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全ての終りの魔法の世界  作者: 碧夜 蒼
23/25

23 武器を手に

今日は実戦練習をするらしい。

ギルドの部屋には色々な場所があって、仮想の魔骸と戦いのシュミレーションが出来るところもあるんだそう。


魔法の世界ってちょっと中世寄りのイメージがあったんだけど、若干現代寄りというかなんというか。魔法と科学が共存してるっていうのかな。


「ではまず、魔武具を武器にしましょうか」

洞窟の入口を模した場所でキルファさんはそう言うと、身に付けているアクセサリーに手を触れた。その中心から青白い輝きが溢れてくる。キルファさんの手に光が集まって、1本の棒を形作っていく。それは、いつも見ているあの杖だった。


「とまぁ、こんな感じです。その人の戦う意思や特性によって、これらは武器へと変容します」

「これで、戦うんですね……!」

「ええ、そうです。お二人もやってみてください」

「いきなりそんなこと言われても、どうしたらいいのよ」

「簡単です。魔武具に手を触れ、ただ考えてください。それが武器になることを」


私は溜息をつくセカイと顔を見合わせて、なるようになれと目を瞑った。身に着けている魔武具を触り、心の中で強く願う。


私も力が欲しい。皆を守れる力が。


いや、実際そんなことを考えていたかはわからないけど。正直なところ自分だけの武器ってロマンの塊だし、名前とか付けちゃいたいとも思うし、とりあえず私の相棒よ出てこい!


そんなことを願っていると、魔武具が熱を帯び始め、全身の血が沸騰するような気がした。

気がつくと、魔武具は全てを焼き尽くすような赤い光を生み出して、私の手の中に集まった。

光が引いていき、私の手の中に残ったのは剣だった。

丁度私の身長の半分くらいの大きさだろうか。

片手で持つには心もとないが、両手を使う程でもない。

嬉しくて、胸が高鳴って、私はセカイの方を見た。

何そんな嬉しそうな顔してんのよ。といった表情でセカイは答える。

セカイの手には銃が握られていた。

近未来SF作品に出てくるような、四角くて大きくて、いかにもビームが出ますと言ったようなものだ。


「慣れてくれば、それが一瞬で出来るようになりますよ」

こんな風にね、とキルファさんは緋色君と折木君に視線を向ける。


二人は顔を見合わせて、苦笑いを浮かべた。

気がつくと、二人の手には武器が握られていた。

魔武具に手も触れていないのに、光も出てないのに。


「本来的には、体に触れてさえいればいいんです」


緋色君は黒と白の長さの違う剣。折木君は盾がついた槍みたいな武器。

ここに居る人達、みんなそれぞれ形が違う。

これも魔石の影響なんだろうな。


「さぁ、これで魔骸と戦える準備は整いました。今日一日ここで特訓して、魔骸退治に備えましょう」


それから私達は仮想の魔骸と戦いはじめた。

一日中、疲れ果てるまで。


剣に魔力を乗せて魔骸を切る。意外と剣が重くて、慣れるまではただ地面に叩き付けることしかできなかった。段々とコントロールできるようになってきたけど。こういうのって使用者は重さを感じない仕様になってたりしないの?


私がそんなことで苦戦している間、セカイは飄々と魔骸を的にして射撃をしていた。何の苦もないような表情で。

シューティングゲームが得意って言ってたから、そういうのも関係してるのかな。

こんなことなら、私も剣道とかやってればよかった。


動かない的に慣れたら、少し休憩して次は動く仮想の魔骸と戦う。

さっきとは違って、大きさもまばらだ。

これがまぁ、当たらない当たらない。

「うぁっ!なんでそんなに逃げるのよ!」

私の剣はただただ地面に当たるだけ。

ちらりとセカイを見ると、動く敵にどんどん当てている。

歴戦のスナイパーのようだ。心なしか迷彩柄のアーミー服を身にまとっているようにも見える。


「ねぇ、なんでそんなに当てられるの?動いてるのに」

「はぁ?普通に考えてればこれくらい当てられるわよ」

「それができないんだってばーー!!」

「もう……あんたは本当に猪突猛進の単純型よね」

「な、なに?急に悪口?」

「あのね、動いてるんだから相手の行動を予測しなくちゃいけないの。わかる?相手がいる場所に撃っても避けられるのは分かってるでしょ?」


そう言ってセカイは動く魔骸に銃を向けた。

魔力の籠った弾(魔弾とでも言うのだろうか)が魔骸に向かって放たれた。

魔骸はそれを右に避ける。


「だから、避ける先を予測して次の攻撃をするのよ」


魔骸が避けた先にすかさず次の攻撃を打ち出す。

それは魔骸の中心を打ち抜いた。

私は思わず拍手をする。


「ま、避ける時間も無いくらい速く当てればいいだけかもしれないけど…ってかなんであんたの行動は"振り下ろす"だけなのよ」

「へ?あ…そっか……」

「ふぅ……まぁいいわ」


セカイは魔骸へ向かって弾を打ち出した。それは、避ける暇もないほどのスピードでそのまま魔骸を貫いた。


「……セカイって何者?」

「なに言ってんのよ。ほら、さっさとあんたも練習しときなさい」

「うん、ありがとう。頑張ってみる!」


セカイのアドバイスを聞いて、私も魔骸と向き合った。

一撃で決められればいいんだろうけど、それは正直難しい。

避けた先を予測するんだ。何も、振り下ろすだけが使い方じゃない。

そういえば、ゲームのキャラだって3段階くらい攻撃パターンがあるもんね。

魔骸に向けて剣を振り下ろす。魔骸はそれを避ける。

その避けた先に、息つく間もなく第二撃を!

剣が魔骸に当たる感触がした。

やった、ようやく、ついに、動く魔骸に当てられた。

よーし、この調子でどんどん倒していこう!

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