第47話
少し短めです!ごめんなさい!
「アルナくんっ!」
キルライトが背からアルナを降ろすとセリカは駆け寄る。酷い熱が近づくだけで分かる。
この症状に見覚えがないセリカはニーズヘッグに尋ねる。
「アルナくんは病気なの?」
「はい、魔力欠乏症と魔力渇望症と魔風邪を患ってます。」
「ええ!?と、取り合えず城の中へ連れていかないと、あと医者も……」
驚いた後は独り言をブツブツと呟いていた、が――。
「それよりこの狼さんと鳥さんはアルナくんの召喚獣??」
「そうです、アルナ様の召喚獣です。」
2人、いや1人と1体の会話を聞いて武装を解除し始めるエルフの戦士たち。
その様子を見ていたフェニスとキルライトは一安心をしていたがニーズヘッグは違った。一見落ち着いているようだが内心はとても焦っていた。
いくら神の使徒だとしても病に負けないわけではない。
風の向きが急に変わる。乾いた風だったのにもかかわらずいきなり全身を舐めるような湿った風に変わる。
「ひぃ、何かが起こるのかな??」
セリカは自身の身体を抱くように両腕を組む。
「取り敢えずアルナくんを城の中へ、ニーズヘッグと君たちは小さくなってもらえる??」
3体の神獣は頭を縦に振り肯定すると、淡い光を纏ったかと思うと一瞬にして元の大きさの3分の1程まで体が縮まっていた。
ニーズヘッグにアルナをパルテノの自室まで背に乗せて運んでもらう。時折アルナは苦しそうな息切れした声でうなされている。
「じゃあここに降ろしてください、あと姉さんはお母さんと医者を呼んで来てもらっていいですか?」
「ああ、任せろ。セリカはアルナの側にいてやれ。」
「うん。ありがとう。」
アメリアは退出した。部屋にいるのはセリカとニーズヘッグ、フェニス、キルライト。
「我々は今は戻れないのでここにいても??」
「もちろん、戦闘の事も聞きたかったし。」
セリカはまずタオルや着替えやらを持って来て、アルナの浴びた返り血を綺麗に拭き取り、汚れた衣服を交換した。
それが終わってからニーズヘッグはセリカに、他の2体も神獣である事、北のモンスター達は殲滅した事、アルナが倒れるまで戦闘に参加していた事を事細かに話した。
フェニスはたまに補足をしたり、キルライトはアルナのベットの端で寝そべっていた。
「そっか……またこの人は無茶を…………」
アルナの寝るベットまで近づくとアルナの額を優しく指先でそっとなぞるように撫でる。
「…………ううん、すぅ~……」
心地よかったのかセリカが撫でた一瞬だけ呼吸がゆったりとし苦しいのが消えたようだった。
それから無言を貫いていたが、数十分後部屋のドアがノックされる。
「私です、開けますよ?」
「どうぞ、あれっ?貴方は??」
ドアから入ってきたのは母のオルターと、白衣チックな服を着た1人の女性がいた。
「セリカ、あなたがアメリアに頼んで私が連れてきたのよ?」
「私は医者をしてます、アキと言います、王女殿下初めまして。」
恭しく最敬礼をするアキさんは、エルフの国では珍しい人族で謙虚で堅実、エルフ達から信頼されているという。
ショートカットの金髪に目にかかるくらいの前髪、誰もが接しやすい優しそうな笑顔をしている人族では美しい顔。身長は170前後で女性にしては大きめ、しかし引っ込んでいる所は引っ込み、出るところは出ている体は誰もが二度見してしまうほどの存在感を有している。
「……おっき…………コホン、こちらこそ初めまして、お噂はかねがね聞いていました。それで仕事の話に戻るのですが――」
存在感に圧倒されるセリカはなんともわざとらしい咳払いをして話始める。
「それよりもこの子たちは一体……」
まさか病室に狼、龍、鳳がいるとは思わなかっただろう。
「この子たちは彼の召喚獣ですよ?」
