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協力


「鈴麗……私に出来ることがあればお手伝い致します! その恋文……私に預けてくれませんか?」

「でも……後宮に入った女性からの文なんて彼には迷惑では……しかも一度は断ってるのに」

「それでも思いを伝えてみれば鈴麗様もスッキリするのでは? どうせ死ぬなら足掻いてからでもいいのでは?」

「王蘭様……あなた、意外と過激なのね……もっとあなたは大人しい方かと思ってました」

「よく言われます」

王蘭はニカッと笑った。

「ありがとう、あなたに話を聞いてもらえてよかったわ……でも大丈夫。私は、皇帝陛下のもの……この気持ちはもう諦めなくては」

鈴麗様が悲しそうに笑った。


それからおもむろに髪飾りを外した。鈴麗様の装いに対して質素で、使い古してあるように見える。しかし、繊細な装飾が施されているそれは、鈴麗様の儚げな容貌によく似合っていた。

「これを……」

鈴麗様が悲しそうにそれを差し出すので近づいて受けとった。

「これは?」


説明を求めるように鈴麗様を見つめる。

「雲垓が屋敷を出るときにくれたの。お金もないのに……必死に働いて買ってくれたみたい……」

そういいながら、鈴麗様は愛おしげに髪飾りを見つめる。彼女がこれを大切に思っているのは一目瞭然だった。

「素敵ですね」

私が髪飾りをそっと返そうとすると、鈴麗様は首を横に振る。

「これ、よかったら貴女にあげるわ。持っていると決心がつかないから」

「そんな! こんな大切な物もらえません!」

「なら捨てておいて」

トントン……

扉を叩くとすぐに南明様が入ってきた。

「話は終わりましたか?」

私達の大きな声に南明様が部屋に来てしまった。

事を荒立てたくはなかったので平然と笑ってみせた。

「はい、ありがとうございます。やはり私が思っていた事は間違いで鈴麗様は足を踏み外した事がわかりました」

南明様が部屋に入ると今度は鈴麗様を見つめる。

「鈴麗様……今の王蘭様の言うことは間違い無いですか?」

「はい……私、王蘭様があそこで事故に合ったのを聞いて、どのような状況だったのか詳しく知りたくて。彼女に聞いてるうちに身を乗り出してしまい、そのまま……そんな私を王蘭様は勇敢にも助けて下さいました。彼女を牢に入れるなど即刻止めて頂きたいです」

「わかりました……では鈴麗様の件も『事故』と言うことでよろしいですか?」

「はい、もう二度とあそこには近づきませんわ」

鈴麗の言葉に南明は彼女をじっと見つめると……

「まぁいいでしょう。我々としては怪我や亡くなる方を極力減らしたいだけなので……次は気をつけて下さいませ」

「はい」

「え? それで調査は終わりですか?」

話を聞いていた女官長が驚いで南明様に声をかけた。

「はい、当事者の両名が何もなかったと言っている以上、どうする事も出来ないのでは?」

「しかし……もしかしたら王蘭様に脅されて……口裏を……」

シン!! いい加減にしなさい! 彼女はそんな事なさいません! いくらなんでも失礼です、謝罪なさい」

鈴麗様が女官長を睨みつけた。

「そうですね……王蘭様は今や罪人ではありません。仮にも後宮の后妃候補、これ以上は不敬に当たりますよ」

南明様はなんだか面白がるように笑いながら言っている。

「申し訳……ございません……」

女官長は悔しそうに頭を下げた。

下げて見えない顔はどんな表情かわからないが……鈴麗様の顔を立てるためにここは穏便に……

「慣れてますから大丈夫です。では誤解も解けたようなので私達はコレで……鈴麗様もまだ本調子ではありませんしそろそろ……」

南明様に目線を送るとこくりと頷き頷く。

「では、鈴麗様。お体を大事になさってくださいませ。陛下の子を産む大事なお体ですからね」

南明の何気ない言葉に鈴麗様の顔色が悪くなった。

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