2 どうするの?
まずはここから出なければ何もわからない。
とりあえず開いている方の扉の先がどうなっているのかを見ようと歩きだす。
ところで、セカイ起こさなきゃ駄目かな……。
特に目立った外傷はない。
息も普通にしてる、はず。
正直このまま置いていきたい気持ちの方が強い。
けど、ここがどこかわからない以上は一人で行動するより二人の方が……。
しょうがない。背に腹は変えられない。
私は世界に近づいて、思いっ切り叩いた。
別に日頃の憂さ晴らしとかではない。目が覚めてほしくて、仕方がなくそうしただけだ。
「んん……、ったぁ……」
彼は頭をさすりながらゆっくりと体を起きあげる。
まだ頭が働いていないのだろう。
私の方を見てはいるが、焦点があっていない。
何度か声を掛けるとようやく、ハッと意識を取り戻した。
「ちょ、ちょちょ、ちょっと!ここどこよ!」
私の服を掴んで激しく揺する。
私にもわからないんだって。
動転するのもわかるけど、少しは落ち着いてほしい。
「もしかして、死んだの……?」
と思ったら、急に冷静になった。
死んでる可能性もあるけど、それは却下。
「あーもう!私にもわかんないわよ!!」
「なっ、なによそれ!」
「とにかく!状況を整理するためにも、進むわよ」
私は強引に世界の手を取って、開いている方の扉へと進む。
セカイは何だかうだうだ言っているけど、それは気にしない。
扉の向こうは真っ暗で先も見えない。
扉を境に完全な闇一色。
「ねぇ、変じゃない?」
「な、なにが?」
「普通、この部屋がこれだけ明るかったら、扉の向こうにも光が行くはずでしょ?」
「確かに……」
セカイの言う通り、確かにおかしい。
ちょっとは先が見えてもいいはずなのに、まるで扉から先がまた違う空間みたいな。
私達は思わず後ずさりする。
二人で顔を見合わせて。
「どうする?」
「どうするったって……」
「アンタが行こうって言ったんでしょ!行きなさいよ」
「嫌だよ!わけわかんないし!怖い」
二人でそんないつもみたいな言い争いをしていると、急にセカイは黙って唇に人差し指を当てた。
扉の向こうに聞き耳を立てているような。
それに合わせて小声で話す。
「……どうしたの?」
「なにか、聞こえない?」
「え?」
「足音、みたいな……」
よく耳を澄ませてみると、小さく音が響いてきているように思えた。
いや、確実に響いてきている。
どんどん大きくなっている。つまり、近づいている。
私達は二人で身を寄せあい、迫りくる恐怖に耐えた。
足音が大きくなるにつれ、心拍数も上がっていく。
願わくば、恐ろしい化物ではありませんように。
「誰だ、そこにいるのは!」
低い声が部屋中に響いて、暗闇から宝石のついた杖を持った男が現れた。
紺碧の青い髪に、床にまで着きそうなローブ。
私は確信した。
ここは絶対に、魔法の使える異世界だ。