3 とりあえず一安心
扉からやってきた青髪ローブの男性は問答無用で私達を捕らえた。
釈明をしようにも、話は後でゆっくり聞くとしか言わない。
冤罪で警察に捕まった人もきっとこんな気持ちなんだろうな。
あの空間から一歩足を踏み出すと、そこはまるで豪華な王宮の廊下のようだった。
あっちからこっちは真っ暗で何も見えなかったのに、こんなにはっきりとした世界が広がっているとは。
振り返ってみると、この廊下からはあの場所がはっきりと見える。
いくらなんでも、頭がパンクしそうだ。
しばらく歩いていると、彼はこちらを振り返らずに話しかけてきた。
「それで、貴方達はなぜあの場所にいたんですか?」
「え?なんでって言われても……」
「気がついたらあそこに居たのよ!理由はこっちが知りたいくらいだわ!」
こんな状況でもセカイは元気だ。
何かよくわからない力で両腕を縛られてるのに。黒い影みたいなもので掴まれてるのに。
「まぁ、いいです。とりあえず、変なことはしてなかったようですから」
「ボク達が何したっていうのよ!」
「あの部屋は、無断で立ち入ったことが罪に問われる程の場所です」
「え?」
「そ、そんなにすごい場所なの?」
「はぁ……。無駄話はここまでです。さぁ、着きました」
彼に連れられて着いたのは、大きな地球儀が中心にある研究室のようなところだった。本棚には綺麗に本が並べられているけど、埃を被っている。この部屋が使われている様子は見えてこない。
木が擦れる音がして、空気が遮断された。何が起こったのかと後ろを振り向くと、扉は見る影もなく消えていた。
そもそもそこに扉があったのか疑問に思うほど、そこはただの壁に変わっていた。
青髪ローブは地球儀の前で立ち止まり、地球儀に手をかざして何かをしている。
所々で青く光ったり赤く点滅したりしている。
セカイと二人でなんだろうねと小声で会話をしているのに目もくれず、彼は地球儀に向きっ切りだ。
時折うーんと困ったような声を出している。
このまま立ったままっていうのも、疲れてしまうのだけれど。
そろそろ座りたいなぁ、なんて思ってた頃に本棚の横の、今は一つしかない扉が開いた。
「キルファさん……?何かあったんです、か……?」
扉を開けて出てきたのは、私達が求めてやまなかったあの人。
さらさらの黒髪に、穏やかな顔つき、低すぎず高すぎない美しい声。
「緋色君……!!!」「緋色くーん!!!!」
「鶴木さんに、巳原さん……?どうしてここに……」
私達の反応を見て、青髪の彼は顔に疑問符をつけていた。
私とセカイはそんなことよりも、緋色君に会えた喜びの方が大きかったけど。
良かった。緋色君はやっぱり生きてたんだ。
とりあえず今は目一杯その喜びを噛みしめよう。