17 魔力の湖
それからどれくらい経ったんだろう。
青白い光を感じなくなって、ゆっくりと目を開ける。
「もう大丈夫ですよ」
キルファさんは手を離してそう言った。
辺り一面が岩になっていた。
洞窟のようだ。
薄暗いけど、汚いわけじゃない。
宝石が散らばっているような、神秘的な場所。
キルファさんが歩き出すのに着いていく。
所々に埋まっている光る石は、まるで行き先を示すように増えていった。
洞窟の奥に人影が見えた。
こんなところで人に会うなんて思っても見なかったので、少し驚いてしまう。
「……お待ちしていました」
「監督者キルファ・アースティス。ここに、未開者を連れて参りました」
「案内いたします。こちらへどうぞ」
人の形をしてはいるけれど、その姿は人では無かった。
それは、地面から湧き出る水のように透き通っている。
まるで、スライムのように形状を記憶しているようにも見える。
キルファさんが小声でこの洞窟の精霊だということを教えてくれた。
彼女の後をついて行く。
彼女は歩いているというより、地面ごと動いているようなイメージだ。
どんどん奥へと進んでいく。
とても狭い道を抜けると、開けた場所に出た。
そこは、まるで星が浮かんでいるような湖だった。
小さな輝きがいくつも浮かんでいる。
その中で石が蕾のように重なっているのがわかる。
「ここは魔力の湖。あなた方の運命を切り開く道。まずは貴女です。ツルギ ヒナ」
「は、はい!」
彼女に名前を呼ばれて、なぜか緊張感が体中を走り抜けた。
まるで、私の中身を見られているようなそんな気分。
「さぁ、湖に足を踏み入れなさい。そうすれば導かれます」
彼女は頷き右手を湖に向けた。
私はそれに惹かれるように湖へと一歩踏み出した。
瞬間、周囲の空間が歪んだ。
辺り一面が真っ暗の闇に染まる。
どこへ向かえばいいのかわからない。
そもそも、私はどこに向かっていたんだろうか。
でも、足は自然とある方向へ歩き続けている。
私の意志とは関係なく。
そうして気がついたときにそれは目の前にあった。
先程湖の中に沢山あった、石の蕾。
その一つが急に現れた。
その石に手を触れる。
中から明るい光が漏れ、少しずつ花が開いていく。
開いた花の中央には炎のように燃える赤い色の石が置かれていた。
本当に炎を閉じ込めたような透明色の石。
私は固唾を呑み、それに手を伸ばした。
その石を握った瞬間に、全身が沸騰するような熱さを感じた。
何かが私の中を駆け巡っているような感覚。
熱い、熱い。めまいがする。世界が回る。
「……ナ、ひな……陽菜!!!」
後ろから突然セカイの声が響く。
驚いて振り返ると、セカイが心配そうな顔でこちらを見ている。
「あ、れ……セカイ?」
「はぁー、もう。危なっかしいんだから……」
「どういうこと?」
「ツルギ ヒナ。あなたは自らの魔石に試されていたのです」
精霊はゆっくりと私の前まで来て、説明をしてくれた。