第80話
80話達成です。
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アルナは展開させた、総数500本以上の超級魔法【全属性矢】をカオスブラッディドラゴン向けて放つ。あまりの数に困惑したカオスブラッディドラゴンは慌てて魔力障壁を10枚ほど展開するが1枚の障壁が20本毎に破壊されていき、全ての矢を魔力障壁で受けきる事は出来なかった。
黒く艶やかな龍鱗は矢が通ったように傷つき、はたまた龍鱗に突き刺さったままになっている。
「あの龍の鱗を貫いているわ……」
「ヤバすぎだろ……」
「っていうか、超級魔法を無詠唱とか信じらんない……」
それぞれが今、目の前で巻き起こっている事に対して独り言を呟いている。テレーゼはあくまで冷静を装っているが、内心では冷静さを欠いている。
(超級魔法の無詠唱に、改変による威力の強化、それに多重展開とか……あり得ない……)
「ギャアアアアッ!」
カオスブラッディドラゴンは怒りの咆哮を上げると自分の身体に沿うように地に20個の黒い魔法陣を展開させる。何をするつもりなのか見当も付かない冒険者とテレーゼは目の前の魔法陣から新たな魔法を放つのかと心配そうにアルナを見ている。
展開された魔法陣が回転し、その魔法陣から光があふれ出る。一瞬だけ光が強まったかと思うとそこには20体のブラッディドラゴンが姿を現していた。
「「「「「召喚魔法っ!?」」」」」
7人の冒険者とテレーゼは目の前の出来事に目を剥き、驚きに身体を震わせた。アルナはほう、と嘆息をすると悪い笑みを浮かべるとカオスブラッディドラゴンと同じように黒い魔法陣を展開させる。その数はカオスブラッディドラゴンには劣るが3個。
なんだと……、と言いたそうな面食らった表情をしている。それはテレーゼ達も同様だった。
「【召喚】黒龍ニーズヘッグ、黒不死鳥フェニス、雷獣キルライト」
刹那、この広大な空間を眩い閃光が包み込む。
閃光が収まるとアルナの傍には黒い龍に、黒い不死鳥、それに白い狼が顕現していた。冒険者の2人は神殿や図書館にでも通っていたのだろうか、3体を見てわなわなと震えている。それに気がついた1人の男冒険者が話しかける。
「一体どうしたんだ?」
「あれって……もしかして……」
「ええ、私も貴方と同じ意見よ」
2人は目を見合わせると額に汗まで掻き出した。なかなか質問に答えてくれない2人にしびれを切らしたのか呆れたように男は言う。
「だから一体どうしたんだって」
「アルナ様の隣にいる3体の召喚獣は精霊神界にいるとされる神獣様よ」
「龍の頂点、黒龍ニーズヘッグ様、鳳を束ねる、黒不死鳥フェニス様、狼を従える、雷獣キルライト様」
「し、神獣っ!?」
驚きはそれだけにつきなかった。
「久しぶり、みんな」
「やっと私の能力を使ってくれたんですね」
「私の黒火も使ってくださいね?」
「あたしの雷も使ってね~」
多数のドラゴンを前にしても、いつも通りの軽い会話をする1人と3体。なんとなく張り合ってしまって、冒険者の存在を忘れていたアルナは少々焦っているが目の前の敵を倒すことに専念する。
「ニーズヘッグは彼らを守っていてくれ」
「承知しました」
「フェニスは俺の援護」
「了解しました」
「キルライトは先手必勝、ドラゴンの羽目掛けて雷を落としてくれ」
「おっけーだよ」
「じゃあよろしくっ!」
アルナは地を蹴ると一瞬でカオスブラッディドラゴンの足下まで駆け寄る。しかしアルナの突然の攻撃を予測したかのようにカオスブラッディドラゴンは足下に魔法を待機していた。
「グラララアアアアアっ!」
カオスブラッディドラゴンの咆哮を皮切りに古代魔法[重力増加]に似た魔法がアルナに、そして召喚されたブラッディドラゴンがニーズヘッグ達に襲いかかる。
