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第19話

視点が親父のアスノに変わります。

 ―――――――――――――――――――――――――


 アスノとエリカ、オーディアは魔導士どもと対峙していた。


「オーディア?精霊は力を貸してくれそうか??」

「うんっ! いつでも大丈夫だってさ!」


 よし、向こうもなにやら仕掛けを施してる、ぶっ壊してやるか。


 精霊行使にはある程度時間がかかるのだった。その時間を稼ぐべくアスノとセリカは詠唱を開始した。

「エリカ、いつものでいくぞ。」

「わかったわ」


「「[限界突破(オーバーリミット)]」」


 通常の限界突破(オーバーリミット)は使用者の身体能力や魔力量を一時的に上昇させるだけだが、《剣聖(ソードエスカトル)》と《戦乙女(ワルキューレ)》は違う使い方を模索し続け、ある可能性を見つけたのだった。


 使用者複数時の効果相乗化である。一般的な限界突破(オーバーリミット)は2倍程度しか効果はでない。しかし使用者の隣でまた新しく限界突破(オーバーリミット)を使うことで効果が累乗させるという規則性を見つけたのだ。

 これは冒険者だった時に強敵相手に多用した最終手段である。


「ここまでしないと勝てなさそうだしな」

「まったくね、ここまで体が衰えてるとは思わなかったわ」


 2人は腰に差してある剣を引き抜く。

 アスノが持つのは片手用直剣であり昔の愛剣【魔剣 アーカディア】炎を模したような真っ赤な刀身で火属性の魔法が付与されている。

 エリカが持つのは細剣(レイピア)【魔剣 ブリュンヒルド】氷のように透き通った刀身で水属性の魔法が付与されている。


 まるで非対称的な2本の剣だが使用者たちの卓越な才能によって最強の魔剣として名を馳せた。


 観客は武器の最強を目の前にして恍惚とした表情でいるが、2人の雰囲気が優しいものから殺気に変わると気を失うものまでいる。


 圧倒的である。


「まさに最強の名にふさわしいな、あの2人は……」

 アリステアは自分の二つ名を快く受け取った訳ではなかった。


「まあ、まさか同じパーティーメンバーと闘うことになるとはな……」

 アリステア自身はここでこの2人に勝つことで《最強(ディフィニット)》の名を確固たる地位にする。


 そんな思いを胸に

「全力で行く……!」


「私もやるっ!」

「私も新しい魔法を試すいい機会だ!」

「後方援助は任せろっ!」

「絶対勝つッ!」


 5人ともこの場が爆発しそうなほどの魔力を一人一人が持っている。魔力の嵐が轟音とともに巻き起こる。


「面白い……!」

「これは手加減できなさそうね……」


「『我が求むはこの世の焦土、自らが糧になり我が敵を薙ぎ払えッ! 【爆破(ブラスト)】ッ!』」


 初手から全力の超級魔法【爆破(ブラスト)】を放つ。着弾して爆発が起こると思いきや、魔法が2つに、いや4つに斬られた。アルナがやった絶技(古代魔法(スキル))『魔法破壊(マジックブレイク)』を再現したのだ。あの2人は……。


「まったく、あいつらのポテンシャルは計り知れないな!」

「まさか、そんなことがありえるのか……!?」


「だったら……『すべてを焼き尽くす紅蓮の炎よ、我が障壁を為す敵を殲滅せよ【爆発(エクスプロ―ジョン)】ッ!』」

 キャレックはこの世にない新しい魔法【爆発(エクスプロージョン)】を創ったらしい。【爆破(ブラスト)】よりも10倍は破壊力のあるものだった。しかも放ったのはこの中でも格段に保有魔力量が多い《戦艦(バトルシップ)》ヴェルディ=ラガルドだった。

