表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全ての終りの魔法の世界  作者: 碧夜 蒼
18/25

18 自らの魔石

それは、とても珍しいことだという。

稀に起こるらしい。


魔石の持つ力に耐えられずに、湖から抜け出せなくなるそうだ。

そうなったときは、精霊が魔石を湖に戻し、また後日魔石を取りに来させる。


私もそうなってしまったらしい。

でも、私の手の中には赤く光る魔石があった。


「貴女は紙一重というところでした。戻ってこられるギリギリの部分を彷徨っていたのです。それを、彼が引っ張り出したのです」

「・・・・・・そうだったんだ。ありがとうセカイ」

「しっかりしなさいよ。あんたが魔石を手に入れられなかったら、意味ないじゃない」

「うわぁ、そうだよね・・・・・・」

「さて・・・・・・」


精霊さんは私の前から移動して、今度はセカイの前に立った。

セカイの至近距離まで近付いて、顔をペタペタと触っている。

精霊の手というのは一体どんな感触なんだろう。

彼女は不思議そうにセカイを見ている。


「貴方は・・・・・・?」

「なぁに?ここまで来て、ボクの魔石は無いとか言うつもり?」

「いえ、魔力のある人間ならば、必ず魔石は生まれます」

「・・・・・・なら、大丈夫じゃないの」

「・・・・・・ええ。それでは貴方も湖へ」


セカイは湖の中へ足を入れた。

腰の辺りまでが湖に埋まり、そのまま奥まで歩いていく。

やがてその姿は暗闇に紛れて見えなくなった。


「大丈夫かな・・・・・・」

「彼なら平気でしょう。すぐに帰ってきます」

「そうですか・・・・・・ところで、握手してもらってもいいですか?」


精霊さんは常に冷静な面持ちだったが、わかりやすく疑問を浮かべた。

キルファさんはぎょっとしている。


「な、何を言い出すんですか、ツルギさん」

「キルファさんは知りたくないですか?どんな感じか気になりませんか?」

「いや、しかしですね・・・・・・」

「ふふっ、良いですよ。貴女のような方は初めてです」


精霊さんは右手を前に出した。


「ありがとうございます!」


私は大喜びで精霊さんの右手を握り返す。

清涼感溢れる見た目だけど、そこまで冷たくはなかった。

触れているのに、掴んでいるのに、その感覚は全く無い。

空気よりは硬く、水よりも柔らかい。

そんな何かを握っている。


「だ、大丈夫なのですか・・・・・・?」

「思ってたより、何とも言えない感触です。ありがとうございました」

「いえ、こちらこそ。いずれまた、貴女と握手を交わしたいものです」

「そんなの、いくらでも!」



私達がそんなことをしている間に、セカイは帰ってきた。

手には深い緑色の石が握られていた。


「あんた、何してんの?」

「ちょっと触らせてもらってただけ!それより、綺麗な石だね!」

「あぁ、これね。あんたのは?・・・・・・あぁ、暑苦しい色してるわね」

「赤は情熱の色だよ!」

「どうでもいいわよ・・・・・・」


私達は無事に石を手に入れた。

湖から離れ、元来た場所へ戻る。


「それでは、私の役目はこれにて」

「ありがとうございました!」

「いえ。・・・・・・魔石は貴女方の運命を切り開くものです。どうか、お気をつけて」



精霊さんがそう言った途端、私の意識は途切れた。

気がついたときには、あの洞穴へ繋がる部屋に立っていた。

まるで夢のような時間。

でも、私の手の中には確かに、赤く燃える石がある。

運命を切り開く魔法の石が。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