第25話
「アルナくんの本当の正体はクレトリア王国に舞い降りた神の使徒なんだ。」
バハムートはそう言って話を切り出した。
「はい? あの国中で噂になってるあの使徒様ですか?」
え? 俺が知らないだけで結構有名人なの?
「そう、この国の神として崇められているシスティーンの召喚によって顕現したのさ」
「マジですか?」
「マジマジ」
なんだこのバカみたいな会話は……
「そうだ、アルナくん。ステータス見せてあげて」
それが1番手っ取り早いってか?
「うん、分かった。ステータス・オープン」
セリカに見えるように展開する。
ステータス
名前:アルナ=アルヴアート 種族:人間!?
称号:転生者、世界を統べる者、世界の救世主、神の使徒、死神
レベル:289
HP:197863
MP:146598
STA:2657
VIT:1890
INT:3983
MND:2095
AGI:5479
DEX:2672
【魔法適正】全属性
【召喚魔法】神システィーン、神龍バハムート、○○○
【スキル】
自動回復、魔法破壊、魔法障壁、精神感応、身体強化、鑑定、重力増加、創造、仮想空間化、記憶回想、偽装、付与、思考加速、並行思考、分身、魔力回復活性化、変身、感覚共有etc…
【創造魔法】
光線、回復魔法、状態回復魔法
【神の加護】
獲得経験値倍増化《神システィーン》
魔法龍属性付与化《神龍バハムート》
「……」
セリカはポカンと口を開けてただただ呆然と立ち尽くしている。
ま、まあこうなるよね??
「称号にもある通りアルナくんは正真正銘の神の使徒だよ。まあ一般人が神なんて召喚できないけどね。神の使徒の称号のせいでステータスがおかしくなってるって思ってくれていいからね。」
バハムートはこの異常な数値のステータスを称号のせいにした。
その方法は思いつかなかったわ……ナイスっ!
「ひ、ひとつだけ……ひとつだけいいですか??」
恐る恐る切り出すセリカ。
「もちろんだよ~」
「俺に答えられる範囲でならいいよ」
2人の返事を聞いたセリカは意を決した顔をして言う。
「か、神の使徒でも……けけ、結婚とかって自由ですよねっ!?」
んんっ?? はいっ? 今なんて?
バハムートもこの質問には驚き呆れている。
「ま、まあ。使徒とはいえ人間だからね、その辺はアルナくん次第じゃないかな?」
曖昧な返事を返す。
ちょっとお!? 俺に丸投げしたでしょ!
「やった……!」
小さくガッツポーズをしているセリカ。
「その話はまた今度……ん……?」
遠くから慌ただしい足音と複数の殺気を感じ取る。
「おいっ! 何か来るぞっ!」
臨戦態勢をとる、セリカもそれに続き腰に差してある細剣を抜く。
バハムートは神界に戻ったようだ、見られたら大変だし。
「たた、助けてぇ~!」
「うわあああ!?」
すぐそこにある繁みから飛び出してくる冒険者らしき4人組。だが大怪我をしているのか、2人に背負われている女性は酷く衰弱している。
「た、助けてください、な、仲間がっ!」
女性冒険者が俺に縋り付いてくる。
まったく、この世界はなんで回復魔法がないんだよ。
だが男の冒険者が叫ぶ。
「そそ、そこまでオーク達が、オークジェネラルもいるんだ! 早く逃げないと!」
おお、オークだって! 異世界っぽいね。
そんな暢気なこと考えているとは思わない冒険者たち。心なしか、セリカも腰が引けているように見える。
「あ、あ、アルナくん! 早く逃げましょう! Sランク級モンスターですよっ!? 勝てませんよ!」
なんだか混乱しているみたいだ。
っていうかそんな皆が大声で叫んだらここに……うーん、遅かったみたいだね。
「来ちゃったみたいだね?」
俺はそこまで脅威に感じないので平常通りだ。
4人組冒険者が走ってきた方から15体ほどのオークと2体のオークジェネラルが迫っていた。
「動くんじゃねえよ」
モンスターには言葉の意思疎通が出来ない筈なのだが、俺の発した冷徹な声を聞いて、そして今まで味わったことのない殺気を浴びさせられたせいかオーク達は行進を止めた。
「[創造]【魔大剣 ニーズヘッグ】」
魔力から愛剣を創り出す。俺は殺気をモンスターたちに向けているのでセリカを含めた5人はいつも通り……じゃなかった。
セリカ以外の4人が俺の創り出した剣を見て目を見開き興奮している。
「あの大剣ってさ……」
「ああ、もしかしてあの人…………」
俺はその質問? を無視して、迎撃すべく一歩目を踏み出す。その場にいた全員がそこまでしか見る事が出来なかった。
俺がいた場所を中心に爆音とともに嵐のような突風が巻き起こる。既にそこには誰もいなかった。
「あの人、どこに――」
誰かが呟いた声を遮るように重いナニカが連続で落ちる音がした。全員が音の鳴った方を見ると15体もいたオークの全ての首が飛んでいた。
そして返り血を浴びた仰々しい姿の大剣を持った少女が佇んでいた。
あれっ、フード外れてた?
