第15話
俺たち、家族はまず、王に宥められた。
「落ち着きなよ、みんな、取り敢えず。」
「……ノワールがそういうなら、分かった。」
親父が怒りを納めたので皆、それに倣った。
「まあ、多分、帝国の手先が毒を盛ったんだろうね」
国王もといノワールは冷静に分析をする。
「この国の貴族でも買収したのか? それとも……城内に内通者が?」
王というのは大変だなぁ
「そ、そうだっ!」
うわぁ、嫌な予感しかしない、ロクでもないこと思いついただろ
「アルナくんにある職に就いてもらいたい」
「おい、ノワール……まさかっ!」
あの父さんがちょっと驚いてるぞ、そんなやばいやつ??
「そのまさかさ、アスノ。クレトリア王国最強部隊を再興しようと思う。」
おお、なんか格好いいな、
「そ、それはいいのだが。部隊のメンバーはどうするのだ?」
国王、ドヤ顔である。
「そんなの決まってるじゃないか、《剣聖》に《戦乙女》、《聖騎士》、《精霊に好かれし者》、《古代を司る者》のアルヴアート家だ。」
親父はちょっとだけ口角を上げている。
「自分達で言うのもなんだが、これで最強じゃないならこの世に最強はないな。」
「だろ〜、学校とかは気にしなくていいからね。来て欲しくないけど有事のみ召集がかかるから。」
アルナとオーディアに向けてノワールは言う。
「俺は何の職に就くんです?」
「まずこの家は全員軍人になってもらう。アルナくん、君はこの部隊の隊長になってもらうために『王国王室軍務名誉顧問』という職に就いてもらう。」
また長い名前出て来た、絶対面倒な職でしょそれ……
「ええ? おうこく……なんですか??」
「王国王室軍務名誉顧問だ、有事時は軍務大臣よりも宰相よりも権威を放つ。有用に使ってくれよ?」
「いやいやいやいや! そんな大層なものもらえませんって !第一になにも功績を出してないんですよ??」
俺は面倒事に首を突っ込むのは嫌だし。
「まあ、1週間後に任命式を国で行うことにするよ、そこで現Sランク冒険者とSランク魔導士の10人対我が部隊5人の模擬戦をやる事にするかな。そこで武勲を挙げれば大丈夫!」
はぁ!? Sランク冒険者に魔導士だってぇ!
「唐突なんですね、まあ拒否権はないのでしょう?」
「もちろんさ!」
この陽気さを分けて欲しい、
「父さんに母さん、兄さんに姉さんはいいの?」
「寧ろ楽しみなのだ」
「久々に身体を動かせるなら全然いいわ!」
「俺も停滞でいるより向上したいからな!」
「私も精霊さんもやる気だからねっ!」
全く、この家は血の気が多過ぎる。俺も人の事言えないか。若干好戦的だし……
「分かりました、この話、承ります。」
国王は大きく頷き、笑みを浮かべて言った。
「ありがとう!」
こうして、アルナ=アルヴアートの、いやアルヴアート家の更なる出世が決まった。
そして1週間後、遂にその任命式が行われた。
本当にやっちゃったよあの人………
王城前には王都の全国民が集まっている。そしてわざと他国の軍関係者を呼んでいる。
まあ、俺たちは抑止力になるのだし。戦力を開示しても問題ないだろうな……結局国王の命令だから
式前、俺は国王に呼ばれた。
「アルナくん、君の部隊の正式装備が出来たからこれ着て出て欲しい。」
渡された正式装備は漆黒の鎧だった。アダマンタイトというこの世界で最も頑丈な鉱石をふんだんに使い、それでいて重過ぎず、寧ろ高速移動を可能にするアシストが付いているという最高級の装備だった。
命令だから文句を言わずに渋々着込んだ。その上から裾が地面に着きそうなほど長いフード付き黒色のローブを羽織る。
「なんで俺の分だけなんですか??」
「今回は君の隊長感を出したくてね。アスノもエルカも冒険者時代の鎧がまだあったみたいでね、それの方が君の装備よりぶっちゃけ強いし。」
まあ、こんな女みたいなやつが隊長なんて誰も思わないだろうし。っていうかこれより強い装備とかやばすぎでしょ………
冒険者かぁ、俺もやってみたい。
「1人ずつ呼ぶから、その時君は登壇しながらそのローブのフードを外してね。驚く顔が見たいからね」
「わ、分かりました。」
「じゃあ式で会おうね。あ、そうだ、部隊の名前は…………だからね」
えぇ! そんな名前なの! っていうかめっちゃ緊張するなぁ……
城の外では国王の登場により、わぁああと歓声があがっている。
