第31話
両腕を女王陛下とセリカにホールドされ混浴に連行される。
「ちょっと待ってよぉ!」
「「なんですか??」」
アルナは制止の声を上げるが、取り合わずに止まらない女子たち。後ろにはアメリアやおばあさん、哨戒隊のメンバーがついてきている。
あれっ? ここにいるの皆女性じゃん!
アルナはここにいる全員が女性という重要な事を完全に忘れていた。
「俺男だからね! ねえってば!」
「そんなの関係ないです」
「そうですよ、親交を深めると思って~」
いやいやおかしいでしょ、ここじゃなくても……
「裸の付き合いってやつですかね。」
本当に勘弁してほしいわ……
15分後、完全に押し切られた俺はタオル一枚に身を包んでいる。
「おまたせしました」
セリカの声が後方から聞こえるのでそっちを向くと水着のようなモノに身を包んだ女性陣が……
あれっ?? なんか違うけど……期待なんかしてないからね! 一人だけ何もつけてない人が……女王様!?
「え? ちょっとぉ!? なんか身に着けてくださいよ!」
「なあに? 欲情しちゃったのかい?? 私はもう200歳超えた老婆なのよ?」
艶やかな笑みを俺に向けてくる。
いやいや、それでも肌の艶とか張りがあり過ぎでしょうか! っていうか俺、男として見られてなさ過ぎて悲しいんだけど……
「これ言ってたら収集つかなくなるわ……」
俺は溜息をつきながら呟く。ツッコむのもめんどくさくなった俺はすぐに髪を洗いに行く。返り血が少し付いていて気持ち悪い。それに髪が痛んでいるようで丁寧に洗わなくてはいけない。
いつも大変なのに余計に大変になった髪洗い。
「勘弁してくれよ……」
俺の呟きを聞いていたのか既に髪を洗い終えたセリカが尋ねてくる。
「私が洗いましょうか?? 私より長いアルナくんの髪いじってみたかったんですよ」
うーん……
葛藤する俺。
この歳になって女性に髪を洗ってもらう羞恥、彼女の欲求に応えたい自分……
答えは出たっ!
「じゃ、じゃあおねがいします……」
後半は頼むのが恥ずかしくなって誰にも聞こえないような声量になってしまった。それに追撃するようにセリカは笑みを浮かべながら言う。
「よくできました、うふふっ」
俺の頭を撫でながら、褒めてくる。俺はあまりの恥ずかしさに体育座りをして膝に頭を抱えるように顔を隠す。
「「「「「「ふわあああ~」」」」」」
なぜか女性陣は恍惚とした表情で俺を見てくる。
俺は小動物かよ……
そこからセリカは優しく髪を撫でるように洗い始める。
「……ん…………」
心地が良くて変な声が口から洩れてしまう。俺がいつも洗うスピードとは比べ物にならない速さで洗っていく。結局綺麗に洗ってもらった後にゴムで髪を留めてもらった。
「ありがと、セリカ……お礼に背中流すよ?」
「お礼なんて……じゃあお願いしてもいいですか??」
俺はセリカの傷一つ無い綺麗な背中を見て生唾を呑む。
なんでこんなに綺麗なんだし……
「アルナくん? どうしたんですか??」
俺の居る方向に身体ごと向けるセリカ。流すと言ってからずっと見惚れていたので反応が遅くなる。
「……え? ああ、ごめんごめん。セリカが綺麗で見惚れてたんだ。」
率直に伝えてしまう俺。
「ふえ? ……なな、何言ってるんですかあああ!」
セリカは見る見るうちに耳まで真っ赤にしてそっぽを向いてしまう。
「だってほんとの事なんだもん……」
俺はそっぽ向いたセリカの耳元で囁く。
「ひゃああっ!? ……も、もうっ!アルナくんってばぁ~!」
反応が可愛くてついつい構いたくなってしまう。
俺たちは完全に外野の事を忘れていた。
「まったくお前たちは……本当に付き合っていないんだよな?」
