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7.薄すぎた絆…!!

<前回までのあらすじを30文字以内で説明せよ>


 綺都「幼なじみがえらい勘違いをした……。」


 美織「ダンゴムシを踏み潰してしまった……。」



 __________________________


 入江雄市(いりえゆういち)がとんでもない誤解をしていた同時刻、神崎美織(かんざきみおり)は途方に暮れていた。可愛がっていたダンゴムシを、踏み潰してしまったのである。

 美織はただ自分の足元に転がる小さな遺体(ダンゴムシ)を見つめ続けていた。



「……いと儚き。」



 美織はそのまま黙ってダンゴムシの遺体を拾い上げて、近くの落ち葉にそっと置いた。

吹いてきた風は、冷たかった。

 美織がたそがれていると、背後から砂利の上を歩く足音が聞こえた。振り替えるとそこにはダッフルコートに身を包んだ中性的な顔立ちをした少年が立っていた。

 美織が手に持つシャベルと足下にある落ち葉を交互に見て少年は大きくため息をついた。

馬鹿みたいに大きい白い息が少年の口から煙の様にでてくる。



「貴様まさか、それで落ち葉を掃こうとしてたのか……。」




 容姿とは裏腹に中学生らしくない口調の彼は夏場のコンクリートの上で干からびたミミズの死骸を見るような目で美織を見た。



「なにか問題でも?」


「大有りだ。効率悪いに決まっているだろう。」



 そう言って少年は近くにあった竹箒を手に取り銀杏の葉を静かに掃き出した。



「いいか美織。先生はこの阿呆みたいな量の落ち葉を集めてほしいとおっしゃったんだ。なら掃くだけであろう。」


「あ、本当だ。シャベルじゃ掃けないね。」



 美織は目をぱちくりとさせ手にしていたシャベルを見る。

そんな彼女の姿を見た少年は更に呆れ、指を頭に当てた。



「教室から見ていたが、やはり来て正解だったな……。」


「そのまま手伝ってよ(つばさ)ー。」


「断る。……と言いたいところだが、五時間目まであと10分しかない。美織の進級を考えると手伝ってやらないこともない。」


「出たよツンデレ。」


「誰がツンデレだたわけ者が!!」


「(ツンギレ……。)」



広瀬翼(ひろせつばさ)。中学二年生で、美織の幼なじみである。科学部に所属している彼の趣味は自分でいろいろな変な薬を作ることである。ようするに変わり者だ。



 美織はシャベルから竹箒に持ち替え落ち葉を掃いた。



「待って滅茶苦茶掃けるんだけどwww」


「箒だから当たり前だろう全く。」


「そういえば聞いてよ翼。私親友出来たよ。」



 動いていた翼の腕がピタリと止まった。



「親友?社交的な貴様が今頃親友ができただと?」


「その相手が聞いて驚け!学年1女にモテる上杉綺都なのだ!」



 美織がピースサインを作って笑うと、翼は興味津々になって美織の方に真っ直ぐと顔を向けた。




「ほう、上杉綺都とな。てっきり女子生徒かと思っておったわ。でも、何故上杉なんだ?奴と貴様はクラスも違うから接点が全く無いではないか。」


「それが旧校舎の屋上でばったりあったんだよねー。」


「旧校舎の屋上……あまり人気の無いところで奴と貴様は何をするつもりだったんだ。」


「私は授業サボって昼飯食いに行って、上杉は先にいたのよ。たそがれてたんじゃね?」


「上杉綺都か……。あいつには興味がある。」



 美織の背中に悪寒が走った。



「興味?翼そっちのひとか?」



 美織の発言に対し翼は思い切り竹箒で彼女の頭を叩いた。

 女子とは思えない野太い悲鳴を上げた美織は頭を押さえて一歩後ずさる。


 


「馬鹿め違うわ。奴は容姿端麗で成績も良く、おまけに他人からの人望も厚い。だからこそ完璧な奴の心理を知りたいのだ。」


「心理学嫌いだわ。」


「いや、()()を飲ませたら奴の、欠点の無いあの性格はどう変わるのだろうかと気になってな……。」


「あー……()()かー。」


「貴様も気にならないか?()()を奴に飲ませたらどんな感じになるか……。」



 にやりと口角を上げた翼に対し美織は気だるそうに頭をガシガシと掻いて苦笑いをした。



「それで、私が上杉を連れてこいってことか。」


「まあ、そうなるだろうな。」


「ダメダメ。親友にそんなことは出来ないよ。」



 美織は頭の上で大きな×印を作る。

 翼は眉間にしわを寄せて「言うと思うた」と言う。



「こうみえて美織ちゃんは仁義が堅いんでね。」


「ならば、取引をしよう。」


「取引?へっ、またプッチンプリンなんかの手に引っかかんねーよ。上杉と私の絆を……ナメるな!!!」




 ビシッ!と翼を指差して美織は叫ぶ。

 そんな美織とは対称的に冷静なたたずまいの翼は人差し指を静かに立てて口を開いた。



「こないだ貴様が遊びに来たとき兄上の学校の教材全部水浸しにしてしまって二人で一緒に冷蔵庫の裏に隠しただろう?……あれ全部俺のせいにしといてやる。」










「え、マジで?」


「マジだ。」


「マジで?え、マジで!?」


「マジマジ。」


「……。」


「……。」


「……よっしゃ。のった。」



 二人はガッツポーズを作って、手を強く握った。



「時間は明日の放課後17時。教室に二人で居残ること。俺が窓から入って奇襲をしかけるからちゃんと加勢しろよ。」


「りょーかい!あんなモヤシ一発よ!!」


「流石だ。貴様の身体能力をあてにしているぞ。」


「へへっ、面白くなって来やがったぜ!」



 _________________________


<同時刻教室にて>


「違う雄市誤解だ!!神崎とはそんな関係じゃなくて!!こう、なんかこう…友達!友達なんだよ親友、なんだよ!!」


「大丈夫だよアヤト…。何も、知らないから俺。」


「なんだよその目っ!ホントだって信じてってええ!!!」


「帰ったら赤飯炊いてくるな。一緒に食べよう。」



「ゆうううううううううううううううううういちいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいーーーーーーーーー!!!!!」

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