表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さいつよスライムもどき  作者: 根岸 葱
スライムもどきは世界を越える
19/73

人の生における詰み

「痛い──」

 自分がだんだんと崩れていく恐怖を感じたことのある人間がこの世に何人居るだろうか?


 ユニアの体は、コンクリートのようにヒビ割れ、その破片を絶え間なく撒き散らしていた。


 一度に気が狂いそうなほどの痛みが押し寄せるいつもの死とは違って、拷問のようなじっくり痛めつける感じ。しかもそれは終わる事が無い。


 なんだ、これは? 何らかの状態異常ならさっきspで取得した《回復魔法》を使えば治るはずだが、いくらやっても反応が無い。いくら才能が無くても、発動さえしてしまえば桁外れの魔法力で押し切ってしまえそうなものだが。


 ステータスを見れば答えがあるかもしれないと思い立ち、ステータスを開く。



 ユニア 15歳 男 Lv17 (破壊)


 体力 6711/6711

 魔力 7759/7759

 攻撃 9199

 魔法 8737

 防御 9366

 魔防 7853

 速さ 6256


 sp:184


 《最低保証.ーーー》《鑑定.C》《死への恐怖.C》《水魔法.E-》《光魔法.E-》《聖属性.E-》《剣術.E-》《盾術.E-》《体術.E-》《幸運.E-》《攻撃強化.E-》《魔法強化.E-》《防御強化.E-》《魔防強化.E-》《速さ強化.E-》《火魔法.E-》《風魔法.E-》《土魔法.E-》《雷魔法.E-》...



 スキルを片っ端から取りまくったので凄く強そうに見える。


 そんな事はどうでもいい。重要なのは右上の(破壊)だ。ユニアは『厄災』の持っていたスキルの1つ、《破壊属性》を思い出す。あれの効果なのは間違い無いだろう。


(そう、か。これがある限り破壊され続けるって事か...?)


 だとすれば、それはユニアに刺さりすぎる。ステータスが固定されたユニアにとって外傷は数秒すれば元通りだが、ステータスの範疇外である状態異常にはめっぽう弱い。そこも《回復魔法》内の状態異常回復でカバーできるはずなのにできないと来た。やってくれたものだ。


 なにか解決法はないものか。痛みで朦朧とする頭を必死に働かせ、ユニアはそれだけを考え続けた。







「これもダメ、」

 《聖属性》を自分に付与し、上書きできないか試す。結果は惨敗。どうやらスキルランクが高い方が優先されるらしく、《聖属性.E-》は発動さえしてくれない。適当に出した《水魔法》には付与できたので、おそらくそういう事だろう。他の属性系は才能が無いと取得すらできないらしく、持ってないので試せない。


 その間もジクジクとした痛みはユニアを侵食し続けた。連続的な痛みに体の他の部分も変調をきたし、ユニアは既に満身創痍だった。


 そこに、ペタペタと絶望の足音が響く。


「見逃じで、くれるほど甘ぐはない、が」


 内側から破壊されボロボロの喉でなんとか言葉を紡ぐ。


『厄災』は今度こそ1片たりとも油断せずこちらを観察している。ユニアが全力で奇襲を仕掛けようとも、スキルランクと戦闘経験の差で刺し返されるだろう。


 ビュッ、と空気を裂き、巨躯に見合わぬ速さで『厄災』が迫る。ただただ真正面から突っ込んでくるその姿勢は、奇襲をかける必要も無いという自負の表れである。


(くそ...)


 この節々が痛む体では満足に動く事もままならない。産まれたての子鹿みたいにぎこちない動きしかできない体に『厄災』がのしかかり──


 ユニアは、またも死を迎える。






 1度もらってしまえば永遠に崩壊を続ける《破壊属性》。別の属性系スキルを持っていなければ解毒は叶わず、動くことすらまともにできやしない、あまりにも初見殺し性能が高いスキル。


 ユニアは無限の再生能力があるからまだ良かったものの、並の強者程度なら既に塵の山と化していただろう。



 ユニアは『厄災』と戦闘を続けていた。


 戦闘というよりかは蹂躙か。ほぼ同等のステータスを持つ両者のぶつかり合いは、『厄災』の圧倒的優位であった。戦闘が始まってからユニアが死んだ回数は優に2ケタを超え、攻撃の無意味さを知ったユニアは既に回避行動に専念している。


 ブレスの対処方もある程度掴んだ。横に飛ぶのでは無く、前に飛ぶ。ブレスの進行方向とは真逆に動くため、余波の被弾が比較的少ないのだ。


 ブレスの予兆を感じ、前に飛...ぼうとする。恐怖に足がもつれて黒焦げになった。...理解していてもそれが為せるわけではなく、失敗して死ぬことの方が多いせいで死はひたすらに重なる。


 この状態の体術では絶対に『厄災』には勝てない。故に魔法に頼るのが最適解。《光魔法》に《聖属性》を重ね、今自分に出来る最高火力を『厄災』に向けて飛ばした。


 これを『厄災』は体を変形させ腹に穴を開けるという曲芸じみた動きで回避。ここまで大袈裟に避けるのだ、《光魔法》で『厄災』に傷がつくのは実証済みであり、これを繰り返せば勝てるかもしれない──!

 という希望は、もう一度放った光球が『厄災』の魔法で簡単に吹き散らされるのを見て(つい)えた。光球を破りながらもその勢いを少しも殺さず接近する《炎魔法》にユニアはどうする事もできず、また意味もなく死ぬ。



 地獄が、始まっていた。



Q.焼けた服ってどうなってるの? ユニア今裸?


A.いっつふぁんたじー

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