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第70話

70話達成です。

いつも読んでくださる皆さま、ありがとうございます

「だーかーらー、もうお礼はいいから」

「で、ですが……」

「ですがじゃないのっ!」


 アルナはいまだに頭を上げないアリスを見て、呆れたような声を出す。今この場にいるのはアリスのみ。さっきお礼を言ってからアレクはどこかへ行ってしまった。


「アレクさんはどこへ行ったんですか?」

「恐らく、地下迷宮(ダンジョン)の入り口にある出張所に行ったんだと思います」

「どうして?」

地下迷宮(ダンジョン)は基本的にギルドの許可がないと入れないので出入りには各々の報告が必要なので……」

「全員分の報告をしに行ったのね」

「そういう事になりますね、それで指名依頼の報奨なんですが……」


 口ごもりながらアリスは報奨の話に移った。

 クレトリア王国の公爵家、それも王直属で王に仕える者を指名したアリスの顔色は悪い、青ざめている。アルナはどうしてか見当がついたので苦笑しながら言う。


「えっと、魔石の売却額を少しだけ上乗せするだけでいいですよ」

「……は?」

「は? って酷くないっ!?」


 アリスはアルナの言ったことが理解できていないのか、上の空でブツブツ呟いている。


「アルナ様はなんて? 上乗せ? 10倍くらいにすればいいのかな? それじゃやっぱり足りない? え、どうしよう……」


 アルナはそんなアリスの呟きが聞こえたのか、アリスの肩を両手で掴むと問答無用で揺さぶった。頭が前後左右に揺れる、アリスはようやく我に返ったのか、近くにあるアルナの顔を見て、顔を赤くして、すぐに離れた。


「もも、申し訳ありませんっ! それで……」

「上乗せ額だけど……」


 アルナの次の言葉を待つアリスは、ゴクッと喉を鳴らし、警戒している。しかしアルナの口から出た言葉は予想のどれにも当てはまらなかった。


「1~2割くらいで、それも悠馬たちだけの分でいい」

「…………え? それだけでいいんですか?」

「逆に貴方はなにを考えていたんですか?」


 アルナは首を傾げ、アリスに聞く。


「このギルドにある分だけ出せ、とか?」

「ないない」

「身体を差し出せ、とか?」

「既婚者に手を出すほど、腐ってはいない」


 毅然とした態度で話すアルナの姿を見て、アリスは自分の考えの愚かさに気が付く。アルナは完全に善意でやったにすぎない、報奨も貰わないつもりだったが、救出した人達の事を考えると貰っとくべきかと考え直して今に至る。それに悠馬たちの今の装備は完全に宝具に頼り切っているので、普通の装備を彼ら自身で揃えてもらおうと思って提案をしたのだ。


 セリカとの結婚資金はちゃんと稼ぐけどね……


「本当にいいんですか?」

「くどいですよ、俺は守るべき者たちを守っただけに過ぎない」

「分かりました、魔石の方を受け取りたいのですが……」

「じゃあ、皆をここに呼んでもいいかな?」

「いいですよ、下だと色々面倒に巻き込まれますからね」



 悠馬たち3人とセリカを2階にあるギルドマスターの部屋に連れてきた。3人にはギルドマスターが座っている椅子の反対側に座らせた。3人は緊張しているのか両手を握ったり開いたりしている。


「初めまして、アウストラリス支部冒険者ギルド、ギルドマスター、アリスと言います」

「悠馬です」

「佳奈です」

「沙織です」


 お互いの名前が分かった所でアルナはこの場が設けられた経緯を3人に教える。3人は唖然とした顔で話を聞いていた。


「――と言う訳で、魔石をアリスに渡してほしい」

「それは構わないが……魔石は何に使われるんだ?」


 悠馬はアルナに聞くが、アルナは悠馬の視線から外れるとアリスの顔を見た、アルナも知らないからである。アリスはキョトンとしていたがアルナの視線を感じると口を開いて説明を始めた。


