お茶
お茶
返事の返答はすぐにやってきた。
体調が大丈夫ならすぐにでもお茶をとの事。なので私は明日早速、鈴麗様の元に向かう事にした。
そして、お茶会の場所を聞いて顔を顰めた。
「え? そこでお茶会をするの?」
春さんも戸惑い何度も文を確かめている。
「そのようです……なんて事でしょう。王蘭様が溺れたあの池のそばでお茶を飲むなど……」
許せないのか、怖い顔で手紙を凝視していた。
「ふーん……何か考えがあるのかしら……? まぁそこで大丈夫よ!」
「王蘭様! 行くのですか? ご自身が事故にあわれた場所ですよ」
「ええ、別に池が怖いわけじゃないから大丈夫よ! それに水の中でお茶会する訳でもないし」
私は構わないと頷くと、早速明日着ていく服を決める為に張り切ってる凛々と、用意に取り掛かった。
次の日。天候にも恵まれ、早くからあの溺れた池へと春さんと凛々を連れて庭園を歩く。
死にかけた場所だったが、私が生まれ変わった場所でもある。
恐怖心は無かった。
格上の鈴麗様を待たせる訳にも行かないので、待ち合わせの時刻よりも早めに来たのだが、そこにはもう既に鈴麗様とお付きの方達が着いていた。
「うそ! もういるわ」
用意された椅子に腰掛け、じっと池の方を見つめていた。
「くっ! 王蘭様……申し訳ございませんが鈴麗様に謝罪をしてくださいますか……」
春は主である私を謝らせることになってしまったと悔やんでいたが、私は一向に構わなかった。
「もちろんそのつもりよ、何より待たせたことは悪いからね! きちんと謝るわ!」
春さんに心配いらないとウインクして見せた。
「王蘭様……」
驚く春さんをおいてどんどんと早足で歩く。
「鈴麗様! お待たせしてしまい申し訳ございません」
顔の前で手を組んで肘をつき、顔を下げて、大きな声で謝罪した。
「鈴麗様……このお方が王蘭様です」
何も答えない鈴麗様に、お付きの女官が耳打ちした。
「ああ、あなたが……大丈夫よ、私達が先に来ただけだから」
なんだか気のない返事が返ってきたけど、怒っていないようでよかった……
ただでさえ格下なのに、遅れてきたなど難癖をつけられてもいいようなものを……
チラッと顔を隠した服の間から鈴麗様を見上げる。
さすが正妃候補だけあって、女の私が見ても惚れ惚れする美しさだった。
長い髪は薄い白に近い桃色で、毛の先まで輝いている。少し憂いのおびた瞳はまるで血のような真紅色。
肌は白く透き通り、全体的に白く儚げに見えた。
そんな真っ白な兎のような鈴麗様がこちらをじっと見つめる。
「ねぇ……あなたここで死のうとしたのよね?」
「は? あっ! すみません……質問の意味が……」
確かにあの時の私は全てを嫌になり、助けを求めるように池に落ちた。でもそれは私しか知らない事のはず。
鈴麗様がなんでそれを知ったのかが、わからなかった……
一体この人は何を知っているんだ。
王蘭は背中にツゥーと汗が流れるのを感じた。