俺は暢気にそんな事を考えていた。
艶のある綺麗な後頭部で束ねてある黒髪、整いすぎている顔。仰々しい大剣と相まってまるで死神のようだ。
「うーん、感触が軽すぎて良く分からん。」
そんな感想を漏らしている。
さあてあとはオークジェネラルか、俺の実験に最後まで付き合ってくれよ??
そんな思惑が伝わったのか、緑色の顔を怒りで真っ赤に染める。
「そんなに怒っても負けるのは君たちだからね?」
そうだ、早く怪我した子の治療しないと……
「[|創造]発動」
創造によって俺は前使っていた【魔刀 ミナカゲ】を10本生成する。
俺の周りに展開させ俺を守るように飛翔している。
「なんだあれ……」
「10本の同時操作なんて……」
ちょっと処理が大変だな。
「[並列思考]発動」
思考の処理を並列化して処理速度と俺のオーバーヒートを阻止する。
流石に俺の頭もショートするわ。っていうか傍から見たらファン〇ルだね。おっとこのへんで……
魔力の細かい使用によって剣を操る。本当の剣舞の様だった。少しも狂わない独特のリズムを刻みつつオークジェネラルの気力や腕など体の一部をことごとく刻んでいく。
やべえ、これ楽しいな。
新たな技能を無意識に身に着けてしまった。
今まで動かないと思ったら、ギリギリまで体力を温存していたようだ。
「「ギャアアアアァ!!」」
叫びながら俺ではなく怪我をしている女性や無事気味な3人の方へ突進していく。
「きゃああああ!」
「なんでだよお!」
ブチっとなにかが切れる音がする。それはセリカも聞こえていたようで俺の方を向いた途端青ざめる。
「え? あ、アルナくん??」
ガタガタと足が震え腰が引けるどころかその場に座り込んでしまう。
「それはやっちゃいけないぞ?
『我が利用するのは、自然を作りしエネルギー、我が力の源となりて穿て【光線】』」
俺は突っ込んでいくオーガジェネラル2体に向かって淡々とした抑揚、感情の籠っていない声で詠唱する。
右手に集まる大量の魔力。三重に重なり回転し始める魔法陣から眩い光と熱線が放たれる。
オークジェネラル2体を貫き、焼き尽くしたが辺り一面が焦土と化した。そんな光景を見た俺は我に返る。
あ、またやっちゃったなあ。完全に森林破壊だよね。俺たちがいる場所だけだからいっか。森自体はまだまだ広いし。
俺は無理やり開き直る。
「そうだ、怪我してる子は??」
「こ、ここです。ダリアはオークに脚を切断されちゃって……どうしたらいいのでしょうか!」
危険が一時的に去り、遂に涙を堪え切れなくなったもう一人の女性冒険者。
「大丈夫さ、君はダリアと言うのかい? よく痛みを意識を手放さずに我慢したね。」
俺は優しい言葉を掛けながら頭を優しく撫でる。この子も我慢の限界がきたのか泣き始めてしまう。
「はい……怖かったでず、いたかったでず……うう、うわああああん!」
「ごめん、俺たちが不甲斐ないばかりに…………」
「俺も守ってやれなくてごめんな……」
パーティーなのか2人の冒険者も悔恨の念に駆られる。その間に俺は新しい魔法を構築していた。
「今から君にある魔法をかけるけど、この魔法について絶対に詮索しない、他の人に吹聴しない事を約束できるかい??」
俺は真面目な顔になりだが優しい声で4人に聞く。4人は互いに目を合わせ頷くと、声を揃えて言う。
「「「「はい!」」」」
「よろしい、では掛けるね。痛かったら言ってね。」
「はい、よろしくお願いします。」
4人ともよくて痛みを完全に消すだけだと思っていた。だがそんな期待は裏切られるのだった、良い方に…………。




