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第26話

「じゃあいくよ? [再生(リヴァイヴ)]発動っ!」


 俺は全魔力の3分の1ほどでダリアの体を俺の魔力が包み込む。身体が僅かに光ったと思うと下半身の切断された脚に向かって太陽のような温かな光が集まる。


「う、変な感じ……」

「そりゃそうさ、君の身体を無理矢理再構成してるからね………」


 切断された脚の細胞を回復させ、俺の魔力の補助によって彼女自身の身体回復を促している。まあ、言ってしまうと元の脚のように動かせる義足なのだが……それはこれから改良していこう。


 それでも失敗できない、今後の彼女の人生が掛かっているのだから……


「再構成だって??」

「どんな魔法なの?」

「ダメだって、約束しただろ?」


 おお、いい子たちじゃないか。約束を守れるとは。


 そのまま魔力で包み込むこと10分。最後の仕上げだと俺は最大まで魔力を濃くする。


 うーん、少し難しいかも。毎日魔力練成の練習をしないとな。


 そんな俺の思いとは裏腹に皆は驚いている。ここまで魔力に精通した者などいないからだ。

 アルナは勿論そんな事は知らないが……。


 うーん、ここまで魔力使うと疲れるな……


 刹那、集まっていた光が閃光のようにこの場を白に染めた。閃光が止むと皆ダリアの方を向く。


「「「「「ええ!」」」」」


 ん?? どうしたんだい?


 全員の目の先には切断されたはずの脚があったのだ。


「うそっ!? 脚が! 脚があるっ!」


 興奮冷めやらぬようだが、それが引き金になり、大声で泣き始める。


「………よがっだぁぁ!うわぁぁぁあん!」

 もう一人の女性がダリアを抱き締めている。他の3人も同様に涙を流していた。


「そうだ、この事は絶対に誰にも話さないでね??」


 俺は口元に右手の人指し指を置き、ウィンクをする。それを見た男性の2人は顔を真っ赤にしている。


 俺は男だからな、お前らのその邪な感情の矛先は俺に向けないでくれよ。



 ダリアがだんだん落ち着いてきたようで聞いてきた。

「それで、貴方のお名前は――」


 ああ、名前言ってなかったっけ? 名乗るとめんどい事になりそうだけど、フード外れちゃってるから嘘つけないじゃん……しょうがない。


「ああ、俺はアルナ=アルヴアートだ。」


 やはりと言うべきか、平伏し始める4人の冒険者。

「「「「すいませんでしたぁぁあ!」」」」


 やっぱりこのパターンか~。


「いいからいいから、俺はそう言うの嫌いなんだ。不敬罪とかしないから安心して。」

 ほっと安堵の溜息をつく4人。


「アルナくんってそんなに有名人なの?」

 首を傾げ、俺に聞いてくるセリカ。


 エルフだから俺の事は流石に知らないよね。


「えっと、俺は――」


 俺の言葉に被せるように興奮したダリアじゃないもう1人の女性冒険者が言う。

「アルナ様は、この国の筆頭公爵家の次男様で最強部隊『バハムート』を指揮する隊長様ですよ!」


 この人の熱気に気圧される俺。


「まあ簡単に言えばこの国の軍部の実権を握ってる感じ。」

 こんな軽い感じで言う事ではないのだが……


 セリカの顔色がどんどん真っ青になっていく。

「わ、私は、す、凄い人に結婚を申し込んじゃったんですね………」


 あ、そっちね、っていうか神の使徒に結婚申し込んでる時点でだいぶ凄い事してると思うけど……?