「やあ、国民の諸君。今日、集まってもらったのはある報告をしたいからだ。」
ざわざわと皆が騒いでいる。
「かつてクレトリア王国には最強部隊が存在した。私はその部隊を再興したのだ。」
男達は大歓声である、やっぱりどこの世界でも最強という言葉に男は弱いようだ。
「その任命式をここで執り行う。では1人ずつ紹介しよう。」
騒ぎが収まる。皆誰だと固唾を呑んでいる。
「まずは、1人目。私の友にしてこの国のもう1人の英雄。《剣聖》、アスノ=アルヴアートだ!」
割れんばかりの大歓声である。
親父ってここまで人気だったのかよ、ちょっと嫉妬するわ。
冒険者時代の鎧は炎のように真っ赤な装備だが毎日手入れをしてきていたのか、目立った外傷がない新品同然の鎧だった。差してある剣と同系色で父さんは赤い色が好きなのだと分かった。
親父は王と同じ壇上に毅然とした態度で立つ。まるで王が2人になったようであった。
「では、2人目。この者も私の友だ。アスノ=アルヴアートの妻、《戦乙女》、エルカ=アルヴアートだ!」
また大歓声に包まれる。
戦乙女は女性冒険者の憧れで元Sランク女性冒険者に歓声を上げられずにはいられないだろう。美しい佇まいに息を飲む観客だった。
冒険者時代の鎧はまるで氷のように綺麗な碧い色をした豪華な装飾が施してある鎧で母さんの差してある剣と相まり、輝いていた。
「3人目だ。アスノ=アルヴアートの息子であり、軍務大臣直属特殊工作兼攻撃部隊『ゲイボルグ』の隊長。《聖騎士》、アーシリア=アルヴアートだ!」
女性の歓声が圧倒的に多い。
性格は優しく、顔は整っている、いわゆる女性の理想像の塊の男なのだ。軍人であり大佐である為、敬礼にはキレがあり、またそれにも歓声が上がるのだった。
鎧にはゲイボルグで使用していたらしい銀色の鎧を着ていた。腰に差してある黄金の剣と相まって物凄く美しい佇まいである。
「4人目だ。この者もアスノ=アルヴアートの子であり娘。この国唯一の精霊と交友を持つ、《精霊に好かれし者》、オーディア=アルヴアートだ!」
こちらは男性の歓声が多かった。
性格は御転婆だが、皆に好ましい態度をとり、貴族さを感じさせない所が彼女の魅力だ。差別的指向がなく誰にでも隔たりがないのがまたいい。母親に似て、とても美しい佇まいであった。
装備には大学の制服という至って模擬戦に向かない格好であるが、彼女の制服は特別製らしくエルフ族による独特の防御魔法が付与してあるらしい。
エルフと親交のある姉。俺も会ってみたいなエルフ………今度紹介してもらおう。
「最後、5人目だ。この者を知らない者も多いだろう。だがこの部隊の隊長でありこの国の最強の矛である。そして私でさえ一つしか持たない古代魔法を複数所持する。アスノ=アルヴアートの息子、《古代を司る者》アルナ=アルヴアートだ!!」
俺はローブを着て顔を見せないように壇上に上がる。そして壇上に登り、国王が頷くとローブのフードを外した。
美しい艶を持つ黒髪、浮世離れた整った顔にその場の全員が魅了されたのだ。誰もが美しさに息を呑み、言葉を発せなかったのだ。
そんな事を無視して国王は話を進める。
「では、隊長であるアルナ=アルヴアートに挨拶してもらおう。」
き、きいてないぞ!!
国王の隣に立ちこの場全員に聞こえるように声を張る。
「わ、私はアルナ=アルヴアートだ。こんな顔や髪をしているが、男だ。」
その驚愕の事実に会場が爆発したように絶叫が叫ばれる。
そんなに驚くことか?? べ、別に特殊な性癖をしてるわけじゃないからなっ!
驚きやまない国民に宣言した。
「こ、この国を災厄から守る事を我がクレトリア王国最強部隊『バハムート』が誓おう!」
大歓声で会場が溢れかえる。
「『バハムート』の力量を皆も知りたいだろう? 今日、王都の闘技場でSランク冒険者と魔導士の混合チームと対戦するカードを用意した!」
「「「「「「「おぉ!!!」」」」」」
これもまた盛況そうである。
「では、任命式は終了にする。みな、闘技場に移動するのだ!」
一斉に移動が始まった。今までで例に見ない最高のカードを見るために。
こうしてクレトリア王国最強部隊『バハムート』のお披露目は終わった。次は対戦である。
まあ、俺が全力出せば負ける事はないと思うんだけどね??




