいかもしれん。成長して男らしくなったら、きっとモテモテに違いない!


「ありがとう。大したことないよ」

「…………」


 拓馬のそのセリフ…笑顔の下で「この程度で騒ぎすぎ」と副音声が聞こえてしまう。

 駄目だ、漫画の情報が邪魔をしている。決めつけはやめよう。



「優深すごいな!俺半分しかできなかった!」

「ふっふん、勉強してるからな!(※前世で)」


 拓馬に聞こえるよう、わざと大きな声で言ってやる。

 バレないようにそろ〜…っと後ろを見ると。


 拓馬の顔に…「勉強しなきゃ満点取れないの?」と書いてある、気がする。なんつーか鼻で笑われた、一年生のくせに!!

 金持ちが多い篠宮学園は、大人びた子が多いと思う。その中でもコイツは群を抜いている。



 見てろよ…お前はこれから先。お前の理解できない『努力する凡人』に悉く敗北するんだからな!!





 季節は六月下旬、今日はプール開きの日。

 鍛えるためにスイミングに通ってる俺は、もう二十五メートル泳げるんだぜ!前世でも得意だったし!

 俺は完璧だと先生にも判断され、お手本も兼ねて自由に泳がせてもらった。

 授業は全く泳げない子、スイミングに通ってるような水に慣れてる子、俺の三つに分かれる。俺ってなんだよ。

 まあ一年生なんて、浅い場所で遊んでるだけだし。頑張れ少年少女!



「…………」


 視線を感じる…拓馬だ。

 俺の動きをじぃ…っと見つめ、真似をしようとしている。


 すぐには泳げなくても…流石メインヒーロー、吸収が早い。不恰好ではあるが、ちょっとだけ前に進んでいる。まだ深い所には来れないが。


「優深くんかっこいー!」

「えへへ、ありがとう」


 あ、今の声援男子ですから。チクショウ!!!



「うあー!やーだー!!」


 楓は全然泳げないどころか、水に顔をつけるのも嫌がる。

 なので「一華と海水浴行って、溺れるダサい姿見せんのか?」と煽ってみたら。


 なんか知らんうちに、同じスイミングスクールに通い始めてたわ…

 


 そんな楓は置いといて。

 拓馬は思うように泳げず、イラついているように見える。

 だよな。だって俺がいなかったら、自分が劣ってるって自覚しなかったもんな。


 …所詮俺は努力の人間、天才型には敵わんだろう。



 十で神童 十五で才子 二十過ぎれば只の人。今の俺にぴったりのことわざだ。

 拓馬は数年もすれば俺に追い付き、追い抜くだろう。


 

 だからその時までに…

 努力することの苦しさ、実った時の爽快感。

 自分がどれ程恵まれた立場にいるのか。

 他人に寄り添う心…そういったものを知って欲しい。



 そんで将来いい男になったなら。

 ま…一華との仲を応援してやってもいいかもな。

 


優深がモテない理由。

・可愛すぎて男の子に見られていない。

・一華と特別な関係だと周囲に思われているので、女の子は諦めている。

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