15 私が決めたこと
「おはよう!」
「おはよう」
「おはよう……」
朝になり、ロビーへ行く。
もうすでに皆は揃っていた。
「すっきりした顔してるじゃない」
「セカイのおかげ。昨日はありがと!」
「お礼なんて別にいいわ」
私とセカイとは違い、緋色君と折木君は不安そうな顔をしている。
今日は魔武具をもらう日だから。
でも、昨日きちんと考えた。
それをしっかり伝えよう。
「緋色君、折木君、話があります!」
「……うん」
「聞くよ」
「昨日二人から話を聞いて、魔骸っていうのが危険なものだってわかった。二人が私達を心配してくれる気持ちも」
「それじゃあ……」
「でも!!だからって、黙って見てるなんてできない!帰るために、魔石を集めるために、魔骸を倒さなくちゃいけないなら、私も戦う!」
「……傷つく、かもしれない」
「大丈夫!私が皆を守る!!」
「うん……?」
「ふっ……あっははははは」
私が二人に戦う意思を告げたところ、折木君は大声で笑いだした。
変なことは言ってないつもりなんだけど……。
「そこまで言われちゃしょうがないよな」
「……話が少し、ずれてる気がするけど」
「確かに……くくっ、守るか、それはこっちの台詞なのに……はは」
ひとしきり笑い終わった折木君は、緋色君と目を合わせて頷き合った。
なんとなくタイプの違う二人だから、仲が悪いのかと思っていた。
でも、そんなことは無いみたい。
「……僕も君を守る。無事に地球に帰れるようにする」
「俺も。絶対に無事に帰す」
「二人とも……!!」
「ちょっと、それボクも入ってるんでしょうね?」
「ミハは俺達のなんかいなくても無事だろ?」
「ちょっと!なに言ってんのよ、そんな訳ないでしょ!」
この4人になって、初めてかもしれない。
こんなに笑い合えているの。
皆でなら、絶対に無事で帰れる。
そんな気がした。
「それじゃあ、行こうか……」
「うん!」
私達は研究所を出て、キルファさんのところへ向かった。
キルファさんは昨日どこに泊まったんだろう。
緋色君と折木君について歩き続ける。
街の雰囲気は少しづつ厳かなものへ変わっていた。
いつの間にか城の近くまで来ていたようだ。
私がお城に見惚れていると、セカイに背中を押された。
セカイは顎で前に進めと言った。
緋色君達はなんの躊躇もなくお城の敷地内へ入って行った。
城門を通り、中庭を通り、城の中へ。
門番の人は敬礼をしている。
門番が形だけなのか、緋色君がすごいのか。
私は怯えながら二人の後についていった。
お城の中は、想像通りというかなんというか。
まるでアニメや漫画に出てくるお城そのものだった。
広い空間に大きなシャンデリア。
二階の中央に向かって横から伸びる階段。
こういうところで舞踏会なんかが開かれるんだろうなと思う。
扉の近くに執事のような老紳士がいて、緋色君はその人に話しかけている。
彼はご案内します。と言って歩き出した。
二階へ上がり、中央の扉を開け、進んで行く。
まるで迷路みたいになっている。
一人だと絶対に迷ってしまうだろう。
そうしてしばらく歩いて、老紳士は扉の前で止まった。
ごゆっくりどうぞ。と言って何処かへ消えていく。
ああいうのを仕事人と言うのだろうか。
緋色君は扉をノックして中に入る。
私達もそれに続く。
キルファさんはソファーで本を顔に乗せて眠っていた。