「召喚獣っ!?それって禁忌魔法のはずじゃ…………」
「まあ、彼に関しては秘密が多いと言いますからね、詮索はしない方がいいかと思います。」
少しだけ脅すような言葉と口調で彼女に言うとセリカの真剣な顔から理解したのか、勿論です。とそれだけ言う。
「では今度こそ、話を……彼はアルナ=アルヴアート。私たちの友人なのですが……ん??どうしました?」
名を出した途端にわなわなと震え始めるアキ。
「い、いえ……まさか最強と名高いクレトリア王国のアルヴアートの方がいるとは思わなかったので……。話を止めてしまい申し訳ありません。続きを。」
「ええ、では。彼は午後北の森でモンスターの掃討中に魔力欠乏を起こしそこから魔力渇望症を引き起こしたそうです。また彼は以前から魔風邪を患っています。」
「ええっ!?魔力欠乏症に魔力渇望症、しかも魔風邪ですって!普通の人なら死んでますよもう。」
医者には似つかわしく無い大声を上げてしまうアキ。
「私はあまり病に関しては詳しく無いのですが……あの魔風邪というのは?」
ちょこっと手を挙げて割り込んでくるオルター。セリカもブンブンと頭を縦に振り促している。
「えっとですね、魔風邪は魔力欠乏症になる人が基本的にかかってしまう病なのです。」
「じゃあ、魔風邪を患う人は魔力を多量に失っている可能性が高いという事ですか?」
「そういう事になります。普通、空気中にある魔力を体に馴染むよう時間をかけてから取り込むのですが、取り込む際に身体の魔力量をいっぱいにする為に一気に空気中から魔力を無理矢理直接取り込んでしまう為に魔力に酔い、異物として身体が拒む為、熱が出てしまうのです。」
「なるほど?じゃあ彼の体内の魔力は増えずにいるままという事ですか……危険極まりないですね。」
「ええ、私にできるのは魔力使用による治療ですので少なくともまた拒絶反応が出るはずです。あ、このアルナさん?が全幅の信頼を寄せている人物に心当たりは?」
オルターは間を空けずにセリカをじっと見つめる。
「へっ?私なの?」
「へっ?じゃないでしょう、あなたはアルナくんの婚約者なのだから。」
「えぇえええっ!?」
「あ、そうだ、アキさん。この話はまだ内密にね?」
「は、はいぃ……」
エルフの第二王女と一国の公爵の息子の婚約などなかなか有り得ない、というか前例はないのだ。
「まあ、取り敢えず話の続きをお願いします。」
「取り敢えずって…………えっとですね――」
取り敢えずで済む話では無いのだが、やはり王族というのは少し常識が外れているに違いない。
「医学の発展が著しい人族ですが、これに関してはまだ理論が追い付いていないのです。
信頼している者や好意を持っている者からの魔力は害として扱われないのです、その為に魔力による治療が可能になる訳です。もちろん治療の仕方はその都度教えます。」
人族でも分からない事はもちろんエルフにも分からない。エルフは田舎人チックな所があるからである。
魔法に関してはもう天性の才能としか言いようがないほど直感で使っているらしいのだ。
「へ、へぇ~、じゃあ私がアルナくんに魔力治療を施せばいい訳ですね?」
「そういう事になります。私が教えた事は秘術によって守られているのでその場限りしか覚えられないようにしてあります……そこはご了承下さい。」
秘術を掛けなかったら医者としてあがったりである。そこはセリカも理解している。
「勿論ですよ。じゃあもう始めてもらってもいいですか?そろそろ彼も苦しそうなので……」
「あ、そうでした!申し訳ありません。では始めますねーー」
5分ほど放置された病人のアルナは顔が血の気が引いていて少し白くなっている。
呼吸も浅くなりつつある。
アルナの治療がようやく始まるのであった……
次回は26日前後を予定してます。




