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第35話

 俺は大量に血のついた髪を丁寧に洗ってからゆっくり温泉に浸かっていた。


「それよりもあいつはなんだったんだ?」


 俺でありながら俺ではない感覚。あんな不思議な感じは初めてで少し動揺している。


「あいつと話せないからなぁ……あと正体教えなきゃいけないし……」


 ますます溜息が出てしまう。しかし1人で1500体ものオーク達を倒したのは結構疲れた。身体的にじゃなくて精神的にね?


「護符と地雷は分からないけど電磁加速砲(レールガン)は使える武器だったかなぁ、非戦闘員でも魔力の操作ができる者なら使用可能だし」


 まずまずの成績に俺は安堵した。でも【魔力剣(スペルソード)】の多用でちょっと腕が鈍ったかもしれないな。ただ考えるだけで動いてくれるのは俺としては身体的疲労は皆無だし。【再生(リヴァイブ)】を何かに付与するのはやめておこう、倫理的に問題がありそうだし。



「魔力ポーションがあるなら回復ポーションもあるのかな? ないなら自分で作ればいっか」



「アルナくーん、脱衣所に代わりの着替え置いときますね?」

 脱衣所の方からセリカの声がする、わざわざ持ってきてくれたようだ。


「わかったー、ありがとー!」


 そのまま温泉に浸かっていたら脱衣所のドアが開く。


 他の客かな? でも外は血の海だし……


「お隣失礼しますね?」

 そう言って横に入ってきたのはセリカだった。何一つ身に纏わずにきたらしく、美しい裸体が……晒されている。

 思わず生唾を飲んでしまい、アルナは顔をそっぽ向けた。 


「へ? ど、どど、どうしたの!?」


 俺は動揺を隠せずに慌ててしまう。


「アルナくんと2人っきりで話したくて……君ならこのタイミングで襲うとかしないと思うし」


 まあ時と場は流石に考えますよ……


「オークと戦闘している時君が別人になったから私は心配しました。君がいきなり倒れて別人に変わったから私は心配しました。」


 あれ? これってもしかして……愚痴ですか?


「う、うん……ごめん……」

「だから、形式上の言葉だけじゃなくてアレをして欲しいんです…………君の言葉だけじゃなくて……」


 とても恥ずかしそうだが真剣な目をしている。


 耳まで真っ赤に染めていうアレとはアレしかないよな?


「そ、そんな、いやいや……早すぎると思うよ? もう少ししてからにした方が……」


 ポカンとしているセリカ。何を言ってるんだと言いたい表情をしてるし。


「ちち、違いますっ! アレってエルフの国での契りの事なんです!」


 慌てて訂正するセリカ、なんとも可愛い。


「ち、契り? 因みにどんな事をするんだ?」


 人間は特にこれと言ってやる事はなかったはずだし、見当もつかない。


「割と普通って感じると思いますけど……この耳に触れるだけです……はい…………」


 これ絶対変な展開に転がるパターンだよね……


 セリカはその後何も言わずに自分の左耳を俺が触れられるように突き出してきた。ハアハアと肩で息を荒くしているのがまた色っぽい。


「じゃ、じゃあ触るよ?」

「いつでも……いいです……よ…………?」


 セリカは途切れ途切れに言うが、一応了承は得られた。俺はなるようになると思って右手でセリカの左耳を触る。


「……んんっ………あっ……はぅ…………」


 いやいやこれはアカンよ? 俺の理性もギリギリ保ってる、偉い俺っ!


 そのまま俺は撫でるように優しく触り続ける。ヒンヤリと冷たくピンっと長いから硬いのかと思いきや柔らかい感触に酔いしれそうになる。

 その間セリカは俺にされるがままに、時折喘ぐように甘い吐息を吐きながらトロンとした恍惚とした表情をしている。


「そろそろ……私……限界……です…………」


 腰砕けになったように温泉の縁に倒れこむセリカ。

 セリカはのぼせたのと羞恥で茹でだこのようになっていた。しかも俺にされるがままになっていたのに何故か満足そうな顔をしていた。

 俺はセリカに俺が使っていたタオルを身体が隠れるように掛けて抱き上げた。


「ひゃあっ!? アルナくんっ!」

「どうせ歩けないでしょ? 脱衣所まで連れて行ってあげる。」


 セリカは俺の肩に額を当てる。


「どうしたんだい??」

「本当に契りを交わせたので嬉しくって爆発しそうです……うふふっ。」


 この子本当にあざといなあ、絶対に守ってみせる。


 決意を新たに固めるアルナだった。



 温泉からでて着替えてから皆の集まっているという食堂へと向かう俺はいつも通りに入っていくが、そこには怯えたような顔をしている哨戒隊のメンバーと気難しい顔をしたオルターとアメリアがいた。おばあさんはどっかにいってしまったらしい。


 こういう雰囲気になってしまうような行為をしたんだもんな……怯えられて当たり前だ。


「あんな風に倒すつもりはなかった、つい頭に血が上ってしまって……済まなかった……」


 そう言って俺は頭を下げる。しかし、オルターは言う。


「いや、謝るのはこちらの方さ。彼女たちは戦士だ、そこまで気にしなくていい。君にはいくら武器のテストとはいえ1500体もののオークと対峙し、しかも全て撃退。それに性能確認は十分、君には目立った外傷がない、こちらの戦力は無事。いい事ずくめで君に謝られる理由が見つからないのだが??それに――――」


 ん? それに? まだ何かあるの?


