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全ての終りの魔法の世界  作者: 碧夜 蒼
5/25

5 いざ、外へ

「え?私達帰れないの?」

「ええ、少なくとも転位の魔力が溜まるまでは一月かかりますので……」

「嘘でしょ……」


緋色君とキルファさんにこの国の事を聞いて、それでもやっぱりどこか現実味の無い話だなと思っていた。

もちろん、こっちに来れるんだからすぐに帰れるんだとも。

でも、実際はそんなに甘くは無かった。

私達が初めに倒れていた場所、転位ゲート。

そこに魔力が溜まらないと帰れないらしい。


「ええー、どうしよう……」

「いいじゃない。折角だから楽しみましょうよ、魔法の世界!」

「学校とか、あるじゃん」

「良く聞くでしょ、異世界とは時間の流れが違ったりするの。定番よ?ね、ヒイロ君?」

「……残念だけど、時間の流れは向こうもこっちも同じ……」


一瞬セカイの言葉で喜んだのが馬鹿みたいだ。

そんな都合のいいことあるはずがない。

どうしよう。1ヶ月も学校を休んだら心配される。

っていうか、お母さんに怒られる!

なんとかしないと……。


「な、なんとか……なりませんかね」

「方法が無い、訳ではありませんが……あまりお勧めはしませんね」

「そ、それでも!方法だけでも、教えてくれませんか……」

「キルファさん、僕からもお願いします……。"魔戦"もありますし、あまり……この世界に長居させたくない……」

「そうでしたね。まぁ、ヒイロ殿も居るなら、大丈夫でしょう……」


またまた聞きなれない言葉が出てきたぞ。

"魔戦"とは、一体なんだろうか……。

でも、ひとまず帰る方法があることは安心だ。

キルファさんの話し方からすると、なんだか危険そうだけど。



私達はキルファさんに詳しい話を聞くために、研究所と呼ばれる場所を出て、街へ行くことになった。

研究所を出ると、岩壁の道が長く続いていた。

まるで万里の長城だ。

周囲はどこを見渡しても草原が続いているだけ。

街なんか見る影もない。

長い道を歩いて、先頭の緋色君は立ち止まりしゃがみこんだ。

靴紐でも解けたのかな、なんて思っていたけれど、何かを呟いているように聞こえた。



後ろから軽く覗いてみると、小さな音と共に地面に四角い穴が出来ていた。

「梯子があるから、気をつけて登って。決してはぐれないように」

そう言って、緋色君は穴に降りていった。

地面にあるのに昇ってって、どういうことなんだろう。

私は不安に駆られながら続いて穴に降りる。



しっかりと梯子を踏みしめ、両手で掴む。

光は無いのに、不思議とそこに居る人達は見えていた。

一段一段降りていく。

ゆっくりと、ゆっくりと。



そして、気がつくと私は梯子を登っていた。

いつ登ったのかはわからないけれど、確実に私は上に向かっていた。

前に居るのは緋色君で間違いない。

じゃあ、きっと合ってるはずなんだけど……。

とりあえず早く着いて。私は強くそう願った。



しばらく経って、上から光が射しこんできた。

梯子を登り切ったみたいだ。

そこは地球儀の部屋程ではないけれど、それと同じくらい埃を被っている部屋だった。


「着いたの……?」

「うん、着いたよ」


私の後ろから、セカイとキルファさんも出てくる。

キルファさんはしゃがみこんで何かを唱えているみたいだ。

きっと、あの道を出現させる魔法か何かなのだろう。


「あーもう!訳わかんない!何なのあれ!!」

「本当にねー、私も疲れちゃったよ」

「二人とも」


緋色君が私達を窓まで手招きする。

そこから外を見ると、さっきとは全く違う光景が広がっていた。

中世のヨーロッパのような街並み。

炎や水が宙に浮いている。

見たことも無い動物が空を飛んでいる。

思わず鳥肌が立ってしまう。


「ふふ、初めて見る方はそういう反応でしょうね」

「すごいです、本当に……」

「ええ、びっくりしちゃったわ……」

「改めて、ようこそ。アルスタットへ。そして、キュエリス王国の首都キュエリスへ」


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