新たな
「鈴麗様聞きましたか! あの溺れた王蘭様が意識を取り戻したようです!」
鈴麗は女官の言葉にピクっと少しだけ反応する。
「そう……死ななかったの……可哀想に」
そっと呟くと顔を見られないようにフーっとため息をついた。
「あんな皇帝陛下にも相手にされない方ですからね、きっと嫌になって自殺したんじゃないかって女官達の間で噂になっております!」
「自殺……王蘭様ってどんな方だったかしら? 全然覚えがないのだけど」
「物静かで暗い感じの方ですね! 鈴麗様とは正反対です!」
「そう……なの……ちょっと会ってみたいわ」
「え⁉ 王蘭様にですか? 正紀に一番近いと言われる鈴麗様が会う価値など……私は感じられませんが……」
女官が顔を曇らせた。
「何故池に落ちたのか聞いてみたいだけよ。不敬があればすぐに兵を呼ぶから大丈夫よ」
どうせなら詳しく聞いてみたい。
鈴麗の言葉に女官は頷くしか出来ずにすぐに王蘭の所に文を送った。
◆
「これは……何かしら?」
次の日春さんから渡された文を眺めて眉をひそめた。
「招待状にございます。正紀候補の鈴麗様からのお茶のお誘いですがどうなさいましょうか?」
「どうなさいましょうかっていかないと不味いんじゃない? 位が上の后妃ですよね?」
「そうでございますが、王蘭様はまだ起きたばかり……体調も優れぬのにお茶に誘うなど……何か良くない予感が致します」
「んーでも体は元気よ! 昨日たくさん寝たし、ほぼ回復してるわ」
私は心配ないと、腕をあげてブンブンと振り回す。
「王蘭様、はしたないですよ……」
「ああ、すみません……」
春さんの顔がヒクついたのを見て、サッと手を下ろした。
全くもって后妃と言うのは窮屈だ。これなら町娘の方が楽で楽しいだろうな……出会いも多そうだ。
昨日は寝ながら今後の事について考えていた。
ここを上手いこと追い出されて、このまま戻っても両親に迷惑かけるし、家からも勘当とかされるのが理想なんだけど……そうすれば、世間体もたもてそうだ。
その為には目立たずに何かしらいい情報を仕入れないと! なので……
「春さん! 私このお誘いのってみます! なにを企んでいるのかも気になるし……それに後宮内の揉め事はご法度ですよね?」
「それはそうですが……それは表向きだけです……裏では……」
春さんは心配そうに口を噤んだ。
「ふーん、やっぱり裏があるのね! なら尚更色んな人から話を聞かないと! 凛々、早速返事を返してきて! 楽しみにしてるって」
「はい! なら王蘭様も綺麗に着飾らないといけませんね! 楽しみです」
凛々は嬉々として文を受け取ると早速と部屋を出ていった!
「あっ!」
春さんが何か言おうとする前に、もうその姿は見えなくなっていた。