 困惑していた顔をニヤけた悪い笑顔に変えて言う。


「どうやら君達はエルフの契りを交わしたようだし。偶然温泉の近くを通ったらセリカのおかしな声が聞こえてきてね、セリカも時と場と考えた方がいいぞ?」


 あちゃあ~、聞こえてたかあ、探査(パルス)パッシブにしとこ……


「はぅぅ~、はい、お母さん……」

「まあそういう事で君は私たちの家族同然だ。」


 そう堂々と面と向かって言われると少し恥ずかしい。


 あれっ?探査(パルス)に反応が……

「なんか高速で移動する物体が接近しているんだけど?」


「ん? それは私の部下だ。この国随一の速さを誇るので伝令になってもらっている」


 そんな話をしているとドアから一人の女性エルフが入ってきた。


「伝令です、アメリア隊長。最重要事項として女王代理より2つお預かりしています。あ、女王陛下御機嫌麗しゅうございます。」

「そんなことは気にせずに、早く伝令を。」

「はっ!一つ目は北の例のダンジョンより多数のモンスターの存在を確認。その数約1000体。至急城に戻り戦士隊の指揮の準備を。

 二つ目はオーガ、オークの大量発生、災厄が西の森から近づいております。その数約6000体、中にはジェネラルが200体、キングが300体いたそうです。

 災厄に関しては恐らくフォレスタまでは2週間といったところです」


 その報告に驚きや悲観よりも先に安堵の表情を浮かべる。


 なんでだし……


「俺の悪い予想が当たっちゃったね……って何で安心してるのさ」

「お前がいるからだ、だがこれは流石に手に負えないんじゃないか?お前ならどこまで倒せる??」

「北の1000体はオーガキングより強いのがいなければ一日あれば掃討可能です、6000体は2日あればなんとかなりますね」


 特に臆することなく平然と答える。


「も、もしかして外の惨状って貴方がやったんですか?」


 やったんですか? ……そうか、外から来たから見ざるを得ないか。


「そうですよ、1500体くらいでしたっけ。1時間くらいで終わりましたよ」

「アルナの言う事は本当だ、私も陛下もここにいる全員が証人となろう」


 憮然とした態度と陛下の名を出して言う為、説得力がある。


「大変失礼を申し上げました、しかし貴方は一体……」

「私の未来の旦那様ですよ??」


 セリカは堂々と俺の後ろから抱き着いてくる。


 だんだん容赦がなくなってきたな、この子は……


「第二王妃様の婿殿ですか! 誠に申し訳ございませんでした……」

 そういってから土下座し始める伝令係。


 もうこれ見慣れ過ぎて……そろそろ勘弁してほしいわ…………


「そういうのは大丈夫だから、気にしないで? それよりも早く移動した方がいいんじゃないの? 北と西っていうからここは大丈夫だよね?」

「そうだな、ここは取り敢えず防御魔術を施しておこう。」


 え? なにそれ? 今度聞いてみよ……


「さ、はやく移動しましょうか。」


 オルターはもう既に外にいるし、他の皆も外にいた。俺も考え事をしながら外に出る。


 北から1000体、西から6000体……恐らく南は撃退したから後続は無いとして、東が怪しすぎる。 どうして一気に攻勢をかけて来ないんだ?それだけの数がいればエルフ達を制圧も殲滅も可能だ……しかも北の例のダンジョンって言ってたけどなんだそれ?


 聞きたいことが山ほどある。そんな俺の思いとは裏腹にとっとと行動に移し始めるエルフ達。


 オルターが魔法を発動させる。


「じゃあっと……【飛行魔術(フライ)】発動っ」


 他のエルフ達もそれに続いて詠唱を開始して空に浮き始める。


 え? 羨ましい! ……あ! 創ればいいや。


 速攻で魔法を構築し始め一瞬で完成させる。


 セリカは俺に右手を差し出して手を繋ぐように促してくる。


「アルナくん、私に掴まってください……え?」

「[空中歩行(エアウォーク)]発動っ」


 俺の足元に魔力が集まり俺が跳ねるように歩き始めると宙に浮く。


「おおっ! これはいい、改変(アレンジ)もしやすそうだし……皆どうしたの?」


「なんで宙に浮いているんだ??これはエルフにしか使えない秘密魔術のはずなのだが……」

「だってこれ今俺が作った創造魔法だし、これだって空を飛ぶんじゃなくて宙を跳ねるだけだし……」

「今なんて言った? 作った? 今?」


 アメリアはまたかこいつ。何言ってんだみたいな感じで言ってくる。


「だからそういってるでしょ?」

「すまん、もう行こう……驚き疲れた、はあぁぁ~」


 なんで溜息つくのぉぉ!


 そういって全員が空高く舞い上がる。俺は宙を蹴るように空へ向かう。



 ここはまるで絵に描いたように美しい森だったのだ。

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