第30話
「私たち姉妹はこの国フォレスタの王族であり私は次期国王なのだ。」
「そうだと思ったよ。」
驚くことなく俺は淡々と言う。
そんな言葉に驚愕の表情を浮かべる全員。
そんなに驚くことかな??
「どの辺から気づいていたんですか??」
セリカは特に気にすることなく俺にその理由を聞いてくる。
「うーん、そうだな。最初におかしいと思ったのはセリカが【収納魔法】から『転移水晶』を取り出したときかな。」
どうしてそれが答えに繋がるんだという表情をしているので俺は加えて言う。
「Sランクのアイテムを簡単に人前に出せるわけがないだろう? 一介の冒険者に持たせられるはずがない。そこから推測し俺はエルフの高位に就く家柄だと考えてたけど、まさか王女だったとは……」
「ただそれだけで分かった訳じゃないだろう?」
我に返ったアメリアも尋ねてくる。
「もちろんだよ、さっきセリカはそこのおばあさんをおばあ様って言ってたでしょ?しかもおばあさんは俺の正体っていうか名字を出してもさほど驚かなかったし平伏しようとしなかったし」
「そういう事ね。いくら他国とはいえ公爵の位には流石に平伏せざるを得ないと思うし……」
アメリアは納得してしまう。
そんなに筋は通ってないと思うけどまあいっか。
まだ俺は言いたいことがあるのでついでに言わせてもらう。
「あと、ここにいるんでしょう?? 王様……」
おばあさんはびっくりした表情で
「……抜け目がない子だねぇ……呼んでるよ、オルター」
おばあさんがそう言うと2階から女性のエルフが下りてくるが、纏っている雰囲気がまるで違う。
全てを圧倒するような美貌に俺は息を呑む。
造形されたように整った顔に翡翠色の瞳、黄金に輝く金髪。
神に創られたようなエルフだった。
そして何と言ってもフォレスタの王は女性だったのだ。哨戒隊とセリカ、アメリアは平伏するが、俺はそのまま頭を上げていた。
そんな俺の不遜な態度に反応もせずに口を開く。
「いつから気が付いていたなんて野暮ですね。」
俺は新しい魔法、探知を俺の周囲に使っていたのだ。使用者を中心に波状に広がる俺の魔力に女王は気が付いていたようだ。
そこで俺は平伏した。
「貴国で勝手な魔法の使用に突然の来訪をお許しください、フォレスタ女王陛下。」
「別に構いませんよ、公式の場ではありませんのでセリカやアメリアと同じように接してくれれば嬉しいです。この国の英雄の息子なのですからもっと堂々としていただいてもいいのですよ?」
いたずらっ子のようにウィンクをしながら俺にそう言ってくる。
この人いったい何歳なんだよ……美貌に反してあどけなさが出てるし……
「御冗談を。私は確かにアスノ=アルヴア-トの息子ではありますが私は何もしていませんのでそのような態度はお門違いだと思いますゆえに……」
俺は頑なな態度をとる。
くすりと笑う姿に釘づけになる俺。
「ふふっ……ご謙遜を、まったく親子とは似るものなのですね。」
「父もこのように仰ったのですか?」
「そうですよ、災厄がこの国に襲った時に一番功績を残したのが彼だったのですが、褒美を与えると言っても受け取らずに私に言ったのですよ。
『私はクレトリアより派遣された一介の兵士に過ぎません故にそのような物は受け取れません、
このような老骨よりもこれからを担う若者たちにお与えください。』なんて言ってましたよ。」
全く、父さんらしいな。
「クレトリアと言えば、ノワール君から手紙が来てたんだよね。えっと……アルナくんがもし来たら歓迎して欲しい、言っとくと彼は我が国において最強の矛だ。
くれぐれも喧嘩は吹っ掛けないでよ?? 国が滅んでも文句は言えないからね。っていう脅し文句付きで来たんだけど……」
「本当に申し訳ありません。しかしその手紙に書いてあることは出来ないこともないと思います。私はまだ全力を出したことがありませんので分かりかねますが……」
アメリアはオーガ戦の事を言っているのか大声でアルナに聞く。
「え? あれで全力じゃなかったのか??」
あれで全力なんて心外だなあ
「あれ? 言ってなかったっけ、俺はあの時のオーガは1割しか出してないから。」
驚きに飲み込まれるアメリア。
「は?? あれで1割っ!?」
俺とアメリアの会話を聞いていた哨戒隊のメンバーも驚いている。
あっ、と何かを思い出したようにセリカが言う。
「前にオークジェネラル2体に襲われた時は何割だったんですか?」
「「「「「オークジェネラルっ!?」」」」」
その場にいる全員が叫ぶ。
え? 何ですか?
「んーあの時は2割強かな、首吹っ飛ばせばどうせ死ぬから……」
「「「「「それがおかしいっ!!」」」」」
ええ……
「何がおかしいの?? あんなのただの上位種じゃん?」
ご丁寧にも女王陛下がわざわざ教えてくれた。
「オーガジェネラルとはオーガの最上位、オーガキングの次の上位種であり強さ的にはだいたいAランクですね。」
「アルナくんは【魔力剣】で首飛ばしてましたもんね、その時のアルナくん恐ろしいでは伝わらないほど凄い殺気を放ってましたし……私も腰が抜けちゃいましたし。」
あのセリカでも恐れる殺気とは……絶対に敵に回してはいけないと哨戒隊のメンバーはオーガの時に見てたのでそう思うのだった。
「お母さま、アルナの言う事は本当です。私はこの者の戦う姿と戦闘スタイルからこの国に勝てる者はいないと断言できます。」
アメリアがそういう風に言うと女王陛下は、悩む姿を見せる。
だがすぐにそんな和やかな雰囲気は過ぎ去る。女王陛下が威圧を飛ばしながら口調も変え尋ねてくる。
「アルナ=アルヴア-ト、そなたは我らが敵対行動をとらない限り我らに攻撃等をしないと誓えるか?」
俺が攻撃すればこの国は負けるとアメリアやセリカ、俺の言葉から読み取っただろうに。
「アルヴアートの名に誓ってお誓いいたします。」
口頭によるものだが俺は絶対に守るつもりだ。
「それは良かった。じゃあ取り敢えず皆でお風呂にでも行きましょうか。」
いきなりそんな爆弾発言をする女王陛下。
え?? もも、もちろん別だよね?
俺はおばあさんの方を向くと俺の気持ちを察してくれたのか教えてくれる。
「ここは混浴しかないからね、ゆっくり入るといい。」
全然察してくれないじゃないかあああ!
ガシッと俺の右腕を取るセリカに左腕を取る女王陛下。
俺は思った。これは逃げられないやつだ。
ゆっくりお風呂入らせてくださあああい!




