二十一話 セカンドラウンド、始めます。
どうも。
現在、真っ黒な球体オバケもとい、レベル差が13もあるフィールドボス、ハンプティダンプティに苦戦を強いられているアリスです。
なんとか敵の弱点を見つけることができて、たぶん弱点属性なのだろう魔法で連撃していましたら、なんとなんと、そろそろ魔力切れになりそうなんですよね……。
ポーションを使おうにも、使わせてくれる隙もなさそうだ。
しかも最初はあんなに余裕ぶってたのに、弱点を見つけた瞬間一気に怒りだすし……。
何なんですかね、この鬼畜仕様は。
さっきだってアレですよ?
なんか滅茶危険っぽい『はかい●うせん』出してきたし、そのせいで地面なんか蒸発しちゃってましたし……。
HPには傷一つないくせに、なんか精神力だけがガリガリ削られて、なんかもうほんと辛いです……。
ほんと、魔法って便利なんだか不便なんだか……。
さて、それはともかくとして。
(参ったな……)
俺は心の中でぼやくと、奴に対する攻撃手段を模索した。
(魔法だとMPが保たないし、かと言って近接攻撃の手段なんて豪腕スキル(3/10)くらいしかない。
これじゃ、近接戦でダメージを与えられる気がしないし、まず接近するのはなんか怖いんだよね……)
俺は、再びこちらに向けてガパリと口を開いたハンプティダンプティの射線から外れるように、縮地を使って飛び退いた。
直後、俺が元いた場所が白に近い真っ赤な光線によって蒸発していく。
まだHPの半分も削りきれてないうちから、まるで後半戦みたいな行動パターンで襲ってくるハンプティダンプティに、俺は心の底から舌打ちをした。
縮地を使うたびに、頭がガンガンと痛む。
これは早急に手を打たなければ、この頭痛とともに蒸発させられてしまうかもしれない。
俺はそう考えると、一時離脱を決意した。
『逃げるか小娘ぇ!』
縮地を駆使して、頭が痛いのを我慢しながら、俺はハンプティダンプティから逃げ回る。
魔力感知で常に背後を気にしながら、ヤツの破壊光線を回避しつつ、俺は安地を探した。
最初に頭の中に浮かんだのは、拝殿だった。
たしかあそこは床が朽ちて、地下の部屋まで道が続いていた。
「《ロック・バレット》ッ!」
俺は少量の魔力で石の礫を作成すると、ヤツの面めがけて放った。
『喧しい!』
一瞬、ヤツの手が自身の視界を覆い隠した。
俺は、それを気配探知で知覚すると、《風圧操作》を使って更に加速し、パルクールの要領で拝殿の中に飛び込んだ。
⚪⚫○●⚪⚫○●
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
俺は、酷い頭痛に顔を歪めると、少し湿り気のある硬い地面に腰を下ろした。
あれからしばらくの後。
俺は拝殿への侵入に成功し、そのままその地下へと身を滑り込ませていた。
「しっかし……レベル13も差があると、ここまでキツくなるのか……」
俺はストレージから取り出したポーションを口に運ぶと、少しずつ頭痛が和らいでいくのを自覚した。
(このままじゃ、絶対に勝てない……)
俺はポツリと心の中でつぶやくと、ウィンドウの発する光に目を瞬かせた。
(けど、アイツを倒さないと、イルマちゃんのところには戻れないし……)
ああいったタイプのフィールドボスは、プレイヤーがどこまで逃げても追いかけてくる。
つまり、俺には逃げの選択肢はない。
それに、俺が今ここで逃げ出せば、イルマやあの子供を探しに行かないとも限らない。
「……絶対に俺が仕留める!」
俺はそう決意すると、ステータス画面を開いて、強化できるスキルがないかを確認しながら、更にポーションを呷った。
(豪腕は……メインキャラの時に使ってたな。
派生はたしか、鉄拳、だったか。
豪腕のスキルModに豪脚があったっけ……。
習得条件は……うわ、豪腕レベル5かよ……)
……まぁ、どっちにしろ、素手で戦う手段は必要になる。
俺は余っていたスキルポイントを利用して豪腕のスキルレベルをMAXにして鉄拳を獲得し、スキルModの豪脚を獲得させる。
(……ん?
あれ、豪腕のスキルModにこんなのあったっけ?)
