13 あともう一人
私が黙って考え込んでいると、完成した料理がテーブルに運び込まれた。
今はとりあえず食べようか。
そう言ってご飯に手を付ける。
「あら、美味しいわね……。ほら、あんたも食べてみなさいよ」
「うん……」
「美味しいでしょー?」
「……うん!!……ん?」
聞きなれない声が隣から自然に聞こえて来た。
目をやるとお姉さんが頬杖をついて笑顔私達を見ていた。
目が飛び出そうになる。
さっきまで厨房にいたはずなのに、いつの間に。
「いやー、びっくりしたよ!ヒイロがお友達連れてくるなんて!!」
おっと、馴れ馴れしいぞ。
大分距離が詰まっているぞ。
おかしいな、さっきまでそんな様子は無かったんだけどな。
「アロアさん、何してるの……?」
「なにってー、晩御飯食べに来たに決まってんじゃん!」
彼女は颯爽と立ち上がり、私の横の空いていた椅子に座る。
鼻歌交じりにメニューを見ている。
「よし、決めた!店員さーん!オムライス!」
「……御客様、申し訳ございませんが、そちらの料理は品切れです」
「えー!しょうがないなぁー。じゃあー」
「と、言うよりもあなたに出す品はございません」
「んぇえ?……っておねぇ!?なんで!?今日は非番じゃないの!?」
「シフトが変わったのよ。毎回毎回、無銭飲食をする妹がいつ来てもいいように」
「あっちゃー!そういうことかー!」
同じ人が二人!!
そして椅子に座っていた人は厨房に引っ張られていった。
あっけにとられて固まってしまう。
双子、だよね……?
それにしても顔が似すぎている。
そっくりすぎて訳が分からない。
「お騒がせしてごめんなさい」
「あっ、いいえ。全然。その、大丈夫です!」
「これ、良かったサービスです」
お姉さんはテーブルにプリンらしきものを置いていった。
人が増えてきたのか、二人ともせっせと働いている。
私達はプリンを頂いて、帰ることにした。
お金は緋色君が払っておいてくれた。
緋色君はこの世界のお金を持っていたようだ。
後でキルファさんに請求するとか言っていたけど、大丈夫かな。
あの謎の双子さんは、お会計のときに軽く挨拶してくれた。
「妹がごめんなさいね。私はイロル、あの子はアロア。良かったらまたきてくださいね」
二人で並んでいるところを見ると、髪色が少しだけ違うように見えた。
イロルさんの方が少しだけ濃いピンクだ。
帰り道、緋色君があのお店の話をしてくれた。
キルファさんの行きつけの店らしくて、緋色君もよく一人で行くそうだ。
特に深い関係はない。と私は解釈した。
セカイもそうだと思う。
緋色君は、いつからこの世界にいるんだろう。
と、聞きたいけど今はそんなことよりも魔法について考えなくちゃ。
ちゃんと考えないと、後悔することになりそうだし。
「後、一つだけ……」
「……?」
「キルファさんは、あの年で所長をやってるだけあって、狡猾な人だ……。使えるものはなんでも利用する。から、あんまり信用しすぎない、方がいい……」
「……そうだな」
緋色君の言葉に折木君も賛同する。
キルファさんは、どう思ってるんだろう。
私達に魔法を使わせて、やりたいことでもあるんだろうか。