第18話
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俺と兄さんは冒険者5人と対峙している。空気が張り詰めているのが分かる。
『ガァアァアアァア! (龍殺しには気をつけてね)』
一応忠告しておく。
それがきっかけになってしまったのか、冒険者たちが跳ねるように速度を上げて接近してくる。
「まさか1人で俺らと対峙するのかい?」
「まったく、舐められたものだ。」
調子に乗っている2人に俺は
『グァアァアガァアァアアアア!! (調子のんなクソガキども! 俺の咆哮でビビってるくせに!)』
最大級の咆哮を放ってしまった。
あ、やべっ……
気づいた時は既に遅かった。俺が放った咆哮には無意識に魔力が込められてあったらしく【光線】の数倍の威力があった。
2人は紙の如く空へ舞い吹っ飛ばされる。
「ぐはっ!」「ぐっ!」
そのまま2人は壁に激突し意識を失い場外へ弾き出される。
え? 弱くないですかSランク冒険者。2人撃退完了デスネ。
「おいおい、アルナ。やりすぎじゃないのか?」
『グァアァア!? (いやいや、さっきのは向こうが悪いでしょ!?)』
兄さんは俺に厳しいようだ。
「魔剣士と粉砕者がくるぞ、龍殺しは最後に来るみたいだ」
『ガァアアアァァア! (了解!じゃあ飛ぶから捕まっててね)』
俺は翼を羽ばたかせ宙に浮く。翼を羽ばたかせるだけで俺たちの周りは暴風が吹き、冒険者たちも身動きが取れなさそうだ。
兄さんは俺の背で剣を抜く。シャリーンっと俺の羽ばたきで荒れ狂う中抜刀時の音が華麗に鳴り響いた。兄さんの剣【聖剣 エクスキャリバー】は聖騎士が代々受け継いでいる、クレトリア王国最強の武器である。
その刀身の輝きに眼を奪われる。黒龍の身体と相まって余計に金の装飾が、輝いているのである。
「このバカを扱うのは苦労するなぁ……」
『ガァアアアァア!? (なんでそんな事言うのさ!!)』
俺たちはそんなバカみたいな会話をしているが、周りに放つ殺気に動くことができない。無闇に飛び込んだら千切りの如く刻み付けられてしまう。そんな気がしてならないのか突っ込んできた魔剣士と粉砕者は足を止めていた。
「ではこちらから行こう。」
俺はまた新しい古代魔法が発現したのでそれを発動させる。
『グァァアアァア! (【感覚共有】発動ッ!!)』
俺は兄さんと五感すべてを共有させる。
「ん……アルナ? 今なんか俺に魔法かけたか??」
『ガアアァア! (兄さんと感覚を共有させてもらったの)』
「ああ、分かった。」
俺と兄さんは臨戦態勢をとる。向こうはすでに作戦は決まったようだ。
「第2ラウンド開始だ!」
兄さんは高らかに宣言すると同時に俺は爆音を放ちながら翼を羽ばたかせ冒険者たちに肉薄する。
30mもの距離を一瞬で詰め、兄さんは聖剣を水平に薙いだ。
魔剣士はギリギリで避けるが、粉砕者は持っていた斧でその斬撃を受ける。だが俺の速さに兄さんの腕力、剣の性能を鑑みると当たり前だが闘技場内の壁に吹き飛ばされる。
盛大な破壊音と攻撃力に全員が息を呑む。粉砕者の最も有名な点は攻撃力ではなく胆力と忍耐力だからだ。それを異とも絶やさず普通に吹き飛ばした俺たち。
破壊時に巻き起こった煙が落ち着く。そこには完全に沈黙した粉砕者がいた、すぐに場外に飛ばされる。
はい、3人目殲滅完了。
魔剣士は顔を引き攣らせている、魔法の補助があっても俺の速度を持つ兄さんの剣を受けることは出来ないだろう。龍殺しは穏やかに見守っていたが、余裕がなさそうな焦った顔をしている。
そりゃあ、ここまで理性的で優秀な聖騎士を乗せている龍など世界を探し回ってもここにしかいないだろう。
「あれ? もう終わりですか??」
兄さんは悪いニヤニヤした笑顔で煽りまくる。
一番性格悪いの兄さんじゃないか……
羞恥で顔を真っ赤にした魔剣士は
「言わせておけばッ!!」
叫びつつ魔法で身体を強化している。強化された身体で剣を持ち、攻撃しよう距離を詰めてくる。俺はそれを無詠唱の【全属性矢】で邪魔をする。
なんとも滑稽な、ドラゴンが魔法を使うとか。
わざと等間隔で1本ずつ丁寧に打っていく。流石に腐ってもSランク、魔法による剣の強化によって【全属性矢】を斬っていく。
「なんという技なんだ……」「すげえ……」
などとふざけた驚愕の声を観衆はあげる。
いやいや、俺が制御してるからこいつは斬れるんだからね?
魔剣士は俺が手加減しているのを知ったようでさっきよりも赤くまるで茹でたこみたいになっている。
俺も兄さんも哀れに思えてきたので、
「そろそろかわいそうだな。」
『ガアアアァァ! (確かに)』
俺は再び空に羽ばたく。そして、魔剣士に向かって突進をかます。粉砕者と同じように壁に吹き飛ばされ、激突し轟音をあげる。舞っていた煙が晴れると意気消沈な魔剣士が見え、一瞬の間に場外へ弾き出された。
はい、4人目殲滅完了っと。
俺は面倒なので最後の龍殺しに向かって飛ぼうとする。その刹那、巨大に膨れ上がる闘気が俺たちを襲った。龍殺しの由縁はただ龍を倒せる訳ではない、龍をも恐がらせる、その闘気から呼ばれたのだ。
正直闘気の量にはびっくりしたが特に気にすることはなかった。
「なッ!? 俺の闘気を受けて平気だと?」
「この量ならまだアルナの殺気の方が凄かったなあ」
でたよ、この煽り、兄さんも好きだなあ
「………」
おお、この人ホントに強い人だ。剣を構えた時の佇まいが他のSランクとは違う。
([変身]解除)
俺は本能的に古代魔法を解除し【魔大剣 ニーズヘッグ】を両手で持って構える。
「まったく、まあ俺は援護に回るからな。」
兄さんは察しが良くて助かる。
「ほう、俺と剣で勝負するのか?」
「無駄口が多いんだよ、冒険者。弱い犬程よく吠えるって言っただろうに。」
俺の口も大概煽りが好きなようだった。
「めんどくさいから俺から行くね?」
獰猛な笑みを向けて突進する。
そこで龍殺しはそんな俺を剣で迎え撃つ。二、三度剣で打ち合う、腕力やら体格やらで圧倒的に龍殺しに軍配があがると誰もが思ったが、先に膝を着いたのはその龍殺しだった。
「ど、どこから、そんな力が……」
「Sランクってのは皆慢心しすぎなんだよ、どうせ俺たちに勝てる者はいないなんて思ってたんだろ? それがお前ら馬鹿どもの敗因だ。」
俺はそんな捨て台詞を吐き、龍殺しの首を刎ねた。そして龍殺しは場外に弾き出された。
5人目殲滅完了っと。
「兄さん、終わったよー」
「俺の出番少なかったなあ」
親父たちはどうかなと俺たちは振り返るのだった。




