11 魔武具と魔骸
泊まる場所は心配なかった。
研究所の研究室は至る所にあるらしくて、そこを貸してくれるらしい。
っていうか、キルファさんの名前を出せばこの国のどの宿も泊まれるって。
思ってたよりすごい人なのかもしれない。
侮っていたけれど。
で研究室へ行く途中、緋色君に話を聞いた。
魔武具と魔骸のこと。
魔武具っていうのは、この世界の人は皆持っているそうだ。赤ん坊から老人まで。
いわく、この世界に人が生まれると魔力の湖ってところに魔石の花が咲くらしい。
それは地球の人でも例外ではない。
魔力を持つ人間が現れたとき、湖には魔石の花が咲く。
つまり、今現在私達の魔石が誕生している。
魔石を魔武具に変えるのにも手順が必要らしい。
この世界の多くの人は15,6歳で魔石を魔武具に変えるそうだ。
その間魔石を肌身離さず持ち続けることによって魔石は成長していく。
というような説明を聞いたところで丁度本日の宿泊先についた。
魔骸については、晩御飯を食べながらにしよう。ということになった。
一旦部屋で休憩をして、またロビーに集まるという流れだ。
部屋に入って私はすぐにベッドに飛び込んだ。
ちょっと今日は頭を使い過ぎている。
この後もまた説明を聞くのかと思うと、ひと眠りしたい気分。
誰かが扉を叩く音がする。
っていうか、こんなことするの一人しかいないけど。
あぁ、でも起き上がる気力がないなぁ。
「ちょっと!まさか寝てるんじゃないでしょうね!?」
そんな声が入口から聞こえてくる。
勝手に開けないでよ、と言い返す力も無い。
黙って手をひらひらと動かしていると、セカイはベッドに近づいてきた。
そのままゆっくり、ベッドの脇に腰掛ける。
「ま、無理もないわね。あんた、勉強はからきしだから」
「……頭がパンクする」
「あんたに聞こうと思ってたことがあったんだけど、この状態じゃ無理ね」
「…………なにを?」
「いいわ。元気が戻ったときで。集まるときに呼びに来るから、少し寝てなさい」
「うん…………」
思考が鈍る。まどろんでいく。
セカイの言う通り、少しだけ眠ろう。
セカイの声が聞こえて目が覚める。
気分的には結構な時間眠っていたような気がするけど。
「おはよう……」
「おはよう、ほら、もう大丈夫?」
「うん、全然平気……ふぁあ……」
「あくびしてるじゃない。……まぁいいわ。ほら、行くわよ」
セカイの後について部屋を出る。
外の景色は薄暗くなっていた。
ご飯ってどこで食べるのかなぁ。
「待たせちゃったわね」
「全然大丈夫だよ。それじゃあ行こうか」
そうして4人で街に出る。
緋色君がいるとはいえ、保護者がいないのが少し不安。
ゆっくりと街中を歩いていく。
この先に定食屋みたいなお店があるらしい。
歩いていくうちに目が覚めてきた。
目の前の風景が、風が運ぶ空気が、この世界は私の居た世界ではないということを突き付ける。
一瞬、ホームシックという言葉が頭をよぎったが、頭を振り否定する。
まさか、たった1日足らずでそんなことあるわけない。
少し冷静になっただけだ。
そう、考える余裕が生まれただけ。
キルファさんが私達に魔法を使わせるメリットってなんだろう。