第22話
「「さっきは申し訳ございませんでしたッ!」」
ギルドマスターと受付嬢が部屋から戻ってくるなりすぐに謝ってきた。ギルド内がざわざわと騒然とする。
「あの子有名な子なの?」
「え? 知らないよ~」
え? なんか謝られることしたっけ。
「え? なんか謝られるような事しました?」
純粋に疑問なんだが……
「あ、あの、貴方様のお名前は……」
ああ、そういう事ね。結局こうなるのか……
「ああ、自己紹介が遅れたね」
俺はフードを外し長い黒髪を晒す。
「「「「「「ああああああっ!」」」」」」
「俺の名前はアルナ=アルヴアートだ」
「わ、私は初対面にも関わらず、筆頭公爵次男様をお嬢さんなどと私は申し上げてしまいました、誠に申し訳ございませんでした。」
「ん? 不敬罪を気にしてるのかい??」
「ここにいる全員がきにしております。」
俺は権力かざすの嫌いなんだけどね?
「不敬罪なんてしないさ、もし君たちを不敬罪にするとしたらさっきのバカにこそするべきだろう?」
「仰る通りでございます。」
年上から敬語を使われるのってムズムズするなあ、それに初めての人だと余計に……
「じゃあ、不敬罪にしない代わりに一つだけいいかな?」
「我々に出来る事であれば何でも仰ってください。」
ギルドマスターは頬を引き攣らせながら俺に問いかけてくる。
そんな怖いことするつもりないんだけど。
「俺に対する敬語禁止ね」
ここにいる全員が呆然とする。
「へ? 俺なんか可笑しいこと言ったかな??」
「い、いえ、貴族の方々はいつも敬えとか仰いますので貴方は珍しいのです」
「ほら! 敬語になってるぞ! 敬語使ったら不敬罪にしちゃおっかな?」
ちょっと脅してみる。効果は抜群のようだ。
「そ、そんなぁ~わ、わかったよ? アルナくん?」
ギルマスが戸惑いながらタメ口で話しかけてくる。
「それでいいよ、みんなもよろしくね」
「「「「「うん!」」」」」
やればできるじゃないか!
「こ、これ。国王陛下推薦の書状なんだけど。渡してって言われたから。」
「「「「国王陛下の推薦状!?」」」」
そんなに驚くことなの??
「なんか、みんなのいる前で大声で読めって言ってたよ。」
「は、はぁ………。
『やあ、ギルドマスター。ノワールだ。目の前にはアルナ=アルヴアートがいるだろう?
きっと冒険者共々びっくりしているはずだ、そこで私からの推薦ということで彼を冒険者にしてやって欲しい。常識の分からないおバカさんだから多分なんか厄介ごとに巻き込まれただろ?
まあ、彼は優しいから君たちの不敬? とかも寛容なはずさ。
取り敢えず、大事にしたくないのでEランクからにしてやってくれ。頼んだ。』」
「「「「「………………」」」」」
沈黙が流れる。最初に口を開いたのはアルナ。
「どうしたの??」
だ、だってこんな重い沈黙に耐えられなかったし……
「Sランカーを倒した貴方をEランクにするのは私としては有り得ないと考えますが……」
ああ、そういう事ね。
「でも、冒険者には冒険者の規則やら暗黙の了解とかあるわけだし……そうだっ!」
この場にいる全員がどんなめんどくさいことを考えたのだろうと思った瞬間であった。
「俺を平民扱いで冒険者登録すれば――」
「「「「「「いやいやいや!」」」」」」
なんでさ、っていうかこの世界の人ハモりすぎじゃね??
「だったら2枚持てばいいんじゃ??」
「「「「「「それだーーー!」」」」」」
迫力がやばいな、それにちゃんと敬語抜けてるじゃん
「じゃあそういうことでギルドマスターよろしくね」
もうなんだかめんどくさくなっちゃったわ
「りょ、了解です。」
数分後ギルドカードを2枚持って奥から出てくるギルドマスター。
「登録の方は終わりました。誠に勝手ながら貴族用のカードはBランクになっておりますが、厄介事に巻き込まれた際に役に立つと思いますので、どうか大目に見てください。」
「いやいや、善意でやってくれたことに文句を言うほどクソ野郎ではないと思っているから、ありがと。」
「では、規則についてお話しますね。えっとですね――――」
話長かった…………
要約すると、ギルドは基本的に中立である。冒険者同士のいざこざには介入しない。
定期的に(一月に一回以上)依頼をこなさないと勝手に登録が抹消される。
登録が抹消されると二度と再登録等は不可能になる。
一般市民に対する狼藉や暴行、殺人や窃盗等も登録抹消の対象になる。
(依頼による殺害行為は許されている)
あれ、要約しても長かったわ。
「ちょっと、聞いてます??」
ギルマスが怪訝な顔をして俺に問いかける。
「ん? 聞いてるさ。じゃあ俺は明日から旅に出るからまた今度ね」
「ちょっと待ってくださいっ!」
俺はギルドを去ろうとしたところに引き留める声が聞こえたので振り返るとそこにはフードを被っていたが女性と分かる声音を持つ冒険者がいた。
「旅に出るって言ってましたよね? もし良かったら私も連れて行ってください!」
俺だけにしか見えないようにフードを少しだけ上げる。
見惚れてしまった。
ティーナのように神々しくはないが雰囲気が似ており腰まで伸びた艶やかな金髪に整っている顔、胸は寂しい感じだが………なんと言っても耳が長い――――いわゆるエルフだったのだ。
「あ、アルナくん??」
その女性はちょっとだけ頬を染めて聞いてくる。
この人マジ俺のタイプかも……
「え? ……ああ、ごめんね。それでなんだっけ」
「私を一緒に連れて行ってください!」
この人となら楽しそうだな。即決だねっ!
「いいよ、じゃあ明日王都の東門に8時くらいに集合でよろしくね」
「ええ!? いいんですか!?」
なんで君が驚いているのさ。
「君がついてきたいといったんじゃないか、俺は構わないよ。一人旅より楽しいだろうしね」
「私が言ったのにどうも展開が早い気が……ではよろしくお願いします。また明日会いましょう。」
独り言の声が大きい子だな、まあ会話には困らなそうだな
「うん、また明日ね」
こうして生涯を共にするアルナの伴侶となる女性、エルフとの出会いだったのだ。
「あ、名前聞くの忘れてた。」
「名乗るの忘れてた。」
この2人の旅は大丈夫なのだろうか……
やっとアルナくん旅に出ますね!
しかも美人エルフと一緒なんて羨ましい!
次回も宜しくお願いします!