俺が、再度もう強化できるスキルがないかを確認していると、豪腕のスキルModの場所に、見慣れない項目が追加されているのを発見した。
その項目は、発勁。
習得条件は、仙術師レベルが10以上、豪腕スキルが8以上、豪脚スキルが6以上と表示されていた。
もちろん、今の状態なら俺は、そのスキルModを習得できる。
俺はそれを確認すると、そのModの習得を行った。
⚪⚫○●⚪⚫○●
アリス
称号:自然に生きる者
苦行を乗り越えた勇者
追放された者
人類の末裔
賢者
レベル 87/100
HP1000 MP210000
JOB 仙術師
レベル 312/100
STR 85 AGI 225 VIT 60 INT 8600
スキル
経験値向上 10/10 命中補正 5/5 威圧 5/5 索敵 10/10 豪腕 10/10 鉄拳 10/10 俊足 10/10 縮地 10/10 自動回復 4/10 魔力向上 25/35 火魔法 10/10 上位火魔法 5/5 究極火魔法 5/5 水魔法 10/10 上位水魔法 5/5 究極水魔法 5/5 風魔法 10/10 上位風魔法 5/5 究極風魔法 5/5 土魔法 10/10 上位土魔法 5/5 究極土魔法 5/5 光魔法 10/10 上位光魔法 5/5 闇魔法 10/10 上位闇魔法 5/5 空間魔法 10/10 治癒魔法 10/10 祓魔術 10/10 結界術 10/10 死霊術 10/10 召喚魔法 10/10 武器作成 10/10 防具作成 6/10 裁縫 10/10 薬品作成 10/10 魔力操作 6/10 魔力感知 7/10 家具作成 5/10 素材変換 10/10 鑑定 10/10
⚪⚫○●⚪⚫○●
「よし、これでもし魔力が足りなくなっても、素手で戦える……!」
だが、素手というのはちょっと痛いだろう。
俺は裁縫スキルを使ってグローブを一瞬で作成すると、武器作成スキルで、そのグローブを素材にガントレットを作成。
更に装備していた靴も武器作成スキルを行使して、攻撃用のサバトンに作り変えた。
「これでよし!」
俺はステータスを確認して魔力が全回復しているのを確認すると、気配探知と魔力感知で、ハンプティダンプティの居場所を探した。
どうやら、まだ境内にいるらしい。
場所は拝殿の周囲、手水舎の中を覗いて俺の姿を探している。
「よし、それじゃあ今から早速ぶっ放しに……ん?」
……待てよ?
そういえば、ここに来る時、気配探知と魔力感知だけで座標を割り出して、きっちりと敵に魔法を放てた……よね?
「……てことは、もしかしてここからでも魔法狙えるんじゃ?」
相手は今、俺を探し出すことに必死になっている。
鑑定スキルを使ってみても、ヤツの減ったHPはそのまま変動していない。
となれば……。
「これ、倒せるんじゃないのか?」
魔法の発動を悟られなければいいんだ。
だったら、速度重視の、貫通力の高い、しかも死角からの魔法が一番だ。
俺はゴクリと生唾を飲み込むと、目を閉じて視界を遮り、気配探知と魔力感知だけで獲物に照準を当てた。
「《ピアシングジャベリン》」
すると、次の瞬間。
魔力操作によって極限まで速度を挙げられて放たれた魔法は、球体オバケに全く感知されずにその面を直撃した。
『ぬがぁあ!?』
ハンプティダンプティの悲鳴が、拝殿の地下まで聞こえてきた。
(よっしゃ成功!!)
俺はガッツポーズを取ると、再び《ピアシングジャベリン》を放とうとして、止めた。
ハンプティダンプティの周囲に、魔力障壁が展開されている。
「ちっ」
俺は舌打ちをすると、何かアレの対策はないかとスキル一覧を物色した。
すると、先程取得した発勁の説明欄に、こんな文句が書かれていた。
それ曰く、『防御系のスキル、及び魔法を無視してダメージを与える』らしい。
「これだ!」
しかし、発動方法は肉弾戦による近接攻撃のみ。
魔法による付加は不可能とある。
くっそ……。
せっかくスナイパーみたいに攻撃し続けられると思ったのに……。
俺は肩をすくめると、もう一瓶ポーションを呷ってから、拝殿を後にした。




