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4.少年の決意

<前回までのあらすじを30文字以内で説明せよ>


 綺都「初めて女子に胸揉まれた。」


 美織「階段登ってる途中に胸揉んだら落とされた」



 __________________________


「アヤトなんだか最近面白そうだね。」


 夕食の途中、味噌汁をすすっていた綺都に対して彼の実姉、上杉花透(うえすぎかすか)は自分の事のように嬉しそうに綺都に話しかけた。

 その言葉に対して弟の綺都は苦笑いをした。


「た、楽しそうに見える?」


「うん。先週は死んだ魚の目になってたよ。」


 そう、自分は先週まで精神が死んでいて自殺をしようとしていた。

 屋上から飛び降りようとした瞬間呼び止めたのが隣のクラスの女子生徒、神崎美織だった。

彼女がもしあの場にいなかったらきっと今頃自分はもう他界していたのだろう。



 あの事件から丁度2週間が経った。

 クラスの皆からは「上杉そんなキャラだったっけ?」とよく言われるようになり、先生からは「最近楽しそうだな」と言われるようになった。

 楽しい、というより疲れるの方が大きい。

あの自由気ままな彼女とコミュニケーションをとるのはかなりの体力を消費してしまう。

 神崎美織と友達になってから彼女と昼御飯を食べるようになったし、帰りも二人とも帰宅部なので一緒に登下校するようになった。


 自分の日常の中に、『神崎美織』という人間が存在するようになった。


 別に楽しいというわけではないが、以前よりも遥かに退屈ではなくなった。むしろ忙しくなった。

 あれほど少なかった口数も彼女によってかなり多くなったし、大きな声や叫び声も頻繁にだすようになった。

 ある意味神崎美織によって自分の日常が大きく変わったのかもしれない。

 確かに前までは自分は常に真顔だったし、口数も少なかった。

 そう考えるとこの成長(?)は保護者的存在であるカスカにとってはかなり嬉しい事なのかもしれない。



「あの、姉さん。」



 綺都がカスカに話しかけると彼女は箸を止めて綺都の顔を見た。

 どうしたの?と訴えるように首を傾げて見ている。



「学校で…その……親友、が出来た。」



 そう恥ずかしながらに言うとカスカは双眼を大きく見開いた。



「親友できたの!?」


「ん、まあ……。」


「そっか!だからそんなに楽しそうだったんだね!!どんな人?何部?同じクラス?」



 カスカの質問攻めに綺都は怯み、ごほんと咳を一つつくと一つ一つ質問に答えていった。



「隣のクラスの人で、同じ帰宅部だよ。性格は結構…いや、かなりの馬鹿で数学のテストが二点だったよ。でも、根は誠実で皆から好かれてるんだ。(って先生は言ってる)」


「そっかそっか。良かった。アヤトが学校楽しんでくれて。

 父さんと母さんも喜ぶよ……。」



 そう言ってカスカはちらっと仏壇を見る。

 仏壇には、まだ三十路になったばかりの二人の両親の写真が小さく大切そうに置いてある。

 両親は、もうこの世にはいない。

 綺都は座っているダイニングテーブルに目を向ける。

 二人だけでは大きすぎるテーブル。

 あれほど自分を可愛がっていた彼らはもういない。

 唯一の家族である姉の花透しか綺都には残っていない。

 今になって神崎美織に心のなかで感謝した。

 もしも自分が死んでいたら、姉は、次こそ独りぼっちになってしまっていたのだから。

 姉を遺して死ぬというのは、綺都にとってあり得ないことであった。



 上杉花透(うえすぎかすか)

 綺都の唯一の家族であり、最も信頼出来る人であり、失いたくない存在である。

悲しそうに仏壇に飾ってある両親の写真を見ていた彼女の横顔を見て、綺都はさみしさにひしひしと迫られていた。

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