8 自己紹介
自己紹介をしようとキルファさんは言った。
そうだ、隣に座っているこの人に挨拶すらしていない気がする。
っていうか、この状態で自己紹介するのは少し恥ずかしい。
新学期みたいだ。
「じゃあ、先に軽く説明しておきますね。この人はオリキくん。君達と同じ地球の人間だ。で、こちらの二人が色々あってアルスタットに来てしまったツルギさんとミハラさん。じゃあ、ちょっと準備をするからその間に交流を深めててください」
急に投げ出された感がするけれど、キルファさんは黒板に文字を書いたり、部屋の箱を漁ったりしている。
今はとりあえず、彼と話をするしかないようだ。
あー、でも、こういうの苦手だなぁ。
何から話したらいいんだろう。
でも、名前は言っておかないといけないよね。
「えーっと、私は鶴木陽菜です。よろしく、お願いします……」
「鶴木さん?あぁ、君がそうだったんだ」
なにやら思わせぶりな言い回し。
私は至って普通の女の子だから、名前が知られてるはずないのに。
「僕は折木 勇葉。行栄中2年C組。よろしくね」
「2年C組って……」
「……ボクと同じクラスよ」
「ええーー!!!」
まさかこんな身近なところの人と出会うとは。
っていうか、セカイと同じクラスならそりゃあ見たことあるに決まってる。
良く考えたら、折木勇葉、聞いたことある。
うちの学年1のイケメンって話題になってた気がする。
皆に優しくて、リーダーシップがあって、勉強も出来てスポーツ万能とか。
どんな超常人物だよって、言ってたのを思い出した。
それが、この人だったとは……。
「……もしかして、こんな有名人知らなかったの?」
「……生憎と、私は緋色君しか目に入ってないからね」
小声でセカイとそんな会話をする。
セカイをミハって呼ぶくらいだから、二人は仲が良いんだろうな。
だとすれば、彼が私の名前を知っていてもおかしくはない。
あれ、でも緋色君と折木君は何か接点があるんだろうか。
会話をしそうな雰囲気は全くないけど。
「よし、そろそろ話をしても大丈夫でしょうか?」
「あ、はい。私は大丈夫、ですけど……」
他の人はどうだろう。なんとなく気まずい。
「うーんと……とりあえず話をしますね」
最初の説明は私達のことだった。
これは多分折木君に対する物だと思う。
私達が転位ゲートを使ってしまって、エネルギーが足りなくなった。
だからそれを補給しなくちゃいけない。
そんな話。
で、大事なのがその後。
転位ゲートにエネルギーを補給する方法について。
そこで私達は魔法に関する話を教えられた。
そして、魔法の使い方についても。