「魔石は魔力が凝縮された石の事を指します。主な使用例は“剣”ですね」

「“剣”? もしかして魔剣っていうのは――」

「その通りです、魔剣は金属と魔石を利用して作られています。魔剣を打つには多量の魔石が必要になりますから」


 悠馬たち3人は腰についているポーチから魔石を取り出す。ガチャガチャと魔石がテーブルに打ち付けられる音が響く。その量にアリスは絶句している。


「え…………あの……貴方がたは今日登録したんですよね?」

「そうですけど……何か?」

「何かって……」


 佳奈の裏の無い言葉にアリスは呆気にとられ、眩暈がしたのか眉間に手を置き唸っている。唸っている間にアレクが戻ってきた。


「どうも~……ってどうしたんだ? アリス」

「あら、アレク。今座っている3人はAランク以上の戦力を持っているわ」

「は? え?」

「このテーブルの魔石をみて」

「ああ、ざっと100個以上あるが」

「ここの3人がやったそうよ、しかもAランクモンスター級の大きい魔石もあるし」


 アレクは魔石と3人を交互に見る、時折、は? 嘘だろ? とブツブツ呟いているのを見てアルナとセリカは苦笑する。3人はこれがどれだけ凄い事なのか理解していないのでポカンと口を開けてアレクの行動を見ている。


「しかし一気にランクを上げると他の冒険者から苦情が来るんじゃないか?」

「そうよね……だけどこんな人材は他にはいないわ」

「そうなんだよなぁ……アルナ様」


 2人で会話していたが、いきなりアレクがアルナに話しかけてくる、アルナは2人の会話を聞いていたのでアレクが言う事に気が付いていた。


「それは無理だな」

「……え! まだ何も言ってませんが…………」

「2人が言おうとしている事は、ギルドマスター権限による冒険者の常駐だろう?」

「「なっ!」」


「ここだけの内密の話にしてほしいが、3人は国王からの命により護衛をしている。それを放棄など言語道断、許可してしまったら俺までアウストラリスに常駐しなくてはならないからな。くれぐれも口外しないように」


 アルナは目を細め、威圧するように2人に向けて言う。2人はアルナの威圧に屈したのか恐る恐るといった様子で口を開いた。


「わ、分かりました」

「肝に銘じておきます」


「良かった、では換金を頼むよ」



 時間にして約30分ぐらいだろうか、ギルドマスターの部屋に職員が出入りしお金や鑑定やら色んな事をやっていた。

 結局3人の合計で、金貨500枚ほどになった。


 今頃になってしまうが、クレトリア王国の銭貨は、上から、白金貨、金貨、銀貨、銅貨、賤貨の5種がある。下から3種までが基本的に平民が使う銭貨、他の2種は裕福な商人か貴族、王族が使用している。

 悠馬たちが稼いだ金貨500枚だと、一般平民の4人家族が住める家が3軒は建てられるほどの金額である。それを聞いた3人は唖然としていた、アルナ――裕哉はバイトで稼いだことはあるが悠馬たちは武道に勤しんでおり、労働でお金を得るのが初めてだったからだ。


「じゃあ装備でも買いに行きますか」

「ああ、そうしよう……いいか? 2人とも」


「いいよ」

「勿論よ」


「では、私の方からおすすめの鍛冶師のお店の紹介状を渡しておきます。気難しい店主なんですけど」

「ありがとう、じゃあまた明日伺うから」

「よろしくお願いします」


 そう言ってアリスから渡された紹介状を受け取るとアルナとセリカ、悠馬たちはギルドマスターの部屋を出て階下へ降りる。やっぱりと言うべきかあの3人はアルナ達を待ち構えていた。


「ちょっと待ってて、すぐ戻る。これでみんなと飲んでてくれ」

「「「お待ちしております」」」


 アルナは金貨の入った袋を3人に渡すとセリカ達と一緒にギルドを出て行ってしまった。

 金貨の入った袋を渡された男は予想もしない重さに身体を傾ける。


「おもっ!」

「マジで、どんだけ入ってんだよ……」

「なんか紙が入ってるぞ、えっと何々……『俺の今日の稼ぎの半分だ、金貨600枚入ってる酒場でみんなで使ってくれ。』」


「「「「「600枚っ!?」」」」」


 袋を持った男はブルブル震えている、いまだに信じられないと言った顔をしている3人。酒場で盛っていた冒険者たちも酔いを忘れたかのように叫んだ。


 ギルドにいた全員がアルナの出て行った入り口を見つめていたのをアルナは知らない。




次話の投稿は2日後になります。

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