第27話
「すぐにいこうとは言ったけど、ここからどれくらい距離あるの??」
勢いで言った部分もあって正直行き方とか何も考えてなかったわ。
「移動とかは気にしなくて大丈夫ですよ、おかあ……女王から『転移水晶』っていうの預かってるんで。」
おっ? なんだそれ……『転移水晶』??
俺の心を読んだかのようにセリカが説明してくれる。
「えっとですね……『転移水晶』はSランク級アイテムで今見つかっているアイテムで最も高価な代物ですね。使用者の言ったことがある場所ならどれだけの距離があろうと一瞬で移動ができます。使い捨てっていうのが難点なんですけどね」
最も高価!?
「ええ!? そ、そんなアイテム使っていいの??」
「構わないですよ、お父さんには古代魔法を使う者が見つかったらすぐに使えって言われましたから。」
「そ、そうなんだね………。そういえばさ、魔力回復用の道具とかってないの?」
「魔力ポーションのことですか?」
「そうそう! フォレスタにある??」
「もちろんですよ、魔導士には必須のアイテムですからね。アルナ君には無用な代物かもしれないですけど……」
「いや……[回復魔法][状態回復魔法][再生]は俺の創った創造魔法だからまだ効率化とか出来てないからかなり魔力を消費するんだよね。俺の魔力保有量でも多分キツイと思う。」
「うーん……エルフも魔導士は多いので恐らくたくさんあると思うので大丈夫だと思います。」
それなら安心だね。
「じゃあそろそろ移動しよう。あ、バハムートごめんね、呼んでおいて……」
「いいや、気にしなくていいよ。どうせこれからも厄介事に巻き込まれていくだろうし……」
それだけ言うと天界に還っていった。
厄介事って、俺は関わりたくないんだけどね?
「じゃあそろそろ行こうよ。」
「そ、そうですね……」
【収納魔法】からセリカは淡い海のように透き通る石を取り出す。陽の光に反射してキラキラ光っている。
「それが『転移水晶』??」
「そうです! 綺麗ですよねこれ」
地球で言うダイヤモンドのようだ。写真でしか見たことないけど……
「全くその通りだよ、これが使い捨てって勿体無いなぁ」
「ほんとですよねぇ~……じゃあ行きますよ? ちょっと失礼しますね。」
断りを入れてから俺の左手を握る。心なしかすこし嬉しそうである。
やばい……手汗が……
「ちょっ、これどういう――――」
「転移・フォレスタ!」
俺の疑問をかき消すように言うと、水晶が割れる。すると粉々に割れた破片が俺たち2人を囲むように広がる。次の瞬間、俺たちを包んだ破片が光り始め視界を白く染めたので、目を塞ぐ。
自分の体が宙に浮く感覚がすると思ったら重力に引かれ落ちる感覚に巻き込まれる。俺は目を開けるとそこはさっきの森の雰囲気とは違う場所だった。
「あの、そろそろ、握った手を離してもらっていいですか?」
俺はどうやら強く握ってしまっていたらしい。
「え? あ! ごめんごめん!」
「いえ。でも、その……本当はもう少し繋いでたかったですけど……」
ごにょごにょ呟きながら両手の指を交差させてもじもじしていた。
セリカは名残惜しそうな顔をしてるからだいたい予想はつくけどね
「ここから少し歩くので付いてきてください。」
「……え? う、うん。わ、わかった……」
森の雰囲気に当てられた俺は少し反応が遅れる。
10分くらい森の中を歩いていくと、俺は不穏な気配を感じ取る。若干殺気立っている反応が一つ。
流石に二度もおんなじミスはしたくないし。
セリカは何も言わずに険しい顔をしている。気配に気づいていないようだ。しかも何やら焦っている。
分からなくはないのだがこういう時こそ冷静にならないと……
左右の前方から何やら風を切り裂くような音がする。攻撃されているようだ。次の瞬間、5本ほどの矢が飛んでくる。
俺とセリカには5mほどの距離があったのでセリカには被害はないだろう。俺は頭に向かってきた2本の矢を両手で掴み、残りの3本は器用に体を捻って避ける。
甘いな、この後追撃するくらいの時間はあるだろうに……
「すす、ストォーーップ!!」
セリカが慌てて矢の飛んできた方向に対して叫び始める。すると10人のエルフが魔法を待機させ、他の10人は弓を構えてこちらを警戒し歩いて姿を表す。
エルフってほんとに美形が多いんだな……
そんな感想を思っていたら1人の女性のエルフがセリカに向かって飛び出し、抱き締める。
うわぁぁぁ……絵になるね。
他のエルフは俺を警戒しているのか微動だにせず構えている。しかしアルナから見たら隙だらけである。
そんな身構えなくても……こっちに殺す気があるならとっくにやってるのに。
「せ、セリカっ! 大丈夫かっ!? そいつに何もされてないよな!」
このエルフ、女性なのに男勝りな性格してるなぁ
セリカはブンブンと首を横にふって
「うわっぷ……姉さん、何もされるも私が連れてきたんだよ?」
姉なのかい!
その姉さんが俺の方を向き、目で促される。
「そうです、はい。連れてこられました。」
俺は両手を挙げて降参の意思表示を示す。
「な、なんてことだ……と言うことは、もしかして古代魔法が使えるというのか!?」
「そうだよ、私の任務は古代魔法の使い手を探して連れて帰ることだから」
エリカは俺に顔を見せるように目で語っていたのでしょうがなく言われる通りにする。
「クレトリア王国国王より《古代を司る者》の称号を頂いたクレトリア王国筆頭公爵アルヴアート家次男アルナ=アルヴアートです」
俺はフードをとり、顔を晒す。艶のある長い黒髪がひらりと舞う。
鬱陶しいなぁ、もう……
全員が面を食らった顔をして平伏しようとするのを慌てて俺は止める。
「ちょっと!? そういうのはいいから! やめて!」
「で、ですが……我が国の英雄の息子様であり、これから助けて頂きますのに無遠慮にも攻撃をしてしまいました……」
「いいさ、それが君達の仕事なんでしょ? 普通に人族が入ってきたらびっくりするもんね」
俺だって知らない人がいきなり家に入ろうとしたら止めるし。
「それはそれとして、俺は正式な使者じゃないけど、取り敢えずこの国の国王様に会えないかな?」
流石に国内で他国の人族が無許可でいきなり魔法発動させたら国家間の問題になりかねないし……
「で、では、まず国の中へ御案内致します。」
「正式な使者じゃないって言ったでしょ?? 俺に敬語は要らないから、絶対だよ?」
「わ、わかり……わかった、アルナ様」
「様もやめてって、仰々しいし……」
わがままだったかな?
「わかったよ、アルナ」
おお、姉さま適応早いな。
「うん、他の皆にもそう言っといてね」
「まかせろ!」
やっぱりタメ口の方が気楽でいいな。
そう言って俺は総勢20人の哨戒隊に連れられてフォレスタに入っていった。
初のエルフの国! 楽しみだなぁ……
自分が来た理由をちょっとばかし忘れているアルナだった……