アルナはまさかカオスブラッディドラゴンが既に魔法を待機させているとは思わず、もろに食らってしまう。だが、神の使徒のステータスによりあまりダメージは受けていない。仰向けに倒され、どうやって抜け出そうかなと模索しているとフェニスがカオスブラッディドラゴンに火属性最上級魔法【火炎放射】を放つ。
アルナに攻撃をもろに食らわせた事に意識をさかれていたカオスブラッディドラゴンはいきなりの攻撃に対処出来ずにダメージを負う。瞬間、魔法の効力が弱まった隙にアルナは魔法の力場から抜け出す。傍まで羽ばたいてきたフェニス。
「フェニス、サンキュ」
「いえ、それより少し慢心してましたね?」
「…はい、すいませんでした」
「自覚しているなら大丈夫です。それよりキルライトの方も準備できたみたいですよ」
「おっけ、キルライト……全焼させないように雷を落としてくれ~」
「わかった~」
刹那、地下迷宮内に、そしてカオスブラッディドラゴンたちの頭上に雷雲が発生した。そして青白い光がドラゴンの翼に突き刺さると同時に盛大な轟音と衝撃が地下迷宮を揺らした。
ドラゴンが墜落した音と衝撃である。
アルナは魔力から魔刀ミナカゲを生成すると、再び[身体強化]を使用し、器用に墜落したブラッディドラゴンたちの隙間を縫いながら走り抜ける。通り抜けざまに翼を一閃し、飛行能力を欠如させた。
その際にアルナはニーズヘッグに[精神感応]を送っておいた。
『ニーズヘッグ、彼らに[絶対防御]と[魔法障壁]を[付与]して、堕としたブラッディドラゴンたちを倒すように誘導しろ』
『了解しました』
アルナはすぐに戦線復帰する。ちらっとニーズヘッグの方を向くと何故か今のアルナのように龍人と呼ばれる容姿をした黒髪の女性が冒険者達に話しかけている、ニーズヘッグの姿はない。どうやら彼女がニーズヘッグのようだ。
最初は呆気にとられていた冒険者達だがニーズヘッグの話を聞いてすぐに臨戦態勢に移る。その間にニーズヘッグが[絶対防御]と[魔法障壁]を7人の冒険者とテレーゼに[付与]し終えると、既に彼らから遠ざけるようにアルナはカオスブラッディドラゴンを誘導し、空間の奥の方へと行った。
ニーズヘッグは自分の武器の姿と同じ大剣を魔力から創り出すと、彼らの補助をする。いくらAランク冒険者といえど、Sランクモンスターにトドメを刺すのは難しいと判断したのだろう。
ブラッディドラゴンたちはキルライトの落雷により麻痺効果も追加され、飛行も出来ない。格好の的であり、ニーズヘッグは命を奪う寸前まで加減して剣を突き刺すと、冒険者に首をはねるように指示を出す。冒険者達は恐る恐る首に剣を突き刺し、切断系の魔法を使いどんどん倒していく。
その間にアルナはカオスブラッディドラゴンにどんどん魔刀ミナカゲによる物理攻撃を行い、消耗させる。龍人と化したアルナの体力と魔力は無尽蔵にも等しい。総力戦なら絶対にアルナに軍配が上がるだろう。
「アルナ様、こちらは終わりました」
「……おっけ、じゃあニーズヘッグ。あれのトドメを刺しちゃって」
「私がやって、いいんですか?」
「ああ、俺は少し疲れた。【気分回復】」
攻撃に夢中だったアルナは間近に迫ったニーズヘッグに声を掛けられ、我に返る。冒険者の方を見ると今まで見たこともない巨大な魔石をうっとりとした目で見つめている。
アルナはカオスブラッディドラゴンの最期をニーズヘッグに任せると、冒険者達の方へと向かっていく。
「どうやら貴様の引導を渡すのは私のようだ。安らかに眠るがいい」
龍人化ニーズヘッグは大剣を担ぎ、空高く飛び上がるとカオスブラッディドラゴンの頭から尻尾まで文字通り一刀両断した。2つに斬られた死体が黒い靄に包まれたかと思うと、死体のあった場所に例に見ない巨大な魔石が落ちていた。ニーズヘッグは魔石を拾うとアルナの方へと駆け足で行く。
――ギルドマスターの指名依頼。達成。
私用により1週間ほどお休みを頂くかもしれません。
気長にお待ち頂けると幸いです。
次回もよろしくお願いします。