 耳を塞いでも耳が弾け飛びそうな轟音に触れたもの全てを溶かし尽くしそうな熱風、土が舞い上がり土煙も会場を包み込んだ。

 通常の魔法でない創造魔法にこの国一番の魔力量の者が放った、この場のすべての者が魔導士達の勝利を確信した。



 ――だが、煙がはれるとそこには精霊魔法による魔法障壁が展開され無傷な3人がいた。


「嘘……」

「あれを防がれるなんて……」


 キャレックとヴェルディは絶句していた。


 そんな中マークスは極限まで魔力を溜めていた……

「『撃ち抜け【魔力貫通弾(スペルペネトレイト)】』ッ!」

 魔力障壁に向かって一直線に飛んでいく。


 魔力貫通弾はマークスが【複属性矢(マルチアロー)】を独自改変(アレンジ)した魔法で、

 名前から分かると通り貫通に秀ででおりどんな障壁でも込める魔力量により貫通する事が出来る。


 精霊魔法の魔力障壁でも普通の魔力障壁とは基本的には変わらない……マークスは貫通出来ると確信した。しかしその確信は予想外の事態で覆させられる。


 《剣聖(ソードエスカトル)》の無造作な剣の薙ぎ払いによって打ち消されたのだ。


「マジかよ……!」

「驚いている場合かしら??」


 背後から声がしたと振り向きざまに【複属性矢(マルチアロー)】を放とうとするが


「遅いわ」

 そんな声を聴いた途端に首に衝撃が走る。


「がっ……!」

 そこで意識が途切れ、マークスは場外へ弾き出された。


「いつの間に……!」


「貴方たちがゆっくり過ぎなのよ?」

 《戦乙女(ワルキューレ)》の戦闘スタイルは高速移動による迫撃である。魔導士相手には休憩や詠唱をさせない、これが彼女の信条なのだ。


 そんなおどけたように言うと、詠唱しながら目にも止まらぬ速さで接近してくる。


「『ブリュンヒルドの名の下に、跪け。【絶対零度(アブソリュート・ゼロ)】」


【魔剣 ブリュンヒルド】の固有魔法(ネイティヴ)、【絶対零度(アブソリュート・ゼロ)】。

 それは全てを凍り尽くすただそれだけの魔法なのだが、使用者の剣の練度や保有魔力量に応じて比例するように威力が上昇していく。

 彼女、《戦乙女(ワルキューレ)》は双方とも特に秀でている為、威力に関しては超級魔法を超えるかもしれない。


 魔法を発動させようとしようとしている《戦乙女(ワルキューレ)》にキャレックは邪魔すべく

「させないっ!……『古の龍よ我が力となれ、轟け【龍の息吹(ドラゴンブレス)】』」

 を放つ。


 キャレック考案最上級広範囲殲滅魔法【龍の息吹(ドラゴンブレス)】。名から分かるように龍の息吹からアイデアを貰い、キャレックが魔法に改良した火・光属性が付与されている。



「こんなのもつくってたの……まあ避けなくていいかな」


「精霊さんっ! 母さんを守って!」

 後方支援として《精霊に好かれし者(スピリッター)》がいたのだ。オーディアの言うとおりに精霊たちは《戦乙女(ワルキューレ)》の周りに魔導士も驚くほど濃密な魔力による魔力障壁を作り出した。

龍の息吹(ドラゴンブレス)】は障壁に完全に打ち消され、完璧な魔法の行使を許してしまった。


「凍てつきなさい」

 今までで一番冷えた声で囁くと、キャレックに魔法を放つ。


「「危ないっ!」」

 と向かってくる魔法とキャレックの間に割って入ってきたシグリアとヴェルディが魔力障壁を多重展開(マルチキャスト)して防ごうとする。


 そこにキャレックも魔力障壁を多重展開(マルチキャスト)すると総計12枚になる。

 均衡していた魔法も障壁の方に軍配があが――――


「『アーカディアの名の下に、飲み込め【紅炎(プロミネンス)】』」

 そこに《剣聖(ソードエスカトル)》の追撃が加わる。


【魔剣 アーカディア】の固有魔法(ネイティヴ)、【紅炎(プロミネンス)】。

 爆発系統の頂点に立つ魔法、魔剣に所有者として認められた者しか使えない絶魔法。

 火属性魔法の中で破壊力に関しては隣に立つ魔法はないと言われている。


 障壁に打ち消されかけていた【絶対零度(アブソリュート・ゼロ)】に【紅炎(プロミネンス)】が加わり、完全に一体化して複属性魔法として生まれ変わる。


 完全に魔法に軍配が上がり、魔導士3人を蹴散らした。


「きゃぁー!」

「がっ!?」

「うわぁー!」


 魔導士チームは4人が消え、残りは《最強(ディフィニット)》だけになった。


「まったく、君たちは加減というものを知らないのか」

 アリステアは若干引き気味に聞く。


「そんな事してたら俺たちがやられるからな」

「お互い様なのよ」

「辛辣なとこは加減して欲しいものだな」


 そこから場の空気が重々しいものに変わる。重力が10倍くらい増加したかのように。


「相変わらずの口の多さだ、そろそろ終わりにしようか」

「そうしましょう」


「……[限界突破(オーバーリミット)]」



 3人のSランカーによる限界を超えた闘いがまるで二回戦のように開幕するのだった。



パート2に分かれてしまいました。

次回も是非ご覧ください。

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