10 よくわかんないけど、多分大丈夫
キルファさんは持っていた杖を宙に翳し、小さく何かを唱えている。
すると、杖の先から水が溢れてくる。
それは地面に落ちることはなく、蝶のように形を変えて舞っている。
まさしく私が望んだ魔法の光景だった。
「魔道具では無理でも、魔武具ならこういう事ができるんですよ」
「……すごい、すごいです!!」
「……えぇ、本当ね。でも、魔武具はその人専用なんでしょ?」
「そうです。そこで、お二人用の魔武具をご用意させていただこうと思いまして」
「えっ!!」
キルファさんの言葉に耳を疑う。
今、私達用の魔武具を用意するって言った?
なんで?そんな簡単にできることなの?
「そんなに簡単に出来るものなの?」
私の気持ちにシンクロするようにセカイが質問する。
流石戦友。
ふと右を向くと、折木君が深刻そうな顔をしていた。
何かあったのかな、と思っていると、彼は音を立てて立ちあがった。
「……反対です!こんな、女子に魔骸退治なんて!」
「それを決めるのは、君じゃないんだな」
「でもっ!」
「……ふふっ」
「……まさか、俺を呼んだ理由って」
「……パーティー編成は4人が相場だろう?」
なぜだろう。
キルファさんの笑顔が一瞬、恐ろしいものに見えた。
そしてまた新しい単語が出てきたぞ。
後で整理しておかないと絶対忘れる。
「とにかく、魔武具は用意できます。ただ、その前に君達に話しておかなければいけないことが、まだまだあって。例えば、魔骸のことだって――」
「あーいいわよ、そんなの。どうせ聞いたって、この子は魔法を使いたいって言うんだから」
「……セカイ」
「ミハラさんはそれでいいのかい?」
「しょうがないでしょ、付き合ってあげるわよ」
「せかいー!!!」
「あーもう、うっとおしいわね!抱き付くんじゃないわよ!!」
何か裏があるかもしれないのに、こんなにあっさりと良いよって言ってくれるなんて。
ただ純粋に嬉しい。ものすごく。
「それじゃあ、早速行きましょうか」
「……キルファさん。色々あって疲れてるだろうし、明日にしたらどうですか……?」
「む、それもそうか……」
「説明不足のところは、僕がしておきます……」
「ありがとうございます、ヒイロ殿」
ということで、質問とかは全部緋色君が引き受けてくれることになったみたい。
そして今日はお開きになったとさ。
まぁ、こういうのは焦っても仕方がないしね。
あれ、私達今日どこに泊まるんだろう。