第39話
「【空間転移】」
俺はそう唱えるとSランクアイテム『転移水晶』と同じ現象が起きる。俺たちの視界を白く眩い光が包み込んだと思うと宙に浮く感覚がするがすぐに重力に従い落ちる。
光が収まり視界が晴れるとそこにはフォレスタの城、パルテノの中庭だったのだ。
「え?? ここってまさかっ!」
「俺の創った魔法【空間転移】は『転移水晶』と同じ事が出来る。」
城内からバタバタと走る音が聞こえる。
「アメリアぁ~っ!」
叫びながら走る義母さん、その後ろには義父さんとセリカ。
「ごめん、父さんに母さん、セリカ。私は――」
その後は言えなかった。セリカがアメリアの頰を思いっきりぶったのだ。パシーンと中庭に響き、紅葉の跡がつくくらい。
まさか妹からぶたれると思わなかったらしく、頭が追いつかないアメリアは呆然とする。セリカは目尻に涙を浮かべて絶叫する。
「何やってんのっ! バカじゃないのっ! 姉さんは次の女王なんだよ? その前に私の姉さんなんだよ! もっと自分の命を大切にしてよっ!」
「ご、ごめん…………」
謝ってから俯くアメリアの背中は今まで見せたことないほど委縮していた。自分の身勝手な周りを顧みない行動で家族を心配をかけた事を重く受け止めているようだった。
全部セリカが言いたいことは言ってくれたようでオルターやエレンはただ2人を見ているだけだった。
そういえば、と早く言わなければならないことが俺にはある。
「北の軍勢の近辺にレイザルの近衛騎士が10名いたのですが、何を狙っているのか見当つきますよね?」
嘘を付けないくらいの殺気を放ちながら、続きを言う。
「エルフの国は何を抱えているのか、ダンジョンの最奥には何があるのか詳しく教えてもらえないと俺は正体は明かさない。」
オルターを見てからエレン、セリカ、アメリアを睨み付ける俺。
まあ、だいたい想像くらいはつくんだけどね?
エレンは初めてアルナの殺気を受け、恐れ慄いている。だがすぐに真面目な顔をしてオルターと話す。
「オルター、彼にはあれを教えないときっと……」
「そうね…………いくらエルフの秘密とはいえアルナくんは…………」
2人の顔は不安でいっぱいになっているが、目だけは希望に満ちていた。どうやら話す気になったようで俺の瞳を見つめる2人。アメリアとセリカは不安そうに見ている。
「取り敢えず私の私室に行きましょう。ここでは話しにくい話なので。」
「分かった。」
オルターの私室は元のアルナの部屋のように質素であった。テーブルや椅子、本棚やベッドしか置いてなかった。
「じゃあ、話しますね…………」
俺は頷くだけで先を言うように促す。
「レイザルの兵士がいた件について。それはエルフの血を欲しているのでしょう。」
過去を思い出すような悲哀に満ちた眼を伏せるオルター。
「ん?? どういう事ですか?」
転生したのはたったの2か月ほど前。それよりも前の出来事を知るはずがない俺はただ疑問を口にしてしまう。
「君の使う[再生]と同じ効果のあるアイテムの製造法が3年前ほどレイザルのダンジョンで見つかったそうです。その製造にはSSSランク指定モンスター、ドラゴンの血とエルフの血が必要とのことでした。」
だんだん色々繋がってきた気がする。なぜ毎年のように災厄が訪れるのか、エルフの人口が少ないのか、今回はどうして北のダンジョンからモンスターの大量発生があったのか。
「私たちエルフがなぜ少なくなっているのか、それは2年前から始まった民族浄化です。」
俺の中で殺気が立ち上るのを感じるが踏みとどまる。今はオルターの話を聞かなくては。
「今の皇帝は比較的穏健なのですが、前皇帝が『エルフ族は我々人間を貶めようとしている、今こそ根絶やしにしてくれよう』なんて言ったせいでエルフの大量虐殺が起こりました。」
自分の爪が皮膚に食い込んでいるにも関わらず、俺は思いっきり拳を握る。
「ですが、当時最大の国力を持つレイザルに歯向かう私たちに手を伸ばしてくれる者もいました。」
「それが俺の父さんと、国王陛下のクレトリア王国。」
「はい、彼らがレイザルを追い出し、かつ友好さえも約束してくれました。私達はそれを拒もうとしたのですがクレトリアの国王が言ってくれたのです。
『数年後、僕の国には神の使徒が舞い降りる。だから使徒が虐殺を望むわけがない。神の名を使うのは許されるはずはないけど。信頼は出来なくてもいいが、信用してくれたら嬉しいな。』と。」
あの国王は全部俺に押し付けたな、しかも2年も前からかよ……
「確かにあの時は信用しかしてませんでしたけど、今は君のおかげで信頼できそうです。」
「ああ、それは良かった。北のダンジョンの事はまた後ででいいや。辛い事を言わせて済まなかった。」
俺は頭を下げる。
「いいえ、今まで黙っていた私達も悪いですし。」
そんな事が過去に起こったとは知らなかったから聞けなかった。
じゃあ今度は俺の番だね。
「俺の正体を言ってなかったね、オルターの家族にしか言わない。クレトリアでも知っているのは王族のみ、誰にも口外はしないで欲しい。」
全員が頷くのを見てから俺はステータスを展開する。
「ステータス・オープン」
ステータス
名前:アルナ=アルヴアート 種族:人間!?
