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第32話

 翌日の朝――

 俺の部屋のドアをノックする音がする。


「おはようございます…………アルナくん? ……あれっ? 鍵が開いてる?」


 セリカかな? 誰かがドアを開けて部屋に入ってきたようだ。


「あ、アルナくんっ!?」


 セリカは慌てて傍まで駆け寄ってきて俺を抱え上げようとする。部屋はいろんな工具や素材で散乱している、挙句の果てに俺は部屋の中心で倒れている。傍には赤い液体がこびり付いた短剣が……


 叫び声で睡眠から目が覚めたアルナは目を擦りながら答える。


「……うーん、ふわああぁ…………お、おはよう、セリカ……どうしたの??」


 何故か涙目になっているセリカ。俺は抱え上げられている。


 どういう状況なの、これ……


「こ、これはどういう事なんですかね??」


 わなわな震えるセリカは怒鳴るように言う。


「こんな状況でよくそんな暢気なことが言えますねっ! 私は、心配したというのに……ぐすっ…………」


 俺は抱えられているのでゆっくり手を出してセリカの頭を優しく撫でる。


「心配かけたみたいだね、ごめんね。でも俺だって遊んでたわけじゃないんだ……」


 俺の後半の怒りを孕んだ声にビクッと反応するセリカは恐る恐る聞いた。


「そ、それは……どういう事なんですか?」

「俺の推測でしかないが恐らく1か月以内にその災厄とやらがまた起こる可能性がある。」

「なっ……!」


 驚きに固まり何も言う事が出来ないようで俺は加えて言う。


「しかも前回の襲撃の倍はいる可能性が高い。その対策用にちょっと魔道具?とやらを作っていたんだ。」

「前回の倍って……フォレスタは。私の故郷が……」


 あまりの数の多さに混乱し、涙を流し始めるセリカを抱き締める俺。


「そんなことは俺が絶対にやらせない、君も君の家族も君の故郷も絶対に俺が守ってみせる。」


 宥めるようにそして安心させるように優しく耳元で囁く。



 30秒後――


「なんだか、取り乱してしまって。ごめんなさい……。でもアルナくんも悪いところありますからね!」


 羞恥に身を任せてしまうセリカ。アルナはドアの方から人の気配がしたのでその方を見ると、そこにはニヤニヤしたオルターとあきれた表情をしたアメリアがいたのだ。


「まったく、朝からお熱いことだ……」

「本当に付き合ってないとか嘘でしょ??」


 親子なのに噛み合わないなこの2人は……


「さっきの話は本当かい?」


 オルターが聞いてくる。


「いえ、あくまで俺の推測です。」

「だがそんなことが起こりうるならやばいな。」


 頭の中で惨状を想像したのか、苦い顔をするアメリア。オルターはアメリアの肩をポンポンと軽くたたくと、聞きたいことがあったようで話し始める。


「怪我人も多数、今動ける戦士は何人いるの?アメリア」


 それは俺も知りたい。俺一人だけじゃカバーできない部分が多々あるし。


「大体100人ほどになります、またクレトリアに援軍を頼みますか??」


 そういえば前回も頼んだんだっけ。よく間に合ったよね。


「いや、ここに一騎当万のエキスパートがいるじゃない……暫くこの国に滞在してくれないかしら」

「構いませんよ、あと徹夜で作ったものがあるので是非皆さんに身に着けてほしいものが……」


 俺はあるモノを取り出そうとするがアメリアに釘を刺される。


「取り敢えず食堂でその話はしてくれないか?全員いた方が話もスムーズにいくと思うしな」

「そうだね、お腹も減ったし……セリカ、いこう?」


 ずっと俺に抱き着いていたので名残惜しいのか不服そうな顔でやる気のなくなった声で言う。


「はあい……」


 もうちょっとやる気というか何というか、マイペースすぎでしょ……



 食堂には全員が集まっていた。俺とセリカが一番遅かったようだ。一人のエルフが俺の持つ箱に気が付いたようで声をかけてくる。


「アルナくん? それは一体……」

「それはお楽しみさ、きっと驚くと思うよ?」


 まずは朝食を取ることにした。


「朝からお熱い様子の2人さんよ。」


 アメリアが皮肉に声をかけてくる。


 おい、なぜそういう事をいうんだ。ほれ見ろ、皆ニヤニヤしてこっち見てくるじゃないか。


 ちょっと狼狽え気味に聞く。


「な、なにさ。」

「そろそろその中身を教えてくれてもいいんじゃないか?」


 焦ったようにアメリアは言う。


「食を囲んでする話ではないんだけど?」

「そ、それは済まなかった。さっきの話を聞いていたらゆっくりするのがもどかしくてな……」


 まあ、確かにわからなくはないけどさ。善は急げっていうし。



 全員が朝食を食べ終え、ここに集まってもらった趣旨を話し始める。


「えっと、ショックを受けるかもしれないけど冷静に聞いてほしい」


 こんな切り出し方をしたせいか、背筋を伸ばし緊張した雰囲気が出る。


「あくまでも俺の推測なのでそれに囚われないで欲しいんだけど、3ヵ月前にフォレスタを襲った災厄だが約1ヵ月以内に再び起こる可能性が極めて高い。しかもその規模も前回の倍以上とみられる。」


