第4話
父さんについていき、大きい広間に連れていかれると、そこには明らかに他とは違った雰囲気を纏う3人を騎士10人、魔導士5人が守りを固めていた。全員に共通する点は心配そうな顔をしている事だった。
アルナと父さんが広間に入ってくると、一斉に歓声や泣き声などが発せられる。
「アルナっ! 良かったよぉおおっ!」
驚きに身を固くしていると、1人の女に抱き着かれた。1人の男はやっとかといわんばかりの溜め息をはく。1人の女はほっとした表情でいる。
抱き着いてきた女性の包容力に蕩けそうになっていると、不満そうな声の[精神感応]が飛んでくる。
『むぅ~、その3人が裕哉くんもといアルナくんの家族ですよ。あとスキルが発現してますから、確認してみてください。』
「分かった、ステータス・オープン」
神様に言われた通りに小声で他人に見えないように頭の中でステータスを展開させて確認する。
ステータス
【スキル】
自動回復、魔法破壊、魔法障壁
new!精神感応、身体強化、鑑定etc…
「[鑑定]発動」
本当に発現していたようだ。そこで目に留まった[鑑定]、人の情報について知る事が出来そうなのですかさず使う。
目に向かって魔力が集中していき、アルナの眼には今対象の情報について開示されているであろう。アルナはとりあえず親父を鑑定しようとするが、一人の魔導士が怪訝な顔をしてからすぐに大声で叫び出す。
「あ、アルナ様?! なぜ魔法を発動しようとしてるのですか!? いや、貴様何者だ……! 答えろ!」
その魔導士はアルナに持っている杖を向けて魔法を発動しようとして、発動待機状態を維持して警告してくる。それに続いて周りの騎士は剣の柄に手を掛け、他の魔導士も魔法を発動しようとする。
抱き着いていた女性はすぐに飛びのき細剣を腰に差す。
父さんは何も言わないがニヤニヤしていた、自分で切り抜けてみろなんて思っているのだろう、もう1人の男も、もう1人の女性も同じようだ。
「はあ、なんでこうなるんだ……」
落胆した声を出すがイラっとしたからかすぐさま頭を切り替える。
こんな状況なのに新しいスキルが発現する。その名前をみたアルナは恐ろしいほど獰猛な笑顔を全員に向ける。殺気を少し出してみると全員が額に汗を浮かべ、足を震わす者もいる。
おお、すごいなこいつら、失神しないか。
父さんともう1人の男、女2人は、微動だにしないが、剣に手を掛けていた。
「俺に矛を向けたことを後悔させてあげるね?[…………]、[重力増加]発動」
待機している魔法でさえ詠唱を必要とする、がスキルは特に必要がない、アルナ自身もまだ気づいていないがスキルとは現代人に身に着けられる者はいないとされる古代魔法のひとつである。
「「「「「「がっ!」」」」」」
重力を倍以上に上げられ、俺に敵意を向けた全員が地面に這いつくばる。他の4人には掛けなかったよ、女神さまから家族だって言われたからね。
「[創造]魔刀ミナカゲ」
アルナは自身を害そうとした者を殲滅すべく、スキルにより魔力から一本の刀を生成する。
鎬には血液を催す真っ赤な線が、刃紋には光も反射しない漆黒が覆っている。刀身からは禍々しい雰囲気を放っている。全長は2メートルにもなるだろう。刀より太刀だな
「し、し、しに……が……み……」
這いつくばる一人の女が言ってきた。
「こ、殺される……」
「た、助けてくれ……」
それに続くように嘆願するような声で絞り出すように言う。
「おいおい、殺される覚悟がない奴が人に攻撃魔法を、剣を向けるんじゃねえ」
身が凍りそうな冷たい声で捨て台詞を言ってアルナはミナカゲを水平に薙ぎ払う。魔力を帯びた刃を振ると魔力の刃として飛んでいく。
全員は悲鳴も上げられず、目を瞑るだけだった。しかしいつになっても痛みがやってこない。全員に痛みはなく、首はつながっている。何が起こったのか分からず、動けずにいた。
「いま首が繋がっているのは俺の[仮想空間化]の効果だ。空間を仮想化し現実を非現実にするスキルだ。」
そこでアルナはネタばらしをする、戦闘前にボソッと呟いたのは[仮想空間化]だったのだ。周りからざわっと困惑の声が上がる。スキルを使える者は自分たちの居る国の国王のみだと思っていたからだ。
「なぜだ、なぜ我々を殺さなかった…」
「俺に何にもメリットがないからだ、ねえ父さん?」
「はっはっはっ! 死神なんてな、本当に性格が変わったな、前は大人しかったのに今は別人だからな」
一番最初に警告してきた魔導士が多少怒気を孕んだ声で話しかけてきたのでアルナは父親に先を促した。
「お前たちは誰に剣を、魔法を向けたと思っている」
父さんはひとしきり笑ったかと思うと、冷徹な声で冷ややかに言う。
そこにいる者は顔を伏せ、何も言えない様子であった。
「アルナ=アルヴアートは神に神託を受け今顕現している、それはここにいる者が知っているはずだが? アルナ、ステータスを見せてやれ」
「え? あ、あぁ、分かった。ステータス・オープン」
全員に見えるように俺の前に大きく展開させる。
ステータス
名前:アルナ=アルヴアート 種族:人間!?
称号:転生者、世界を統べる者、世界の救世主、神の使徒、死神
レベル:267
HP:147843
MP:100798
STA:2095
VIT:1546
INT:3547
MND:1735
AGI:4568
DEX:2147
【魔法適正】全属性
【召喚魔法】神システィーン、○○○、○○○
【スキル】
自動回復、魔法破壊、魔法障壁、精神感応、身体強化、鑑定、重力増加、創造、仮想空間化etc…
レベルが一気に上がったな、敏捷の伸びがやばい、神の使徒っておい! しかも死神も加わってるじゃねえか!いろいろ矛盾してるやん……
騎士や魔導士達は自分が何をしたのかはっきりと分かり、絶望的な表情で俯いている、女性なんて涙を浮かべている。父さんと一緒にいた男と女2人は目を見開いている。
え、ちょっとなにこのお葬式感、やだな……
「父さん、神さま召喚していい??」
「唐突だな……だがこの状況は神にお願いしたいな、頼んだ。」
絶対説明がめんどくさいだけだよね……
神に精神感応を送る。
『女神さま―? いまからこっち来れます??』
『お、アルナくん!大歓迎だよ!』
『ありがとうございます!』
召喚するには広い空間が必要だからな……
「ちょっと広間の中心を空けてもらっていい?」
皆はびくっと震えるがすぐに広間の端に移動してくれる。
じゃあいっちょやりますか!
「召喚システィーン」
部屋で起こった現象が再び起こる。魔導士は魔法陣の大きさと魔力の濃さに驚き騎士は何事かと身構える。閃光が走るが直ぐに収まる、魔法陣があったその場所にいたのはさっきの明るい声とは裏腹な引き攣った笑顔で佇む神システィーンだった……。
なんか俺悪いことしたかな……
チートスキル増えました。
名前を考えるのは大変です。