称号:転生者、世界を統べる者、世界の救世主、神の使徒、死神
レベル:439
HP:375735
MP:209846
STA:5683
VIT:3489
INT:5633
MND:4590
AGI:10934
DEX:5809
【魔法適正】全属性
【召喚魔法】神システィーン、神龍バハムート、黒龍ニーズヘッグ、○○○
【スキル】
自動回復、魔法破壊、魔法障壁、精神感応、身体強化、鑑定、重力増加、創造、仮想空間化、記憶回想、偽装、付与、思考加速、並列思考、分身、魔力回復活性化、変身、感覚共有etc…
【創造魔法】
光線、回復魔法、状態回復魔法、乾燥、再生、探査、範囲消去、空中歩行、空間転移
【神の加護】
獲得経験値倍増化《神システィーン》
魔法龍属性付与化《神龍バハムート》
【神獣の加護】
龍人化《黒龍ニーズヘッグ》
あれっ? なんか増えてるし、後は遂に敏捷が5桁になってしまった。
加減しないと普通に音速超えそう…………なんだ、龍人化って、おいおい。
アメリアにオルター、エレンもこのステータスを見て呆然としている。
「クレトリア国王の言っていた神の使徒は俺だ。」
若干瞳が金色になっているのは誰も気づかない。
「まさか、そんな事が…………」
「嘘でしょ……」
「アルナ君…………」
「召喚、女神システィーン、神龍バハムート。」
俺はその驚きに追撃するように神々を召喚する。
今までで一番の魔力を消費して、部屋全体に二重の黒と白の対照的な魔法陣が出来上がる。
これにはセリカも驚き、他の皆は唖然としている。
魔法陣が回転し始めると同時に部屋が明るい光に包まれる。全員の視界を真っ白に染めた。魔法陣の展開が終わり、光が収まると直前までいなかった人と龍がいた。
双方、この世界の者が出せるはずもない神々しさを放っていた。
「久しぶり、ティーナにバハムート。急に呼び出して悪かったね。」
俺は他の4人の驚きには気づかずに気軽に話しかける。
「久しぶりです、アルナ君。天界から見てましたよ? 結構エグイ事してましたね。」
少しだけ引いたような声音で話すティーナ。
「やあ、アルナくん、もしよかったらニーズヘッグも同じように召喚してやってくれないかい? エルフの皆にはどうやら縁があるみたいでね」
バハムートはいつも通りのテンションで話しかけてくる。
「おっけ、えっと……召喚、黒龍ニーズヘッグ」
深淵のような全てを呑み込みそうな真っ黒の魔法陣が展開され、魔法陣の中で影が揺らめいたかと思うと次の瞬間、爆発するような音と共に姿を現す。
随分と前に俺が【変身】した時よりも艶がある鱗に頭に2本ある角が禍々しさをより際立たせている。勿論部屋のサイズに合わせて縮小化されているけど。
「初めまして、召喚主様。私はニーズヘッグ。あの時は荒々しく私を使ってくださりありがとうございました。」
龍の癖に人の頬にあたる部分を赤く染めている。雌の龍らしい。
うわあああああ、やめて、卑猥な言い方しないでくれっ! って言うか召喚主??
ティーナはドン引きしている。バハムートはこうなる事を理解したかのように、ふふっと笑っている。
「あのぉ、ちょっといいですか?」
俺たちの会話に恐る恐る入ってくるオルター。
「ん? なんだい?」
代表してバハムートが答える。
「皆さんは一体誰なのでしょうか……?」
「私は女神システィーンです、世界を司る神です。」
「僕は神龍バハムート、レイザルに崇められている神さ。」
「私は黒龍ニーズヘッグ、世界樹を守護をしてました。」
それぞれが淡々と正体を明かす。
「へ?? かみさ……ま?」
間抜けな声を出したのはエレン。事の展開についていけないようだ。
「あ、あははっ、ここに神さまが…………ふふふふふっ」
アメリアは現実逃避してるし。
予想以上反応に笑みを浮かべているアルナだった。
見てくださった皆様、今年はありがとうございました。
来年もよろしくお願いしますっ!