 息を呑む者が多々見受けられる。ここで騒がないだけ十分猛者だと俺は思った。俺は箱からネックレスや指輪のようなアクセサリーを出す。


「そこで俺が作った魔道具を身に着けてもらう。」

「これはただの鉄ですけど、どこが魔道具なんですか??」


 魔道具を作る際にはミスリスという鉱物を使うようで魔力伝導性が極めて高いのだが俺には関係ない。


 だって確実に魔法を付与できるからね。


「ここには俺の古代魔法を付与してある、魔法名【絶対防御(プロテクション)】。一度だけならどんな致命傷や破壊攻撃から守ってくれる。俺の実証済みだからそこは安心して欲しい。」

「「「「「「古代魔法を付与おお!?」」」」」」


 何かおかしいことしたかな??


「いま、効果言ってましたけどもう一回言ってもらっていいですか?」

「だ、だから……どんな攻撃も一度だけなら身を守ってくれるって…………」

「アルナくん、君はとんでもないことを口走っているのに気が付いていないよね?もしこの効果が本物なら君はどの国にも匹敵する利益を上げることが可能なのだが…………」


「もう、俺はそんな事しませんし、興味もありません。この程度俺の魔力がある限り大量に作ることも出来ますよ?【創造(クリエイト)】」


 そう唱えると俺の右手に魔力が集まる。一瞬のうちに構築され俺が左手に持っているネックレスが出来上がった。


「なんて濃密な魔力……」

「魔力練成をいともたやすくあの一瞬でやるなんて……」


 アメリアとオルターは驚きを隠せない、アメリアは一回見たじゃん。セリカは自分の事のように胸を張ってドヤ顔している。


「他にも色々ありますよ、えっと……」

 俺は箱から魔力が大量に詰まっている円盤と小銃のようなものを取り出す。


「こ、これは?」

「対モンスター地雷(マイン)電磁加速砲(レールガン)です。効果としては、地雷(マイン)の方は標的がこの上に乗った瞬間に最上級魔法【爆破(ブラスト)】並みの爆発を起こし、電磁加速砲(レールガン)は初級魔法【雷撃(ライトニング)】の改変(アレンジ)版を魔力消費を限りなくゼロに近づけたいわゆる【雷撃(ライトニング)】専用の杖みたいな感じです。」


 流石の俺も少しやり過ぎたのは分かってるけどね??


「これらは私たちに譲与されるのかい??」


 オルターの言葉に俺は横に首を振ってから答える。


「使い方によってはその二つだけで世界征服が可能になりますので回収です。過剰戦力だと自分でも思ってますが、現状戦力では完全制圧は不可能に近いので無断作成させていただきました。」

「確かにいくら初級魔法でもゼロに近い魔力量なら連発が可能だもんなぁ……」

「実践確認テストしてみますか??」

「ど、どこでだい?」

「すぐそこまでオークが近づいていますよ??」


 俺の探知(パルス)には10分ほど前から反応していた。


「なにっ!?」


 臨戦態勢をとる皆を俺は落ち着かせる。


「いや、皆さんはここで見ていてくれればいいですよ? ストレス発散させてもらっていいですか?」

 多数が少数を嬲るのとか正直むかつくんだよね。全て消し炭にしてやるよ。


 俺の全力の殺気を間近にして別に向けられてはいないのに心から肉体まで全てを消されそうな気分になる一同。


「ひぃっ!?」


 誰かが悲鳴を上げて意識を失った。無言で意識を失う者もいた。逆にこの状況下で意識を保ってる方が凄いと言わざるを得ない。

 最終的に意識を保っていたのは、セリカ、アメリア、オルター、おばあさんだけだった。


 目を瞑っていた俺はそんな中でどういう風に殺してやろうかずっと考えていた。そして決まったかのように獰猛な笑みを浮かべながら目を開けるのだった。



 しかし誰も気が付かなかった、アルナの瞳の色が黒から真っ赤に染まっていることを…………


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