「あ、そうだ。俺が東の方向に向かっていることは出来るだけ内緒にしてね??」


 4人は頷く。


「じゃあ、この辺で。また会う機会があったらよろしくね~」

「はいっ!」

「本当にありがとうございましたっ!」


 近くの木からゴソゴソと物音がしたが、それに気づく者はいなかった。



 4人組の冒険者たちと分かれてから数分後。

召喚(サモン)、神龍バハムート」


 俺は魔力を結構消費していたので魔法陣が展開されるだけのシンプルな召喚になってしまった。


 召喚されたバハムートは不機嫌そうな声で言う。

「いやあ、あそこで君の新しい古代魔法(スキル)使ってるところ見られてたの気が付いた?」

「全然気が付きませんでした、気配がしなかったので……」


 どこにいたんだ……もしかして木陰でコソコソ動いてた奴か??


「他国の諜報員がいたみたいだよ? しかもかなり魔法適性が高い。」

「ここからだとレイザルですかね?」


 レイザルはアウストラリスと大河を挟んだ向こう側だし。


「その可能性が高いね、君はもうすこし自重した方がいい。いくら人を助けるにしてもね?」

「す、すいません。」


 若干浮かれてた部分はあったかもしれない。


「お説教もこの辺にしといて……セリカちゃん、君は、アルナくんに何か言いたい事があったんじゃないか?」


「え? あ、ああ……はい……」

 いきなり話を振られたセリカは狼狽える。


「ん? どうしたの??」


 なんだかソワソワして落ち着かない様子である。

「長くなる話ですけどいいですか?」


「も、もちろん……」


 真面目な話を振られ俺は動揺する。一呼吸置いてからセリカは話を切り出す。


「私の種族、エルフはクレトリア王国の遥か北の方にある森の中に住んでいます。

 エルフの国『フォレスタ』。そこにはある一定の周期でオーガとオークの大量発生という災厄が起きるんです。エルフは基本的に戦闘能力は有していません。ただ戦士と呼ばれる者は国の防人として戦闘特化のエルフになります。

 3ヵ月ほど前にその災厄が私たちの国を襲ったんです。私の家族は全員戦士の一族だったのでオークやオーガに殺されたり、辱められたりはなかったんですけど……

 エルフの戦士200人対3000体のオークとオーガではいくらモンスターがCランク相当だとしても戦闘に特化していようが限界があります。

 ですがクレトリア王国との友好条約のおかげか、救援要請を送るとすぐに駆け付けてくれて、お互いに協力して3000体のモンスターを駆逐しました。おかげで最小限に被害を留める事が出来ましたが……多数の被害がでてしまい、私の家族は……」


「もういい! もういいよ!」

 俺はつらそうに言うセリカの次のセリフに何が来るかが予想ついたので言葉を被せるようにいう。


 俺の言葉に疑問の表情を浮かべるセリカ。

「え? 死んではいませんよ??」


 あれ!? マジか、めっちゃ恥ずかしいやつじゃん……


「私の家族は皆無事だったんですけど今までで一番くらいの大量発生だったので戦士はもちろん一般市民の被害が……今でも怪我や当時のトラウマから立ち直れない者がいて……」

「俺にフォレスタの復興の手伝いをしてほしいって感じかな??」

 俺は恐る恐る聞いた。


「はい、古代魔法なら皆を助けられると思って……使える人を探してたんです……お願いできませんか??」

「うん、いいよ~。じゃあいこっか」


 俺は今すぐ行こうと促すが、どうやら俺の反応が予想外だったのかセリカはポカンと口を開けたまま呆けている。


「そんな即答……何も見返りを用意していないですし……」

「人助けに見返りなんていらない、俺が助けたいと思ったから助ける。人助けに理由はいる?」


 俺はセリカの潤んだ優しげな瞳を見つめる。


「あ、ありがとう……ございま……す……」

 目には涙が浮かんでいる。


「ほら、いこうよ。手遅れになる人もいるかもしれないし」


 エルフの国ってのも気になるし!


 涙をゴシゴシと袖で拭うとセリカは真剣だが笑顔で俺に聞いてくる。

「は、はいっ! じゃあ改めて私の故郷を……フォレスタを救ってくださいませんか?」


「ああ! もちろんだ!」



 ここからアルナの大冒険が始まるのだった。

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