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太陽・告白・穏やか

投稿日:7/29

 時間:55分

文字数:1279字

太陽・告白・穏やか


 ジンクスというものは誰にでもあると思う。

絶対に勝ちたい試合の前に特定の料理を食べる。

大事な試験の前日にはあえて復習をしない。

気分が落ち込んだ時に決まった音楽を聴く。

直接目標に関係することではないが、なぜかそうしようと思う。

例えば、「伝説の木の下で告白すると結ばれる」といったものもその一つだろう。

当然そんなものは眉唾物だ。

たまたまうまくいったカップルが広めた噂話。

その陰には多くの失敗者たちがいるのだろう。

人は信じたいものを信じるとはまさにこのことではないだろうか。


 「で、お前は結局どうしたいんだよ」

そう言われて、口をつぐむ。

「いろいろと理屈をこねたところで、やることは決まってるだろ」

そう言ってジュースに口をつける友人。

勿論わかっている。

結局のところ、どうあがいてもやるべきことは変わらない。

彼女を呼び出して、告白する。

ただそれだけのことにこれほどまでに悩んでいるのだ。

「しかし、いきなり呼び出すというのも…」

「いや、約束くらいいつでもできるだろ」

「何といえばいいか、こういうあらためてというのが難しいんだ!」

彼女との出会いは、思い返せば三年前。

友人であるこいつの家に遊びに行ったとき、妹として紹介された。

穏やかな性格で、いつも柔らかな笑みを浮かべているのが印象的だった。

何度か友人宅で遊んでいるうちに、少しずつ仲良くなっていき。

同じ歌手の曲が好きであることを知り。

気づけば友人宅に行く際は三人で遊ぶのが日常になっていた。

「あらためてってお前…妹と友人との恋愛相談されてる俺にまず謝れよ」

「それに関しては本当にすまないと思っている」

とはいえ、恋愛相談できるほど親しい友人と考えるとどうしてもお前になってしまうのだ。

「まぁお前ならそう言うと思ってた、ヘタレだもんな」

うるさい。本番に弱いのは重々承知している。

「と思って、実はお前がさっきトイレに行ってる間に約束取り付けといた」

「は?」

言われて机の上のスマホを見ると、30分後に待ち合わせとなっている。

「おま…ちょ…」

「時間に余裕を与えるとどうせしり込みするだろ?」

にやりと笑う友人、さすがにわかっている。

「頑張って来いよ、失敗したら思い切り笑ってやる」

「…ちくしょう!ありがとう!」


 約束の時間まであと十分。

彼が来るのを待ちながら、落ち着こうと努力する。

どうしても期待してしまうのを抑えられない。

場所がここでなければ、こうも期待はしなかったと思う。

鏡を取り出し、最終確認。

彼の好みに合わせた薄めの化粧。

お気に入りのリボンはちゃんといつもの場所に。

準備万端、あとは祈るだけ。

どうか私の考えている通りでありますように。

まぶしい太陽の下で、彼が来るのをどきどきしながら待つ。


 「やれやれ…」

あいつが出て行ってからはや数分。

ようやっと今までの苦労が結ばれることを思うと、ほっとする。

あいつは失敗を恐れていたが、こちらからすればあり得ない話だ。

「妹と友人の恋愛相談を受けてんだから、失敗するわけねぇんだよなぁ…」

明日からの二人が織りなす騒がしい日々を楽しみに、

今はただ肩の荷が下りた余韻に浸ることにする。


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