24 実戦へ
ようやくこの剣にも慣れてきた。本当のことを言うと、あんまりゲームとかしないっていうか、ゲームはするんだけど、剣ってオーソドックスすぎて使いにくいというか。私が使うキャラって大体ナックルとかドリルだし。
そんなことを考えながらも、私はセカイと一緒に一日中仮想の魔骸と戦った。戦い続けて、最終的にはキルファさんの合格を貰えた。仮想じゃない、本物の魔骸を倒しに行ってもいいって。
「お疲れ様です。この様子なら、本物の魔骸も倒せるかもしれません」
「うわー!やった!やったねセカイ!」
「もう、うるさいわね……」
「それにしても、お二人は本当に筋が良い。まるでどこかで戦闘経験でもあるような雰囲気ですね」
「まったまた、キルファさんったらー!褒めすぎですよー!」
「……えぇ。本当に……」
「それでは、今日はこれにて終了ということで。また明日。明日は比較的危険の少ない洞窟へ行ってみましょうか」
そうして今日はお開きになった。武器を持って魔骸を倒す。何とも言えない高揚感が胸の中で燻っていた。何て言うんだろう、叫び出したい気分?って何を叫んだらいいんだか。
「何立ち止まってんのよ」
道の途中で上を向いている私に向かって、セカイがぶっきらぼうに声を掛ける。
「あ、セカイお疲れー」
「はぁ、本当よ。疲れすぎてクタクタだわ」
「あはは。じゃあ今日はご飯を食べたら早く寝ないとね」
「そうね。あんたもそうした方がいいわよ」
「わかってるよ、夜更かしとかしないから大丈夫!」
「本当でしょうね……」
そのまま二人で帰って、皆でご飯を食べた。部屋に戻ってからは、さっきの会話通りすぐに眠ってしまった。本当はもうちょっと起きてるつもりだったのに。自分では気付いてなかっただけで、もしかすると私も思ってる以上に疲れていたのかもしれない。
朝になり気がつくと、私は昨日の服のままでベッドに倒れ込むような体勢でいた。とりあえず、シャワーを浴びて服を着替える。すぐに眠ってしまったからか、起きた時間が早かった。折角だし、皆が起きるまで散歩をする。早朝の町はいつもと違って、静かで眠っているようで、まるで誰もいないみたいに思えた。
宿に戻ると丁度良い時間で、みんなも起き出していた。セカイなんかは、あんたが一番なんて珍しいわね。とか言ってたけど。まぁ、そんなことは気にしない!朝御飯も食べて、今日も1日頑張ろうっと!
ということで、昨日言っていた通り。
今日は町の近くの洞窟にやって来た。どこにでもあるような普通の洞窟だ。いよいよ実践!緊張するけど、昨日まで教わったことを精一杯やり遂げよう。
「さて、皆さん準備は良いですか?」
「はーい!!」
「もちろんよ」
「万全です」
「……いつでも行ける」
「ふふ、皆さんやる気充分、といったところですね」
キルファさんは私たちを見て微笑んだ。私たちは武器を持って、キルファさんが用意してくれた服を身にまとっている。防具が着いていて、防御魔法がかかっているらしい。ちょっとした勇者見習いみたいな感じ?
ついに、洞窟へと足を踏み入れる。明かりの当たる入り口から徐々に奥へと進んでいく。次第に外の光は消えていき、洞窟の闇に包まれた。
こんな状態のまま歩いていて大丈夫なのかな。なんて思いながら先へ着いて行く。何歩か歩くと急に視界が明るくなった。さっきまでの暗闇が嘘みたいに、洞窟の壁には火が灯されている。不気味な様子は一切なく、それどころか広くて安心するくらいだ。こんなところに魔骸が出るなんて信じられない。
「舗装されてるみたい……」
「舗装って、道路じゃないんだから……」
「まぁ、概ねそう思っていただいて結構ですよ」
キルファさんは壁を触って歩きながら説明してくれた。
「この世界の多くの洞窟は、この洞窟のように整備されているんです」
「じゃあ、何でさっきまでは真っ暗で何も無かったんですか?」
「魔骸にも、色々な種類がいるんです。何も考えずに全てを壊すタイプとか、知恵の働くタイプとか。もしも、入口から整備していって、魔骸がそれを辿って街まで来てしまったら……そういったことを阻止する為に途中から整備してあるんですよ。もちろん、魔力でも入口は隠していますけどね」
「へぇー、そうなんだぁー!」
「さて、ここから先はいつ魔骸が出てもおかしくありません。皆さん気を引き締めて行きましょう」
そうして私たちはまた洞窟の奥を目指し歩き始めた。整備された洞窟は、魔骸との戦いの不安まで薄れさせていくような気がした。
こうしている今も本当に魔骸なんているのかって、半信半疑になる。
しばらく歩くと、突然寒気のようなものを感じた。気分が悪いというか、めまいがしそうな空気?
私だけがそんな状態なのかと思ってセカイを見ると、セカイはわかりやすく機嫌が悪そうな顔で眉間に皺が寄っていた。
自分だけじゃないという安心感と、何かが来るという恐怖感。
折木君が私達の前に出て、左手で止まれという合図をする。
「来るよ、気をつけて」
いくつも枝分かれした道の先。左前方からそれは現れた。私の倍以上の姿、いくつもの岩が固まってできたようななにか。
蚯蚓腫れのように青白く光る線がそれらを動かしている。
そして、それは音もなく私達に襲い掛かってきた。