アメリアの憂鬱な声で我に返る俺とセリカ。
「「え??」」
アメリアの後ろには女性陣勢ぞろいだった。
「せ、セリカに春が来たってのは本当だったのね……良かったわ~」
安堵の表情を浮かべる女王陛下。
いつの間にか母親公認になってるし……っていうかタオル巻いてください
その他のエルフ達は羨ましそうな表情を浮かべている。俺とセリカは赤面する事しか出来なかった。
その後、俺たちは温泉に浸かっていた。
「まったく、人前でしかも家族の前でいちゃつくとは流石に思わなかったぞ。」
「ついに大人の階段を登るのねっ」
姉と母。テンション違いすぎるだろ。
「そういえば女王陛下? お名前を聞いておりませんでしたので、教えていただけませんか?」
「ああ、まだ名乗ってなかったね。私はオルター=ディア=フォレスタ。オルターでいいからね。」
あれ? セリカと名字が違う気が……
「わ、分かりました。オルターさ――」
「呼び捨てで構わないよ。あと敬語も公式の場以外では使わないでね?気を遣うのそんなに好きじゃないんだ。」
「わ、分かった……オルター……」
言う事を聞いた俺に対しとても嬉しそうにする。
「うん、よろしい。それでさ君はフォレスタを救ってくれるとアメリアから聞いたんだが本当かい??」
「ええ、俺は古代魔法が使えますし、魔法も創ることも出来ますから役に立てると思って……」
「見返りには何を求めるんだい?」
政治的な目をするオルター。
「魔法使用時の魔力ポーション代と俺個人のフォレスタとの友好関係を作れればいいなって思ってます。」
皆呆然としている。
なんかおかしいこと言ったかな??
「そ、そんなことでいいのかい? オルターの言葉に被せるように俺は言う。
「人を助けるのに理由は必要ですか?? 俺が助けたいと思った、それだけです。」
「「「「「………………」」」」」
全員が一斉に黙りこくった。
「信じられませんか??」
俺は一応尋ねてみる。
いきなりオルターが俺の前まで移動してきて頭を下げる。
「お母さま!?」
「「「「「女王陛下っ!?」」」」
「その温厚に甘えさせていただきたい、我が国を救ってくれ……」
そこには一人の国王としての責務を全うしてきたとは思えない弱弱しい姿だった。
憔悴しきっていたんだな……
「任せてください……なんか暗い雰囲気になってしまいましたし、結構湯に浸かれたので俺はそろそろ出ますね。」
皆も俺と同じようで一斉に移動する。
ちょっとぉ! 脱衣所は一つしかないんですけど……めんどくさいから早く着替えて出よう……
俺はすぐに体を拭き始め髪に魔法をかける。
「【乾燥】」
無属性魔法【乾燥】
名前の通り対象を乾燥させる魔法で最近俺が創った魔法で髪を乾かすためだけに考えたのだ。
俺の髪に爽やかな暖かい風が通ったと思うと一瞬で乾く。
超楽だあこれ、創ってよかったあ……
俺が感慨にふけっていると多数の見つめる視線が……
「え? どうしたの、皆……」
ぎらつく視線に若干引き気味に聞く。
「「「「それ教えてっ!!」」」」
「は、はいぃぃ~……」
やはり女性はこういうのには敏感なのだと改めて思う。
そのあと指定された部屋に行く俺は途中で何やら嫌な気配を感じ取る。
「【探知】にも反応はないのに……気のせいか?」
俺は結構嫌な予感が当たるので一応対策を講じておく。【収納魔法】に入っている国王に渡された鉄の塊を部屋で取り出しあるモノを徹夜で作るのだった。
っていうか国王には感謝だな、こんなものまで渡してくれるなんて。
俺たちはまだ気が付いていないのであった、新たな災厄がフォレスタに近づいていることを。




